『翻訳文学ブックカフェ』新元良一(書評)
【12月24日特記】 帯にあるように、ひと言で言えば「とびっきりの名翻訳家11人へのインタビュー集」である。インタビュアーの新元という人が何者なのか僕は知らないし(有名な人なのだろうか?)本の中にも記述がないのだが、英米文学に精通しており、インタビューされるそれぞれの翻訳家から肩肘を張らない良い話を引き出している。小川高義氏の「ラヒリは俺の女だ!」発言など、ニヤリと笑えるエピソードも多い。
ここで登場する11人のうち半分ぐらいは知らない人だなあと思って読み始めたのだが、実際読んでみると今まで全く接点がなかった(訳文を読んだことがなかった)のは鴻巣友季子、青山南、土屋政雄の3氏だけだった。我々は却々訳者の名前までは覚えていないものだ。
それでもまあ、村上春樹は別格として、柴田元幸みたいに名前で売れる翻訳家も出て来たわけだし、自分の好きな英米の作家を連続して訳してくれていたりすると自然と親しみが湧いて、名前も覚えてしまう。
そういう現象と完全に連鎖するのだが、この本を読むと同質の親しみが湧いてくる。これらのインタビューは、実際のその本を読んだことがあるから面白いのではなくて、シンパシーが浸透して行くことが、そして、そのことによって自分の読書の幅が広がることが楽しいのである。
タイトルにあるように、まるでカフェで気楽に語らっているような文学談義であり、力の抜けた良書である。
決して眉間に皺を寄せて口角泡を飛ばしてするような小難しい文学論ではない。英米文学がお好きなら是非ご一読を。
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