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Monday, January 16, 2006

その台詞がリアリティを台無しにする

【1月16日特記】 「見ている人に説明するために登場人物に台詞を言わせてはいけない」というような趣旨のことを僕はあちこちに書いているわけだが、今日NTTタウンページのテレビCMを見ていて、「そう、例えばこれだ」と思った。

(もしこのCMが関東地区でしか流れていないものだったら非常に申し訳ない。多分それ以外の地域の人にはイマイチ実感がつかめないだろうから)

今流れているシリーズはペーイチとページの兄弟ものである。なぎら健壱が扮する兄・ペーイチとピエール瀧が扮する弟・ページが登場する。

このCMのミソは“ページ”を弟の名前にしてしまった発想の面白さであって、ページから派生してペーイチという名前が生まれたのである。

話は逸れるが、昔のなぞなぞにこんなのがあった。

かもめのジョナサンには2人の兄がいました。名前は何でしょう?
(答え:ジョナイチとジョナニ)

これと全く同じなのがペーイチとページの兄弟である。

さて、話は戻るが、このCMの中でペーイチがこんな台詞を言う。

「弟のページの指図は受けねえよ」

これはないだろう。自分の弟の名前にわざわざ「弟の」という修飾語をつける奴はいないはずだ。普通なら「ページの指図は受けねえよ」と言うはずだ。

もしも「俺が兄でお前が弟だ」という長幼の序を強調したいのであれば「弟のお前の指図は受けねえよ」となって、固有名詞は消えるはずだ。

TVスポットCMというのは超ショートショートのドラマであって15秒で全てを説明しきらなければならない。そのため、聞いた瞬間に2人が兄弟であることを判らせるためにこんな台詞になったのだろう。そういう意味でそれなりの同情はする。

ただ、画面を見ると「兄ペーイチ」「弟ページ」というスーパーがちゃんと人物に載っているのである。そして次の台詞は「ペーイチ兄さん!」である。──それで充分ではないか? にも拘らず15秒という短さに慄いて余計な台詞を書いたのである。そして、それがリアリティを薄めてしまっている。とても残念だ。

僕が自分のHPやこのブログのあちこちに書いているのはそういう意味である。

このCMを見たことがない人のために別の例も挙げておこう。

ちょっと古いが例えば『太陽にほえろ』みたいな刑事ドラマの1シーン。

警察署内の電話が鳴る。ボスがその電話に出て、

「はい、捜査1係。何っ、○○町の××銀行に強盗? それで3人組の犯人は△△方面に車で逃走中?」

みたいな台詞である。
そんな一言一句復唱するかあ?(しかも聞いている時間が異様に短い!)

本当は電話に出た刑事は「うん、うん」などと相槌を打ちながら聞いて、電話を切ってからその場の同僚に復唱して伝えるはずである。

ところが、実際にそんな台詞を書いているとドラマの時間を食って仕方がない。だから短い時間で視聴者に状況を分からせるためにこんなシーンになったのである。それがリアリティを壊している。とても残念である。

いや、百歩譲って電話に出た刑事は同僚たちにいっぺんに状況を把握させるためにいちいち復唱していたのだとしよう。その場合でも本当にリアリティを追求しようとすれば、次のような台詞回しになるのではないだろうか?

「捜査1係。強盗? うん、○○町の××銀行。で、犯人は3人組。△△方面に逃走中。白のカローラ」

視聴者に対しては少し不親切になる。が、たいていの視聴者ならこの程度の文脈は読めるはずだ。視聴者に気を遣いすぎてリアリティを傷つけている。とても残念だ。

そして、上の例で何よりも不自然なのは、「何っ」である。いやしくも刑事というのは犯罪を捜査する職業である。その職場に犯罪の連絡があったからと言っていちいち驚く刑事がいるか?

驚くのは刑事ではなく一般人である。

ただし、刑事ドラマの視聴者もまた驚かない。驚くとしたら刑事ドラマの中で犯罪が起こらなかった場合だ。

にも拘らず、「何っ」という台詞を書いた脚本家に、僕は驚くのである。
その台詞がリアリティを台無しにしているのである。

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