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Sunday, April 16, 2006

DVD『RESET』

【4月16日特記】 一昨日映画『放郷物語』を観た帰りに出口でもらったDVD『RESET』を観た(なんと無料配布していたのである!)。2001年度鈴木浩介監督作品。

自殺の名所となっている廃墟ビルの最上階に、ある夜偶然集まった5人の自殺志願者のドラマ。最初のシーンからいるのが3人。喪服の着物を着た中年女性(根岸季衣)、サラリーマン風の男(光石研)、若い女(片岡礼子)。そこに後から階段を駆け上がってきた革ジャンの男(遠藤憲一)。最後に現われた、襟元に血のついた男(伊藤洋三郎)。

伊藤は他の4人に自殺するのはやめろと言う。遠藤は伊藤に、自分は死ぬ気なのに他の人間を止めるのはおかしいと怒る。

「あんた家族がいるんだろ。俺には誰もいないんだよ」「あんたみたいな人は死なないよ」「あんたにそんなこと言われる筋合いはない」「俺はいいんだよ」「なんかこんなに長いこと話したの初めて」などと、ちょっと不思議な会話が交わされる。

パッケージに書いてある説明を読むと、「全く脚本なしに即興で演じられた1カット77分間の驚くべき人間ドラマ」。──そこで誰の頭にも浮ぶ素朴な疑問:「じゃあ、監督は一体何をしてたの?」

その辺りの裏話は付録で入っているメイキングやトークショーを見れば判る。

監督はそれぞれの出演者に自分の人物設定を考えてこさせ、2人でミーティングして役柄を決めたらしい。ストーリーについてはポイントとなる1点だけが決まっていて、1本のテープに収まるよう80分以内で終わるための段取りも決めてあった。カメラは12台。映像のサイズなどは監督が指示することなく、各カメラマンに任されていたとのこと。

舞台が夜の、照明のない廃墟ビルの中なので、暗くて白黒映画みたいな映像である。そして特に前半部分はどの出演者もそれぞれ探りながらのかなり重苦しい展開である。こういうものを観客に強いるのはちょっと辛い。

作られたドラマには、作り上げられたものならではの素晴らしい台詞や動き、話の展開やカメラワークなどがある。それは事前に細部に亘って練り上げたからこそできる芸当である。そういうものを排してアドリブでドラマを構築してみようというのは確かに意欲的な試みではあるが、所詮実験的な試みに過ぎないのである。

こういう実験はやっているキャストやスタッフが一番面白いのだろう。それを観客に見せると言うのは如何なものだろうかという気もする。

ところが、出演者が5人ともかなりしっかりした役者であったために、結構面白い作品に仕上がっている。自分が出るところ/他の役者を立てるところのメリハリをちゃんと心得ているし、ドラマとしての盛り上げを常に念頭に置いている。これはやはり今までドラマ作りに関わって来た経験のなせる業なのだろうと、ちょっと感心してしまった。

果たして自殺してしまう人物がいるのか、いるなら何人いるのか? 思い直して帰って行く人物がいるのか? ──これからDVDを見る人のために答えは書かない。

所詮実験的な映画に過ぎないが、実験は成功であった──というのが正しい評価ではないかな。

ところで冒頭の疑問に戻るが、監督は一体何をしたかと言えば、プロデューサ的な役割は大いに果たしたとは言え、監督としてはやっぱりあまり何もしていないみたいだ。

この映画は監督志望の人よりも修行中の俳優が観ると良いのではないかな? 特典映像を見ると面白さが倍増する。ただし、特典映像を見ないと面白さが倍増しないところがこの映画の弱点でもある。

『RESET2』もあるらしい。こっちは3人の足軽が出てくる時代劇だとか。

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