『フェルマータ』ニコルソン・ベイカー(書評)
【2月20日特記】 いやあ、読み終えるのに時間がかかりました。途中で飽きちゃうんですよ。
自由自在に時間を止めることができる男の話。で、時間を止めて何をするかと言えば専ら女性の服を脱がせる。脱がせて観察して、元通りに戻してまた時間を動かす。ファックしたりはしません。
ただ、マスターベーションはする。ポルノ小説を書いたりもする。それで、一旦時間を止めてそのポルノ小説を女性の荷物に紛れ込ませておいて、時間を再び動かして彼女の反応を見たりもします。
この話を読んでいるとポルノ小説を読んでいるのと同じ状態に陥っていることがあります。しかし、この小説は作者がポルノ小説を書こうと思って書いたものではないだけに、ポルノ小説として読むにはどこかちょっと飽きてしまう部分があるのです。それで、読むの嫌んなっちゃうんですよね。
単なるポルノだという過小評価、それから女性に対する冒涜だという非難をかなり浴びたらしいですが、それでも米国ではベストセラーになったそうです。
確かに、この偏執狂的なまでに緻密な描写はすごいです。ひとつだけ例を挙げれば、時間が止まっている時の雨粒の状態とか(ただ、緻密すぎるから飽きちゃう部分もあるんですけど…)。
大体嫌になってくるのはちょうど真ん中辺りまで読み進んだ時ですね。そこを辛抱して超えて行くと、後半漸く新しい展開が出てきて面白くなります。読後感も非常に爽やかです。もちろん単なるポルノでもないし女性蔑視の本でもありません(ただし、反感を抱く女性は少なくないとは思いますが)。描かれている主人公と、主人公が憧れているジョイスという女性はともに魅力的なキャラです。
本というものは途中で飽きても最後まで読んでみるもんです。ああ、良かった。
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