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Saturday, September 24, 2005

DVD『害虫』

【9月24日特記】 レンタルDVDで『害虫』を観た。実は来週月曜日に同じ塩田明彦監督の『この胸いっぱいの愛を』の完成披露試写会に行く予定なのだが、その前にどうしてもこの作品を観ておきたかったのだ。

塩田監督と言えば興業的に一番成功した作品は『黄泉がえり』(ちなみにこの映画の脚本は犬童一心)だが、僕としては『月光の囁き』のイメージが強烈に残っている。この映画にはぶっ飛んだ。フェティシストの少年が主人公の映画である。

ちなみに彼の監督作品を制作順に並べ、キネマ旬報の日本映画ベストテンにおける順位を添えてみると、

  1. 『月光の囁き』(1999年度 第17位)
  2. 『どこまでもいこう』(1999年度 第9位)
  3. 『ギプス』(2001年度 第79位)
  4. 『害虫』(2002年度 第14位)
  5. 『帰ってきた!刑事まつり』(2003年 投票者ゼロ)
  6. 『黄泉がえり』(2003年度 第34位)
  7. 『カナリア』(2005年 未選考)

となる。僕が映画館で観たのが1と7。TVで観たのが6である。

上の一覧を見て明らかなように、塩田監督を語る上でどうしてもはずせないのが2と4だろう。今日はとりあえずそのうちの1本を観た訳だ。

不登校の中学生・北サチ子(宮﨑あおい)。父は既になく、母(りょう)は自殺未遂。母の愛人らしき男(サチ子が帰宅すると勝手に家に上がり込んでいる)。学校をサボっている時に知り合った、当たり屋を商売としている少年(沢木哲)と浮浪者(石川浩司、「たま」でランニング着て太鼓叩いてた奴)。サチ子を誘う大人の男たち。サチ子が慕う小学生時代の担任教師で、サチ子と噂になってしまったために学校を辞め、今は原発で働いている男(田辺誠一)。サチ子を学校に誘って復帰させる同級生(蒼井優)。

筋を述べなくても、こうやって登場人物を並べるだけで充分だろう。心の中に広がる荒寥とした風景。しかも、この風景が延々と続く。いや、風景自体は刻々と変わる。中には明るいエピソードもある。だが、どこかで破綻する。

なんか、こう、明示的に何かを述べるのではなく、こういう風に提示された映像はやたらと重く染みてくるのである。そして、あのエンディング、暗澹たるエンディング、突き放すようなぶった切るようなエンディング。このメッセージは痛い。

やはり才能と言うしかない何かを感じさせる映画なのである。

ところで、この映画ではなんともあどけない宮﨑あおいが見られる。『NANA』と比べると、この数年で彼女がいかに大人になって綺麗になったかがよく分かる。彼女は今年成人のはずだから、まだミドルティーンの頃だ。あまりに可愛いので特典映像のメイキングまでじっくり見てしまった。共演の蒼井優もこれまたおぼこい。この若い2人が対照的な光を放っている。

これはこれで『タッチ』なんかとは対極の位置にありながら同じく青春映画なのである。非常に重い映画ではあるが・・・。(宮崎あおい)

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Comments

僕も『害虫』で塩田監督の世界に取り憑かれてしまいました。
だから、その後に制作した『黄泉がえり』には、かなり驚かされました。
こういう大衆受けする映画もつくれるんだと思って。
脚本が犬童さんなので、こういう世界が作れたという
のもあるかもしれませんが。
『カナリア』は『害虫』と『黄泉がえり』の中間のイメージでした。
塩田監督って、フィールドが広いんでしょうね。

『この胸いっぱいの愛を』は『黄泉がえり』のシリーズものという
ふうに聞いてますが、どんな感じで仕上げるのでしょうか。
たのしみですね。


Posted by: アロハ坊主 | Sunday, September 25, 2005 00:48

> アロハ坊主さん

コメントありがとうございます。
僕は宮崎あおいファン・塩田明彦ファンなのに『害虫』見てなくて悔しかったんです。これでやっと会話に加われます(笑)。

『この胸いっぱいの愛を』ですが、すでに別の試写会で見て酷評してる人がいます。この人は『害虫』を高く評価してる人です。

さて、どんな具合やら・・・。

ところで最近、映画館でアロハ姿の坊主刈りの人を見ると「ひょっとしてアロハ坊主さんでは?」と思ってしまいます。意外にいるんですよ、そういう人。

Posted by: yama_eigh | Sunday, September 25, 2005 10:27

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