『熱い書評から親しむ感動の名著』bk1 with 熱い書評プロジェクト(書評)
【4月25日特記】 僕が敬愛して止まない書評家・「夏の雨」さんが巻頭を飾っている。なんだか嬉しい気分。僕よりかなり年上かと思っていたが、プロフィールを読むと少しだけ上だった。で、彼が取り上げているのが『病牀六尺』──凡そ僕なんかが選ぶはずもない書物である。にも拘らず、この書評を読んでいるとこの本を読みたくなってくる──なんと正しい書評のあり方か!
あと楽しみにしていたのは「みーちゃん」さん。いつも僕とは全く異質の意見を述べられるので妙に気になって読んでしまう。残念ながら今回取り上げておられる本は僕の守備範囲ではなかったのだが、いつもどおりのキレのある文章は楽しい。例によってカバー(装丁)から説き起こすのだが、今回は珍しくその前に段落が1つある。いやはや、しかし、素人でこれほど毒のある文章を書ける人も珍しい。
「とみきち」さんが堀江敏幸を取り上げている。僕はこの作家の名前さえ知らなかった。ところが、「KANAKANA」さんも「ろこのすけ」さんも好きな作家として名前を挙げている。へえ、そんなに有名な作家だったのか、と思いつつ「とみきち」さんによる紹介文を読み進むとすぐに興味ムクムクになってくる。よし、買って読もう、と思う──これまた書評のあるべき姿。
他にもたくさん馴染みの書評家名が並ぶ。へえ、「ソネアキラ」さんってコピーライターだったんだ(他にも意外にプロの物書きが多いのにびっくり)。やたら守備範囲の広い「南亭骨怠」さん(ふーん、技術科教師で野宿ライダーでしたか)、碩学「オリオン」さん、ポップな「深爪」さん、頼りになる書評家が次々と現れる。
しかし、それにしても、扱っている本の時代やジャンルがなんと広いことか! まあ、森鴎外やゲーテくらいはあるだろうと思っていたが、ダンテの『神曲』とかセルバンテスの『ドン・キホーテ』とか、題名は知っていてもまさかと思う本が取り上げられている。中でも出色は「爪子姫」さんの『手紙魔まみ、夏の引っ越し(うさぎ連れ)』の書評──取り上げている本と言い書評の文章と言い、なんじゃあ、こりゃあ!? ぶっ飛んでしまいましたよ。
もちろん中には読んだって何の引っ掛かりもない書評もある。──それはそれで仕方がない。書評ってそういうものである。僕にとって面白い小説が他人にとって面白いとは限らないように、他の人が膝を打つ書評が僕にとってはつまらないことがあって当然である。
ところで、ここでこの本の書評を書いているのは、今のところほとんどこの本の著者ばかりである。まあ、66人も狩り出してしまったらそういうことになるかもしれないが、それではいかんのじゃないか?
【註記】 前後の脈略なく上の文章を読んでも何のことだか分からないと思うが、この本はオンラインブックストア<bk1>が、そのサイトで募集し公開した書評を集めて出版したものである。
そこでの常連であった僕も執筆陣の末席を汚させてもらっている。
で、上の書評は<bk1>のサイトで紹介されたこの本の書評コーナーに投稿して掲載されたものであるから、読者は大体の背景を知っていることを前提に、いろんな説明を取っぱらっていきなりな書き方になっている。しかも、本文中にも書いているように、この本に対する書評もまた、ほとんどがこの本の著者である投稿書評の常連ばかりであった。
ま、要するに自己満足と言われれば返す言葉もない(笑) ただし、これは僕らが企画したものではなく、<bk1>が企画したものである。僕らはそれに乗っただけ。でも、他の人はあまり乗って来なかった。だから、この本はあまり売れなかったのかもしれない(笑)
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