『ドリーマーズ』ギルバート・アデア(書評)
【9月30日特記】 1930年代から1968年までの映画について造詣が深くなければ、十全にこの作品を楽しむことは無理なのかもしれない。しかし、少なくとも若い世代特有のマニア的な熱狂については理解できるし、それさえ理解できれば読めない本ではない。
フランスの5月革命を背景にしているので、この辺の事情もできれば事前に知っておいたほうが良いだろう。映画に熱中し、と言うか没頭してしまった双子の兄妹とその友人の少年。いずれもアンリ・ラングロワが事務局長を務めるシネマテーク・フランセーズの常連である。そのラングロワが政府の圧力で解任され、それに抗議する動きが5月革命と呼応する。
結構深い話なのである。
だから僕のように映画と5月革命についてそれほどの知識がなければ却々入り込めない。おまけにこの作品中に醸し出される近親相姦とホモセクシュアルの雰囲気について、僕はまるで馴染みがないのでますます入り込みにくい面がある。従って「若者の熱狂」という一点に集中して読むしかなくなるのである。
もちろんそれでも読める。読めるし面白い。だが、できることなら、入門編としてベルナルド・ベルトルッチ監督による映画のほうを先に見ておいたほうが良いのかもしれないと思う。
非常にヨーロッパ的なお話である。僕のようなアメリカかぶれではなく、ヨーロッパに親近感を覚えている人ならなおさら面白く読めるのではなかろうか。
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