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Saturday, January 28, 2006

『ハルカ・エイティ』姫野カオルコ(書評)

【1月28日特記】 理屈っぽい小説である。──などと理屈っぽい僕に言う資格はないのかもしれないが、理屈っぽい僕が言うのだから確かである。

作中そこかしこに「女とは概してこういうものだ」とか「たいていの男はこうである」といった表現が出てくるのだが、それが少々鬱陶しい。僕は類型的な考え方が大嫌いなので余計に気に障るのかもしれない。

これは1920年生まれのハルカという女性の生涯を綴った小説である。小説のモデルになった女性も実在するらしい。

戦前・戦中というかなり抑圧的な息苦しい時期に少女時代を過ごしたにもかかわらず、ハルカという女性は明るく、ものごとに不必要な拘りを抱かず、結構進歩的でおおらかに育った。ただ、その進歩性が語られるのは多くは色恋の場面である。その中にはいくつかの浮気も含まれる。

「なんだ、女性の進歩性ってそういうことでしか描けないの?」という気もしないではない。だが、男女の関係は人間生活の太い芯であることは間違いない。ハルカの夫で、ハルカに劣らず浮気性の大介という男も非常に暖かい人物に描かれている。なんのかんの言いながら仲睦まじく連れ添ったこの夫婦がとても魅力的なのである。

ただ、少し気になるのはこの小説がずっと平成10年代の言葉で書かれていること。今を生きる著者が自分の言葉で書き表しているのだからそれでも良いと言えば良いのであるが、当時概念さえ存在しなかった単語で登場人物の心情を説明されてもしっくり来ない。中には登場人物の台詞になってしまっているところもある。

それから、小説の中には歴史的事実がたくさん挿入されているのだが、なんか取って付けた感がある。多分著者が勝手に挿入したのではなく、モデルとなった女性が語った思い出話からそのまま採用しているのだろうが、それに少し違和感があるのは、現代語での記述ということを含めて著者の書き方の問題だろう。

あまり巧みな表現と言えるほどのものはなく、どちらかと言えばストーリーを追っているだけの小説ではあるが、設定・展開は大変巧い。人物もよく描き分けられている。

そして、作中に溢れかえる関西弁が非常に効いている。いかにも関西のおばちゃんという感じがよく出ていて、この台詞を読んでいるだけで笑えてくるし、心が温かにもなってくる。

この味は関西でかなりの年数を過ごした人にしか解らないのではないかな? それを思うと少し残念である。

明るく楽しく、そして時にしんみりさせる伝記小説である。浮気のシーンがこれほど多くなければ、NHK朝の連ドラの原作に選ばれたかも。いや、変わろうともがいている今のNHKだったら、このぐらいの作品なら朝の枠でもドラマ化するかな?

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