『王国 その2 痛み、失われたものの影、そして魔法』よしもとばなな(書評)
【3月11日特記】 前作『アンドロメダ・ハイツ』を読んでしまったので、行きがかり上読まざるを得なかったのだが、結構しんどかった。
読み始めてすぐに思ったのは、「こういうコミュニケーション形態というのは非常に危ういな」ということだった。感覚的で、神秘主義で、詩のようでもあり、信仰にも似ている。頭で解るよりも肌で感じることのほうが大切だ、なんてまとめ方もできるかもしれないが、これでは「わからない人にはわからない」コミュニケーションなのである。
「伝わらない者には伝わらない」というのはある意味コミュニケーションの本質ではある。しかし、一方「伝わらない相手に対していかに伝えて行くか」というのがコミュニケーション本来の使命なのである。
そのラインを超えて行くためには、この表現ではいかにも心許ない気がした。感覚的で、神秘主義で、詩のようでもあり、信仰にも似ている。こういうの、「癒し」って言うんだろうか? しかし、僕は「癒し」っていうの、割と苦手としてるんですよね。
とはいえ、主人公がとてもひたむきに、かつ前向きに生きようとしている点は、僕のようなオジサンにも充分伝わってきた。それだけでもマシなのかな。
前作の書評にも書いたのだが、若い人は読みなさい。オジサンは、はて、どうするか。
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