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Sunday, June 27, 2004

『マネー・ボール』マイケル・ルイス(書評)

【6月27日特記】 中にはこの本を経営書の一種として読む人もいるのかもしれない。しかし、僕としてはこの本は何としても書店の「経営」の棚ではなく「スポーツ」の棚に置いてほしい。これは球団経営の本ではない。紛れもなく野球に対する情熱について書かれた本である。

ただ、そのアプローチが従来のプロ野球関係者やファンのものとは180度違っていたというだけのことだ。

ビリー・ビーン──元メジャー・リーガー。ドラフト1順目に指名されてメッツに入団したが、結局大した成績は残していない。現在はオークランド・アスレチックスのゼネラル・マネージャ。アスレチックスは貧乏球団でありながら4年連続でプレーオフに出場するという常勝球団であって、その秘密はひとえにビリーの手腕にあるといって良い。

金がない故に年俸の高い一流選手を抱えられない(トレードで獲得できないというだけではなく、自分の球団の選手であっても年俸が高くなってくるとトレードに出すしかない)。──その状況を逆手にとり、術策の限りを尽くして無名で有望な選手を集めようとするビリー。そのためには今までアスレチックスに貢献してきた選手でも簡単にトレードに出す。彼が考えることは大きな見返りを得ることだけである。

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Sunday, June 20, 2004

『わたしたちが孤児だったころ』カズオ・イシグロ(書評)

【6月20日特記】 「なんだ、それで終わり?」という感じがしないでもないのだが、「でも、よく考えると、そう、人生ってそういうもんだよなあ」という感じもして来る──結局のところ、そのあたりが巧いんだろうな、この作家は。

僕は現代米国文学が好きで、英国のものはあまり読んで来なかったのだけれど、『柴田元幸と9人の作家たち』に収められていたイシグロのインタビューを読んで興味を抱き、『充たされざる者』が手に入らなかったのでとりあえずこの本を読んでみたわけだ。

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Tuesday, June 08, 2004

『ブラフマンの埋葬』小川洋子(書評)

【6月8日特記】 詩だね、これは。解釈してはいけない。味わうための本だ。

あっけないくらいに早く読み終わってしまう本だ。ブラフマンはあっけないくらい素早く読者の脳裏を駆け抜けて行く。そして、タイトルから明らかなように、最後にはブラフマンは死んでしまう。それだけの話だ。映画『未知との遭遇』と同様、タイトルがストーリーの全てである。

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Saturday, June 05, 2004

『いつか王子駅で』堀江敏幸(書評)

【6月5日特記】 「今までこの作家を知らなかったとは」という無念さよりも、「この作家に巡り合うのが、この作品の良さが解るこの齢になってからで良かった」という安堵感のほうが強い。

割合だらだらした文体は、時々読み返さないと繋がりがよく分からなくなったりするが、文章自体は非常に堪能で語彙も豊か。たまに辞書を引かなければならない単語に出会うほどである。

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