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Sunday, February 05, 2006

映画『ベロニカは死ぬことにした』

【2月5日特記】 映画『ベロニカは死ぬことにした』を観てきた。

パウロ・コエーリョの原作は本屋で何度か手に取ったが結局買わなかった。だから、これは原作を読んでいない者の感想である。読んだ人には別の感じ方があるのかもしれない。

で、ひとことで言って、こりゃ滑っちゃいましたね。

筒井ともみ脚本の映画を観るのはなんと19年ぶりで、ちょっと期待して行ったのにがっかり。脚本だけにしておけば良かったのにでしゃばってプロデュースまでやってしまったのが失敗か? いや、その前に脚本はあれで良かったのか?

演出がまずいのか、あるいはそもそもこの役どころは真木よう子には荷が重すぎたのか?
『パッチギ!』の時にはあんなに生き生きと演じていたのに・・・。

真木の演技はひとつのシーンが1色で終わってしまっている。その1つだけの色は綺麗に出せているのだけれど、そこから先、斑模様もグラデーションも描けない。極端な表情があるのみ。極端から中庸へ、あるいは中庸から極端への変化が出せていない。一度にひとつの感情しか表せない。悲痛ばかりが見える。しかし、肝心のその悲痛も伝わって来ない。

この映画の前半では特に悲痛と無気力の両方を表に出す必要があったのではないかな?
そして、後半にかけて(悲痛を取り除くことはできないにしても)無気力が生きる気力に変わって行くところを表現する必要があったのではないかな?

いや、やっぱり監督の演技指導が下手だったからかもしれない。真木よう子や多岐川裕美の台詞を聞いていて、「その間の取り方は違うだろ!」と思ったところが何箇所もあった。

この監督、よく知らないけど何者なのかな? 役者の動かし方が妙に舞台めいている。

あと風吹ジュンにサングラス掛けさせたのも大失敗。
僕はこのサングラスはあること(ストーリーに関連してくるので伏せる)の象徴としているのだと思ったのだが、なんと風吹本人の思いつきからみたい。そんな気紛れ聞いてちゃだめでしょ、監督さんよ。すごく上手な女優さんなのに目の動きが全く判らない。

いや、でも、真木よう子の演技に限界があったのはやっぱり本人の力量のせいかな。風吹ジュンや中嶋朋子や荻野目慶子の痛みは充分伝わってきたけど真木よう子の痛みは空回りばかりでちっとも伝わって来なかったもんなあ。

そして、なによりも音楽にアンドレア・モリコーネを起用したのが最大の失敗。演出の下手さを音楽で誤魔化そうとしてもそうは巧く行くもんかい。「あんた、観客を舐めてんのか!?」と言いたくなる。中盤から終盤にかけて鳴りっ放しの大仰な音楽がとにかくウザイ。

そういうのは、もっとストレートなメロドラマとか、逆境を生き抜く根性ものとかでないと功を奏さないよ。

エンディング・ロールで流れた nangi の主題歌(最初椎名林檎かと思った)は良かったんだけどね。

この映画は「なんでもあるけど、なんにもない」生活に絶望して自殺未遂を図ったトワという名の女性が、目覚めるととある精神病院にいて、医者から「あと1週間の命」だと宣告されるところから始まる。

だから、舞台はずっと精神病院である。院長が市村正親、婦長が荻野目慶子、看護婦が片桐はいりという曲者ぞろいの配役で、患者だけでなく医者や看護婦も狂っているのではないかと思わせる不思議な設定である(どんな監督であっても市村はやはり巧い)。

患者に中嶋朋子、風吹ジュン(この2人も巧かった)、淡路恵子、そしてトワが再生する鍵を握る若い男性患者クロードに扮してる韓国俳優イ・ワンなどがいるのだが、その他にも、パンフレットに名前さえ書いていないのだが、まさに精神病院の患者にふさわしい怪優ぞろいだった。

ひと声聞いただけで誰だかすぐに判る神戸浩(コックの恰好してたけど、あれ病院スタッフじゃなくて、やっぱり患者ですよね?)、歌澤寅右衛門(『メゾン・ド・ヒミコ』のルビイ役)、大楽源太(『ゲルマニウムの夜』で新井浩文の痰を舐めようとした奴)などなど。

最後のどんでん返し(と言うかオチ)も僕は最初っから完璧に読めていたし、全く驚きのない映画だった。

僕は自分が面白くなかった場合でも「でも、こういうの好きな人もいるんだろうな」と大抵は思うのだが、この映画だけはどういう人が褒めるのか想像がつかない。

性差・年齢差の問題、つまり若い女性だったらもっと共感できるのだろうか?

