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Saturday, April 16, 2005

『メディア異人列伝』永江朗(書評)

【4月16日特記】 僕にとっては全部読んでやっと意味が解った本だった。目から鱗である。

休刊になっている「噂の眞相」の連載インタビューの再録である。しかし、僕は「噂の眞相」という雑誌をまともに読んだことがなかった。永江朗という人も知らなかった。ここでインタビュイーになっている114人のうち名前を知っていたのも僅か43人だった。

読むのに随分時間がかかった。考えてみれば114人ものインタビューが並んでいるのである。段組になっていて、しかも400ページを超える。時間がかかるのも当たり前である。

「実際会ってみると自分の持っていたイメージとは随分違う人だった」という記述から始まる記事が多く、同じ構造が繰り返されるのには少し飽きてしまう。そして、インタビューと言いながらインタビュイーの地の声よりもインタビュアーが書いた感想めいたもののほうが多いのである。インタビューと呼ぶには異質でインタビュー取材に基づく記事だとして読んだほうが良い。

しかし、個別のインタビューについて言えば如何にも物足りない。分量が少ないのである。

メディアの異人たちの像がくっきりと浮び上がらないうちに、著者がすっきりとまとめてしまい、締め終わらないうちに記事が終わってしまう感が強い。雑誌連載中から随分と喰い足りないコーナーであったのではないかと思ってしまった。特に僕が全然知らない人がインタビューの対象である場合、どういう人なのかよく分からないままで終わってしまうのがナンダカナアであった。

ただ、幸いにして著者は「完全にテープ起こしをしてから原稿を作成するので、インタビュイーの発言内容を変更したり捏造することはない」(175ページ)と断言している。著者の我田引水記事でないことだけは確かである。

──などといろんなことを思いながら読み進んで行ったのであるが、読み進むうちにこの本の威力が身に染みてきた。この本の肝はこれだけ大量のインタビューを一挙に時系列で展開したということである。

10年ごとの"CHRONICLE"も添えられて、これらを一気に読み通すことで時代の展望が浮び上がって来るのである。著者の狙いも初めから人物を紹介することに力点などなくて、世相を読み解いて時代を捉えなおすという全体像の再構築にあったのではないかと気づいて少し愕然とした。

それでこそ「列伝」である。そして読み終えた者が「果たして自分はこれで良いのだろうか」と考え直し始める動機を与えてくれる書物であった。

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