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Sunday, March 26, 2006

TBS『白夜行』(森下佳子から目が離せない-2)

【3月26日更新】 TBS『白夜行』最終回の録画を今見終わった。圧倒的に深い感慨がある。TVドラマを観て涙を流したのは何年ぶりだろう。

視聴率的には関東・関西ともに平均ベースで10%を少し超えた程度であり、成功とは言い難い。かつてNTV『すいか』のように低視聴率ながらギャラクシー賞やATP賞を獲ったドラマもあったけど、これは無理だろうなあ。業界でも全然評判になってないもん。如何せん見ている人が少ないんだろうなあ。でも、僕は平成TVドラマ史に残る名作だと思う。

1月19日の記事にも書いたが、脚本家・森下佳子の技量にただただ舌を巻く。人間不在の原作小説が見事に人間ドラマに生まれ変わった。

東野圭吾の原作では笹垣刑事(武田鉄矢)が全ての事件を後から追いかけるところを描いており、桐原亮司(山田孝之)と唐沢雪穂(綾瀬はるか)が絡むシーンは一切描かれていない。もちろんそういう構成にしたことによって、この小説はそれなりの効果を産んだ訳だから、それはそれで良い。あまり人間を描くのが得意ではない東野圭吾にとっては有効な戦略だったのではないかな。

そして、そんな原作を換骨奪胎して、森下佳子は見事な人間ドラマに再編した。亮司と雪穂の少年少女時代から大人になるまでを、冷血の犯罪者ではなく熱い血の通った生身の人間として描き切った。渾身の力作である。

原作では、読者は2人の主人公を、まるでワイドショーで取り上げられた凶悪犯罪リポートを見るように読まされた。感慨深かったとは言え、一方で薄ら寒い感じがしたはずだ。しかし、このドラマでは、視聴者はこの凶悪犯罪者たちの哀しみをもしっかりと受けとめることができたのではないだろうか。

最終回に来てかなり筋を触ってきたが、それまでのところは概ね原作の筋を活かす形でこれだけ見事に改編した森下佳子という脚本家になんという形容をすれば良いのか分からない。

1クールドラマにするための簡略化を施す一方で、原作にはなかった『風と共に去りぬ』を絡ませ、更に、太陽をモチーフに亮司が作った切り絵と雪穂がデザインした指輪を関連させた辺り、唸りたくなる手法である。そして、亮司に子供ができていたという設定──これも森下オリジナルであり、極めてシャープなアクセントになっている。

最終回での笹垣の台詞が泣かせる。

「殺しにでもええから、来いや」
「お前が精一杯やったんは、俺が知ってる」

観ていて言葉も出ない。ただただ涙が出た。

笹垣役の武田鉄矢と雪穂の継母役の八千草薫が飛びぬけて巧かった。子役の2人も良かった。松浦に扮した渡部篤郎も、ものすごい存在感を示してくれた。

そして、亮司の母役の麻生祐未、雪穂の実母役の河合美智子、亮司と絡む2人の女に奥貫薫と西田尚美──どうしてこんなに僕の好きな女優ばかりが出てくるのだろう!

そして、図書館司書役の余貴美子(この人の名字はアマリではなくヨである)──これも原作にはなかった役どころであり、非常に効いていた。

今後もますます森下佳子から目が離せない。

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Comments

今更の書き込みすいません。
僕は映画を作る学校でシナリオを書いているのですが、久しぶりに白夜行を見直して、驚きました。ここには人間が全て描かれているな、と。母も兄も、愛も友情も父も。何が本当か分からない世界の中に2人が純粋に生きていて、でも犯罪に汚れていて…。よく描ききったな、と本当に作り手の方々にも感動しました。
まぁ、テレビドラマに不向きなダーク具合で、視聴率などは仕方無い事
だったんでしょうけど。最終回で亮司を失くした雪穂の痛みが、こちらにも刺さってきて、切なかったです。しかし、それでも彼女に、笹垣や亮司の子供という救いを残してくれた事で、これ程陰な話であるのに虚無感は感じませんでした。演出や撮影の技術もさることながら、森下佳子さんのシナリオに感動しました。

Posted by: 僧侶 | Saturday, September 01, 2007 at 12:07

>僧侶さん。

> 今更の書き込みすいません。

いえいえ、こういう形で大昔の記事を掘り起こしていただけるのはブロガーにとって何ごとにも替えがたい歓びではないでしょうか。どうもありがとう。

Posted by: yama_eigh | Saturday, September 01, 2007 at 18:44

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