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Saturday, December 03, 2005

映画『ランド・オブ・プレンティ』

【12月3日特記】 ヴィム・ヴェンダース監督作品は久しく観ていなかった、とアロハ坊主さんと同じ書き出しで始めてみたのだが、僕もまた『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』以来である。

ヴィム・ヴェンダースは英語式に読むとウィム・ウェンダーズと、なんだか軟弱な名前になってしまうが、元々はドイツ人である。アメリカの強さは、こういった優秀な移民をたくさん抱えているところにある。

もちろん、優秀な移民だけを抱えて優秀でない移民を放逐するわけには行かないから、優秀な人も、優秀でない人も、かつて優秀であったのに廃人同様になっている人も、今はただのバカなガキだが将来アメリカを代表する存在になるかもしれない人も、全て一緒くたに広く移民を受け入れているところがアメリカの強さなのである。

この映画はある意味移民ならではの眼で観察したアメリカであり、しかし、一方で現実にアメリカで暮らしている人にしか描けないアメリカである。

9.11のテロによってヴェトナム戦争従軍体験の後遺症とトラウマが甦り、独りっきりでアメリカを守るんだと、偏執的に街の(特にアラブ系アメリカ人たちの)監視を続けている主人公ポール。そのポールの姪で、亡くなった母(ポールの妹)からの手紙を伯父に届けるために、イスラエル(ヨルダン川西岸)から10年ぶりにアメリカに帰ってきたラナ。

──その2人によるロード・ムービーである。皮肉な言い方をすれば珍道中だと言っても過言ではない(その意味は映画を観れば解る)。

ここには現代アメリカの抱える要素がたくさん盛り込まれている。

ヴェトナム戦争、9.11同時多発テロ、それ以来無条件にはびこってしまったアラブ系イスラム系住民に対する敵意、ブッシュの言う「テロとの戦い」、LAの街に溢れかえる貧困層・ホームレスの問題(これはアメリカ生まれの監督ならきっと描かない)、キリスト教の果たす役割。

こんな映画を移民の監督に作られてしまって、アメリカ生まれの監督たちはちょっと恥ずかしいと思うべき? いや、それがアメリカなのだ。ネイティヴ・アメリカンも、メイフラワー号でやってきた人たちも、20世紀になってから世界各地から流れ込んできた人も、総てをひっくるめてアメリカ人なのである。それがアメリカの、アメリカ人の強さであり健全さである。

ラナに扮したミシェル・ウィリアムズの魅力が全編に漲っていた。こんな良い映画が東京でも大阪でも1館でしか上映していないというのはちょっともったいない。

ところで、僕はあちこちに書いているのだが、なんでもかんでもカタカナにしただけというタイトルのつけ方には大いに不満。この映画の場合は先に同名の歌があったから仕方がないのかもしれないのかもしれないけど、一昔前ならきっと『豊穣の国』だったんだろうな。

いずれにしても、レナード・コーエンによるタイトル曲がものすごく効いていた。ヴェネツィアで拍手喝采が鳴り止まなかったというのがよく解る。

今日は良い映画が観られた。

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Comments

どうもです。
僕のお気に入りの導入のコピー。
使っていただいてありがとうございます(笑)。

しかし、首都圏で1館は、なんともつらい話ですね。
今のアメリカを率直に語りすぎたせいですかね。
16日間で撮影したのも、アンチメジャー(ハリウッド)
な姿勢を感じましたし。(ただ単に予算がないからでしょうけど)

いろんな劇場でもっと上映してほしいものです。

Posted by: アロハ坊主 | Saturday, December 03, 2005 at 21:36

> アロハ坊主さん

まいど。僕は大阪で見ました。3週間で4回も出張があって疲れました。でも、大阪で映画を2本見ました。

OS劇場C.A.P.はOS名画座になるそうです。

Posted by: yama_eigh | Sunday, December 04, 2005 at 19:13

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