『四色問題』ロビン・ウィルソン(書評)
【1月29日特記】 「全ての地図は4色で塗り分けられる」という定理の証明と聞いて興味をそそられて買ったのだが、最初のほうはフムフムという感じだったのが、最後のほうになるともう全くついて行けなかった。
それもそのはずで、偉い数学者たちでさえ訳がわからなくなる難しい問題であるらしい。ただ、ご心配なく。著者もその辺を見切ってのことなのだろうが、最初のほうは丁寧な説明が続くのであるが、半ばを過ぎてからは説明は骨子だけになって詳細は見事に割愛されている。
だから、決して読んでいて頭が痛くなる本ではない(とは言え、終盤は読んでいて2度ほど眠りに落ちそうになったが…)。ものすごく大雑把に言って前半は数学書、後半はルポルタージュというこの構成は成功である。
この四色問題というやつ、ひとつひとつ論理的に証明して行こうとしても、場合分けだけで何千通りにもなるらしくて、とうとうスーパーコンピュータの力を借りて証明がなされたのだそうである。そうすると、今度は「コンピュータなんか使うのは証明ではない」みたいなことを言う数学者も出てきたとか、そういう周辺事情を知るだけでもなかなか楽しい。
僕らは往々にして、ある日突然天才数学者が現れて、一から十まで一気に証明してしまうというようなイメージを持ちがちだが、実は100年も200年もかかって、以前途中までやって挫折した学者の遺産を引き継ぎながら研究は新しい段階へと入って行き、ついには証明されたのである。
訳者があとがきに添えている「数学は永遠である」というフレーズが、最後まで読むと急に染みてくるのである。
いやいや本当にご苦労さま。
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