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Friday, November 26, 2004

『直観でわかる数学』畑村洋太郎(書評)

【11月26日特記】 一番意地の悪い言い方をすれば、これは単に著者にとっての「直観でわかる数学」でしかない。

もっと虚心坦懐に言えば、どのように説明すれば直観で理解できるかは人によってさまざまで、「はい、これで全員直観でわかっただろう」と言われても困るのである。

などと書くと「そんなひどい本なのか」と思われるだろうが、いやいや、決してひどい本ではない。僕自身「ふんふん、なるほど」と納得したり「なるほど、うまい説明の仕方だ」と感心しながら読んだ章もある。ただし、「それがどうした?」とか「うーん、そうかなあ?」と思った部分もある。

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『若かった日々』レベッカ・ブラウン(書評)

【11月26日特記】 きっと眼がいいんだね。いや、耳もいい。それに鼻も、舌も、皮膚感覚も。

レベッカ・ブラウンという人は僕たちが見過ごしたり、聞き逃したり、肌で感じられないまま通り過ごしてきた多くのことをしっかり感じ取って来た人だ。でも、ただ感じ取って来ただけではなくて、頭の中にそれをしまっておく居心地の良いスペースがあるんだ。いや、それだけでもない。彼女は「若かった日々」の記憶をそのまま紙に書き写して小説を完成したのではないだろう。

それは単純な記憶ではなく、熟成された記憶である。必ずしも彼女の実体験ではないかもしれない。それは実体験から拡充された、芳醇で繊細な記憶である。きわめて個人的なくせに妙に一般的な記憶なのである。

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Tuesday, November 16, 2004

『これが東大の授業ですか。』佐藤良明(書評)

【11月16日特記】 これはエキサイティングな読み物だ。特に英語が好きな人、英語教育に興味のある人にとってはかなり面白い。読んでいると、「ああ、こんな授業を受けたかった」という生徒の気持ちになるよりも、昔英語塾で教えていたときに僕にも少なからずあった情熱が沸々と甦って来る感のほうが強かった。

ひと言で言うと東大英語カリキュラム改革運動記。『これが東大の授業ですか。』というタイトルも多義的で良い。「へえ、これが東大の授業ですか、はあ、さすがですね」から「おいおい、こんなもんが東大の授業かい!?」までかなり幅広い含みがある。「これ」を改革前と読むか改革後と読むか、あるいは著者が改革運動を去った後と読むかで意味合いは変わってくる。

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Monday, November 01, 2004

『イマジン』清水義範(書評)

【11月1日特記】 これはあまり出来の良い類の小説ではない。

タイムスリップする話なのだが、時代考証面での甘さもある(なにせ『ららら科学の子』を読んだばかりなので粗が目立ってしまう)。登場人物の台詞で状況を説明しようとする悪癖も見られる。ご都合主義的な展開もある。あまりにすんなり運びすぎる恨みもある。結末がどうなるのか容易に想像がついてしまう。

にもかかわらず救いがあるのは、これを読めば明るくなれるからだ。

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