映画『ナイスの森』
【4月1日特記】 映画『ナイスの森』を観てきた。『茶の味』の石井克人と、同じく武蔵野美術大学の同級生と先輩である三木俊一郎とANIKIという3人の監督がそれぞれに作った映像をツギハギにして、しかも全体として映画はノーマル・ギャグのA面とシュールなギャグのB面に分かれていて、間に3分間の休憩があって、しかも休憩中は席を立つなと言われる妙な構成の映画である。
僕は三木俊一郎とANIKIについては初見、石井克人については『茶の味』までは「CM出身の人にありがちなパタン」と見ており評価していなかった。それが『茶の味』で一気に見直すことになったのである。
『茶の味』はバラバラのように見えるギャグが巧く溶け合って、映画全体としては非常にまとまりのある心温まる作品になっていた。で、今回もそういう作品かと言えばそうではない。乱暴に言ってしまうと単なるナンセンス・ギャグ集である。だから、あの『茶の味』の味を求めて観た人はちょっとがっかりするかもしれない。
多分、この人はこっちのほうが本来のテーストなんだろうなあと思う。そんな予感もないではなかったが、出演者としてトップにクレジットされている寺島進、浅野忠信、池脇千鶴の3人の名前を見ると、これはもう見ないわけには行かんでしょう、という感じだった。
この映画を見て最初に思い出したのは(若い世代は分からんでしょうが)往年の大ヒットTV番組『ゲバゲバ90分』である(余談だが、そう言えばこのテーマソングも宮川泰だ)。果たせるかな、パンフレットを読むと同番組を意識していたことが明記してある。
他に例として上がっていた例えが『ウィ・アー・ザ・ワールド』と『東映まんがまつり』だってんだから笑う。この辺の力の抜け具合がこの映画の良さなんですよね。
劇場は渋谷のQ-AXシネマ。こないだ移転後のユーロスペースに行こうとして誤って切符を買いそうになったところ(つまり同じビルの中)である。
客層は当たり前のように若いのだが、女性の独り客が少なくないのが珍しかった。それにしても、隣に座った男(なんと男性2人組)が身体を揺さぶって大笑いするもんだから、こっちの椅子も揺れる揺れる。
前述の3人が達者(特に池脇千鶴はオールマイティであることがこの映画で再確認できた)だし、他にも個性的な出演者がてんこ盛りなので飽きない。
寺島と浅野とアンドリューという芸名の少年の3人が女性にもてない3兄弟なのだが、なんで一番下の弟だけ白人やねん!?という辺りがもうムチャクチャ。──と思っていたら、パンフレットを読むと、「弟がほしかったマサル(浅野)がキャベツ畑で拾ってきた」という見事に理屈の通った(?)設定になっていた。この辺り、パンフを読むと2度笑えるよ。
しかも、このアンドリュー君、明らかに日本語が全然分かってないよ。だから浅野忠信との会話に生まれるなんとも変な間(ま)──これがまたおかしい。
後半になると気持ちの悪い(て言うか、「不気味可愛い」)クリーチャーは一杯出てくるわ、CGにVFX、手書きアニメまであって、おまけにプロ・ダンサーの嶺岸昭志や、『茶の味』にも出てた森山開次らのダンスは素晴らしいし、さっぱり訳分からんし何にも残らんけど、退屈しないし面白い。
特筆すべきは音楽。たくさんの音楽が流れるけど、いずれも良かった。観ていて、いや聞いていて自然と体がリズムを取り始める(最後のほうのノイズ系の曲ではまたしても寝そうになってしまったけど・・・)。小劇場(つまり劇団四季とかじゃないやつ)の出来の良いミュージカルのような風味がある。
やたらとたくさん出ている出演者についてはとても書ききれないけど、あと2人だけ挙げれば、ノッチ役の西門えりかはめちゃくちゃ可愛かった。んで、三浦葵は若い頃の洞口依子を思い出した。
なかなかの映画ですよ。でも、絶対感動はしない──これは請け合います(笑)。
★この記事は以下のブログからTBさせていただきました。
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