『西荻夫婦』やまだないと(漫画評)
【2月14日特記】 僕もこの漫画の主人公たちと同じ町に暮している。ただ、僕の場合は夫婦一緒ではなく単身赴任である。
僕たち夫婦も彼らのように子供がいない。彼らと同じように、他の夫婦が子供のために時間を費やしている時に、まるっきり自分たちだけのために時間を貪ってきた。
僕らはこの夫婦よりも随分年上だけれど、それでも彼らのように時々手を繋ぐこともある。
なんだか解るのである。切なくていとおしい気持ち。人生は哀しくて、でもその先時々捨てたもんじゃないと思うことがあるということ。男と女の違い。男であれ女であれ、人間に根源的に宿る淋しさ。
人と人は全てを共有することは出来ない。だから、僕にはこの漫画の主人公たちと完璧な一体感を味わうことは出来ない。そして、夫と妻もまた互いにそうである。なのに夫と妻であり続けられるのは何故か?
そういうことがなんだか解るような気がするのである。
ストーリーを文章にしてしまうとまことに味気ないけれど、これはそういうことがちゃんと描けている漫画なのである。
僕もこの漫画の主人公たちと同じ町に暮らし、同じ空気を吸って、時として同じ淋しさに沈みながら、僕らは僕らなりの一体感を危うく保ちながら、それでもしっかりと2人で先を目指すのである。
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