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Saturday, February 11, 2006

『語られなかった皇族たちの真実』竹田恒泰(書評)

【2月11日特記】 実はこの本の著者とは面識がある(もっともあくまで「面識がある」という程度であるが)。

皇族の末裔と聞いてついつい時代劇に登場するお公家様のようなタイプを想像してしまったのであるが、会ってみるとなかなか現代的な青年である。僕にとってこの本の第1の面白さは、そんな現代的な青年がこのような古風なことをやっぱり書くのだという発見であった。

ざっくり言ってしまうと、この本のメイン・テーマは天皇の男系継承支持である。この論旨展開にどれほどの説得力があるかについては読者によって濃淡があるだろう。残念ながら、僕にとっては少し説得力に欠けるところもあった。

読んでいると、やはり現行の皇室擁護ということがア・プリオリのテーマとして存在しており、それを補強する材料だけを歴史の中から探し出しては書いているという感じが拭えない。

もっとも、彼の立場に生まれればそれは仕方のないこと、と言うよりもごく自然なのことなのだろう。

第1章の冒頭にある「現代社会では『改革』に価値を認め、『保守』を蔑む傾向がある。しかし、歴史的に朝廷では『改革』には価値を置かず、むしろ『保守』に価値を見出してきた」(34ページ)という表現が彼の立場を如実に表している。

一方、本人は自然なことのつもりで書いていても、彼のような立場の人間が今話題沸騰のこういうテーマの本を物するについては、周囲の雑音もさぞかし大きかったのではないかと思う。序章の終わりに、この本はあくまで著者個人の意見であると、わざわざ矩形で囲んで書いてあるところにその辺りの事情が窺える。

ところで、普段こういう本を読むことのない僕にとっては、この本は発見/再認識の連続であった。

皇室には10を超える宮家があったとか、歴史的には皇統断絶の危機が3回あって八方十代(という表現をするんですね)の女帝がいたが、いずれの場合にも男系継承の原則は貫かれていたとか、明治以降第2次大戦までの期間、全ての皇族男子が軍人であったこととか、戦後の強制的な皇籍離脱によってボロボロになってしまった元皇族も少なくなかったとか・・・。

そういうこともちゃんと知らずに、僕らは「愛子さまが天皇になっても別にいいじゃん」みたいなことを軽々しく口にしてきた訳である。

皇族の末裔が書いた文章であるから多少偏っている点もあるだろうが、この際だからこの本でも読んで、もう少し皇室に対する理解を深めてから皇室典範改正について考えてみても良いのではないかという気がしてきた。

そういう意味では、著者の意図は見事に達成されたと言えるのだろう。

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