もしこの映画をとても良かったと思う人がいたら、是非コメント欄に何か書き残して行ってほしい。

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Comments

こんちわ、この映画結構よかったと思った40代のおじさんです。
原作は読んでません。

私は、最初は「一週間生きれば終わり」だった彼女が、「これだけしか生きれないの」になったとき表情が変わり、美しくなった。
と思ったんですが、同じ映画を見ても正反対のことを感じることもあるんですね。

私はなんとなく、この記事でふれていないシーンに嫌悪したのが響いているのかなと思いました。違っていたらゴメンナサイ。

Posted by: eiga55 | Thursday, February 09, 2006 at 21:47

> eiga55さん

「あ、やっと書き込みがあった。やっぱりこの映画を良いと思う人がいたんだ」などと思いながらコメントを読んでみたら、確かにその通りではあったのですが「40代のおじさん」とは意外でした。へえ、そうですか?

> この記事でふれていないシーンに嫌悪したのが響いているのかな

って、オナニー・シーンですか? もし、そうなら全然嫌悪なんかしてませんよ。特別良いシーンだとも思いませんでしたけど別に悪いシーンだとも思いませんでした。ま、どっちにしても、こういうシーンって邦画の中に収めると浮いてしまいがちで難しいんですけどね・・・。

でも、特に嫌悪感はなかったです。嫌悪するのはむしろ女性では?

もし、そのシーンのことを言っておられるのでないとすれば、えーと、どのシーンですかね?

Posted by: yama_eigh | Thursday, February 09, 2006 at 22:02

こんばんわ、ベロニカよかったなと思った26歳女です。 観終わって、この映画は女の人にしか、分からないのでは?と感じました。この監督さんの演出力にも感動しました。観終わった後、nangiさんの曲を聞きながら、観た事のない、すごい映画を観てしまった。と  なんといっても、あたまから、タイトルがながれるまでの、演出力に、ドキドキしたほどです。確かに脚本は、よくない・・・。しかしこの脚本で、よく自分が、納得したことを考えると、監督の力量。この監督、よくぞ男でここまで演出、出来たなと。邦画にありがちな、監督の無理やりな説得もなく、しっかりとトワを客観視して、つくりあげてくれたなーと。真木さんもとってもよかったと、思いました。ぴったりでした。  40おじさまは、シャワーが流れるシーンや、ろうそくをみんなで、持って盛り上がるシーンなんかに嫌悪を感じたのでは?と言いたかったのでは?と思ったのですが・・・
私は逆に、この監督の何ともいえない、このやりすぎ?の演出のおかげで、この映画は、だめな脚本から、救われたのではと。最後のろうそくにシーンなんか、私はこの監督にやられたなと、にやけてしまったほどです。しかし、きっとこの映画、意見がはっきり分かれるんでしょうね。イ・ワンは完全に韓国人だし。しかし、クロードが夜、外で飛び跳ねているシーンをみると、日本にあのシーンを出来た人がいるかな?と思うとみつからないなー。でも、この原作を、映像にすると聞いたとき、映像には、向かないなと思ったのですが、映画は映画で、上手くまとまっていたなと。

Posted by: mimi | Friday, February 10, 2006 at 00:36

> mimi さん

ありがとうございます。

そーですか、良かったですか。やっぱり、そういう人いるんですね。そして、そこが映画というものの良さですよね。

26歳女ですか、いいいですよね(って、これは関係なし。完璧にオヤジ乗り)。

みんなで蝋燭持って、はどうもいただけなかったですね。
あと、クロードが夜飛ぶ映像は確かに良かった。
中嶋朋子が飛ぶところもすごく好きでした。

で、シャワーが流れるシーンって、何でしたっけ?

