映画『放郷物語』
【4月14日特記】 映画『放郷物語』を観てきました。MovieWalker東京のHPで何となく見つけて気になっていたのですが、なんか記憶にあるなあと思ったら、アロハ坊主さんが書いた記事を既に読んでました(愛読してるなどと言いながらいい加減なもんですorz)。
こういう小規模上映の映画って大抵、良いところはあるのに全体に作り方が粗雑だったり、どこかに致命的な欠陥があったり、あまりにマニアックで普通の人はついて行けなかったりするもんですが、これは本当に拾いものの映画でした。気になったのはアフレコが巧く行ってなくて、時折口の動きと言葉が微妙にずれていたということ、ただその1点のみです。
──なんて書いてみても、渋谷ユーロスペースでの単館レイトショーで、しかも今日が最終日となるといくら褒めても観てもらいようがありません。
でも、これ、本当に捨てたもんじゃないから、DVDが出たら是非見てください。ストーリー展開、台詞廻し、カメラワーク、編集、随所にあるこだわり映像、笑いを取るポイント、エピソードの埋め込み方、そして全体の雰囲気、統一感、メッセージ・・・いずれをとっても非常に完成度の高い作品です。飯塚健監督って何者だか全然知らないのですが、これはポッと出の監督なんかじゃないですよね。映画の作り方をしっかりと心得た人です。
いくつかの話が並行して進みます。
高校の卒業式が終わったばかりの 愛子(徳永えり)と椎名(安藤希)。実は愛子は椎名の彼氏である哲平(小林且弥)に密かな思いを寄せています(これは初出のシーンから感じさせているから、書いてもネタバレじゃないですよね?)。大学に合格して東京に行く準備をする愛子と手伝いに来る椎名&哲平。
そして、連絡がつかなくなった実の娘を探すためにバスの運転手をやっている男(山田辰夫)の話。彼は何故だか右折するのが嫌いで、サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を愛読している。僕はこの山田辰夫という役者大好きなんですよね。1984年の『すかんぴんウォーク』(大森一樹監督、吉川晃司主演)で完全にノックアウト食って、以来映画館で彼の姿を観るのは9回目なんですが、いずれも見事な存在感であり名演であると思います。
その運転手に少し絡むシーンがある奥貫薫。ダンナとうまく行ってなさそうな主婦。彼女も僕の大好きな女優です。
そして、犬を連れた不思議なホームレス(西岡徳馬)の話とコンビニの店員の話。
僕は主演の2人の女性にはそれほど魅力を感じなかった(ただし演技力は問題なし)のですが、脇役陣が素晴らしかったです。
画がなんとも言えず良いです。ブチッと切るところも、ゆっくりとパンする(特に右へのパンがやたらと多い)ところも非常に適切で、画に力があってスリルを感じさせてくれます。本当に見事な構図の連続です。
撮影監督の小川真司ってなんか名前に記憶があると思ったら、僕が観た『ピンポン』『約三十の嘘』『恋の門』『ジョゼと虎と魚たち』の4本にプロデューサとして名前を連ねてました(が果たして同一人物ですかね? 声優にも同姓同名の人がいるみたいですが・・・)。
そんな画に支えられての演出も唸らせるほどの出来で、特にミラーに映った山田辰夫の表情だけでストーリーを説明しきっている辺りは常人の技ではありません。
救いがありますよ。ラストのあの、全てが解き放たれる感じ。これこそ総合芸術である映画の本領という感じがしました。
挿入歌とエンディング・テーマとして使われている矢野真紀の音楽も良かったです。
前者は懐かしいと言うのを通り越してむしろ古臭い感じさえする『夜曲』。渚ゆうこ+70年代フォークという風情。後者はシュガーベイブ風の『薄暮の街』。いずれも妙に魅力的で、映画に非常にマッチしていました。
上映の後スタッフ&キャストによるミッドナイト・トークショーがあって、帰りに『RESET』という映画のDVDをタダでもらいました。これ、どういう関係なのでしょう?と思ったら、プロデューサが同じ宮田さんなんですね。片岡礼子の名前が5番目にクレジットされてます。これもちょっと楽しみ。そのうち観たらこちらの記事もアップします。
Comments
どーもです。
yama_eighさんもご覧になりましたか。
飯塚監督は、次回作も今、撮っているようなので
来年あたりにはまた観られるのではないでしょうか。
なにより笑いのツボを心得ているのが気に入りました。
Posted by: アロハ坊主 | Sunday, April 16, 2006 00:31
> アロハ坊主さん
わざわざコメントありがとうございます。
いやあ、掘り出し物でした。これは単館で1ヶ月では惜しいですよね。
Posted by: yama_eigh | Sunday, April 16, 2006 01:21