『蛇イチゴ』
【11月3日特記】 今日は WOWOW から録ったまま溜まっている映画の消化。と思ったが、他にやることもあって1本しか見られなかった──『蛇イチゴ』。是枝裕和プロデュース作品。
冒頭2つの話が展開する。
ひとつは葬儀会場に喪服で駆けつける男(宮迫博之)の話。
どうも怪しげだと思ったら、どうやら香典目当ての詐欺師らしいということが小出しに描かれる。
もうひとつはつみきみほの一家の話。祖父と父母との4人暮らし。
つみきみほは小学校の先生で、同僚の教師と交際中。いよいよ結婚という段階。
平泉成が演ずるお父さんは体裁ばかり構う男。会社を馘になっているのに家族にも言えないまま。当然支払われない給料を工面するために借金まみれになっている。
そして、平泉の父親は認知症。訳の分からないことを口走り、よだれかけをしてこぼしまくりながら汚らしく飯を食う。演じているのは笑福亭松之助。
大谷直子演ずるお母さんは気丈者だが、義父の世話を独りで背負わされていい加減げっそりしている。
さて、このように2つの話が同時進行するとき、観客にとってはこの2つがどこでどう繋がるのかが興味のポイントになってくる。すると、そうこうしているうちに祖父が亡くなるのである。ははあ、なるほど、多分こういう繋がり方だな──と思ったら豈に図らんや、2つの話は意外な繋がり方をする。これから見る人のために書かないけど、却々見事なストーリーを仕立てている。
几帳面そのもののつみきといい加減の典型のような宮迫──この対照的な2人を絡ませて人間同士の、家族同士のつきあいの綾みたいなものを鮮やかに描き出している。
台詞回しが巧いねえ! 抜群のセンス! 舌を巻くくらい巧い会話劇だ。そしてラストも含蓄があって素晴らしい。
脚本・監督は西川美和。2003年度キネマ旬報第14位。ベストテンに入っていても不思議はない作品だ。
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