『茶の味』
【12月26日特記】年末に帰省する前に溜まっている録画済み物件を少し片づけようと思って『茶の味』を観た。
この映画、なんだかすごく良かった!
宣伝写真からナンセンス・ギャグ映画だと思っていたのだが全然違った。
映画は高1のハジメ(佐藤貴弘)の淡い恋が破れるところから始まる。ハジメのおでこから電車が突き抜けて走り去る。ハジメの妹で小学校低学年の幸子(坂野麻弥)は、いつも自分を見つめているもうひとりの巨大な自分の存在に悩んでいる。
ハジメと幸子は父・ノブオ(三浦友和)、母・美子(手塚さとみ)、祖父(我修院達也=元・若人あきら)と住んでいて、その祖父は認知症、と言うよりは完全に頭がイカれているとしか思えない。奇声を発して歌う、踊る。そこによく遊びに来る美子の弟(浅野忠信)がいる。そして、ノブオの弟は漫画家である。
冒頭のおでこから電車を皮切りに、頭にウンコを乗っけて刺青をした血まみれの霊(寺島進)とか、ヒーローものの着ぐるみショーの扮装で電車に乗り込んでくる人とか、河原で川から飛んでくるボールをバットで打ってる人とか、同じく河原でクネクネ踊っているダンサーとか、土中に3日間埋まっていた人とか、訳の分からないものがたくさん出てくる。
ノブオの弟が突然「誕生日レコーディング」をすると言い出して、彼の漫画アシスタントの女性と父親(我修院)の3人が録音スタジオでハモッて踊るシーンも非常に不可思議。
それらの中には心象風景とか白昼夢とか、そういったものも含むのかもしれないし、単なるナンセンス、あるいは超自然であるのかもしれない。
考えてみれば、僕らが小さかった時、僕らには解らないものがたくさんあった。
そして、その解らないものが自然であれ超自然であれ、あるいは単に子供には分からない大人の会話や行動であったとしても、僕らはそれらの全てを等しく単に不思議なものとして、ごく自然に受け入れてきた。
──そういう体験をまざまざと甦らせる不思議な映画だ。
そういう不思議なストーリーにまぎれて、ハジメと転校生(土屋アンナ)との新たな淡い恋があり、浅野忠信と、彼をかつて振った中島朋子との再会があり、美子の仕事復帰があり、田舎の町に風が吹き、草がそよぎ、夕焼けがあって、月が昇り──そういう風景がある。
脚本も撮影もすごく良い。だからこそこれだけの豪華キャストが出演したのだろう。上記以外にも樹木希林(我修院の亡妻、写真のみの出演)や武田真治、岡田義徳、草彅剛(ほんの一瞬のちょい役、ワンショットなし)など多くの男優女優が出ており、ナレーションは和久井映見が担当している。
出演者たちの演技もそれぞれ素晴らしい。
破天荒なようでしっかりと構成できた筋立て、そして映画全体が、自然と人工が一体となった見事なアートに仕上がっている。
なんかすごく雰囲気ある映画。いつも見終わったら消すのに、この映画はHDから消去するのをやめたほどだ。胸にじんわり染みて来た。
キネマ旬報では2004年度の第33位。うーん、随分評価が低いなあ・・・。


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