Posted by: yama_eigh | Friday, February 10, 2006 at 00:46

mimiです。 シャワーはトワの自慰行為のシーンの途中に、サイドから、たくさんのシャワーが流れるカットがあったと思います。 
あのシーンのやりすぎ感もろうそくも賛否両論のこの監督のおもしろさなのでは。       
舞台挨拶で、この監督が、賛否両論な映画だと思うと話していたらしいですよ。

市村さんはやっぱり、素敵でした。なんだかもう一回、観てみたくなりました。 おやすみなさい

Posted by: mimi | Friday, February 10, 2006 at 01:44

こんばんわ
レスポンスが遅れてしまいました。eiga55です。
この記事でふれてないシーンというのはオナニーシーンでした。
このシーンは、死のうとしていた人が立ち直ろうと思うのは、きっと心だけではだめで、体も生きようとする必要があるということで入れたと思うのですが、映画の中では浮いていた気がしたんですよね。

Posted by: eiga55 | Sunday, February 12, 2006 at 00:26

はじめまして。まずはお詫びから。
リンクさせて頂いて、TBさせて頂いたつもりがTBし損なって今頃になってしまいました。
原作は映画を観る前に本屋でパラッとめくったのですが好みではなく、映画を観た後も同じようにめくったのですが、やはり好きになれず、未だ読んでいません。映画は絶賛というほどではありませんが、雰囲気や空気感や間合いが心地良かったように思います。舞台めいているから、かもしれませんね。

Posted by: sami | Sunday, February 12, 2006 at 21:39

追伸です。
TB、リンクがご迷惑だったのだったらごめんなさい。

Posted by: sami | Sunday, February 12, 2006 at 21:42

> sami さま

TB、リンクがご迷惑だなんてとんでもない(そんな奴はブログやってないでしょ)。カム・カム・エブリボデーですよ。

絶賛の人もいれば、ほどほどの人もいて、僕みたいに全くダメだった人もいる訳で、この辺が面白いですねえ。

映画っていうものはそれほど情報量が多いということなんでしょうね。

Posted by: yama_eigh | Monday, February 13, 2006 at 00:17

はじめまして。
おととい観に行きまして、どうにも理解出来ないというか、監督はプロデューサーは何がしたいのか分からないまま映画館出てきました。で、他の人の感想が知りたいと思っていたらここに行き着きました。
30代女性です。

まず、どうにも入れなかった決定的要因の1つは韓俳優。もう止めて欲しい、カタコト。いやいや俳優なら日本にも沢山います。(クロードが夜飛ぶ映像なら茶の味の森山開次などいかがでしょうか、しなやかですよー)
真木よう子自慰行為、堂々と体張って目の前で行う行為を優しく見守るこの青年は、役を台詞を理解してるのかもう心配で心配で感情移入も何も出来ません。

そしてもう1つは台詞が舞台調で終始説明しすぎ。ミュージカルのように歌い出したらどうしよう、席たつか!とヒヤヒヤ。説明する事に時間をかけるあまり、展開が早い浅い。
手に手を取って駆け出すあたりは、もう痛い辛い。

「なんでもあるけどなんにもない」虚無感は他人と繋っていく事で、好きになれない自分を受け入れるには自慰行為で受け入れろ…北方謙三?原作ではどの程度深く書いているのか分かりませんが、2時間弱に詰め込み、現実そんなに簡単じゃないんです...と悲しくなりました。

最後に。
市村正親際立ってました、秀逸、ため息。
荻野目姉キラリ!好感。
冒頭の真木よう子メガネ、おトキさん?なんで?国立図書館で目立ちません?宝石入り。
中嶋朋子痛々しさを痛々しく演じすぎ。
片桐はいり、おお!何かあるよ!きっとこの後!もうすぐ!まだか!え...筒井バカヤロー。

以上。生きる意味を見出せないまま映画館をあとにしました。

Posted by: ジースー | Thursday, March 02, 2006 at 02:47

> ジースーさん

いやあ、尽きませんね、ベロニカ論議。で、ジースーさんは僕と同じ否定派。でも、僕とは微妙に違う視点で否定しておられる。その辺がものすごく面白いですね。

僕は自分が気に入った場合も気に入らなかった場合も、賛否が割れそうな時には大抵「でも、きっと賛否別れるんだろうな」と思うのですが、この映画だけは一体褒める人がいるのかどうか見当がつきませんでした。それで呼びかけたら結構書き込みがあるので驚いています。

ところで、『茶の味』の森山開次──あの河原でクネクネ踊ってた人ね。あれはなかなか不思議な良いシーンでしたね。うん、あれは良い映画だったなあ。

Posted by: yama_eigh | Thursday, March 02, 2006 at 11:07

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