『飛蝗の農場』ジェレミー・ドロンフィールド(書評)
【11月30日特記】 2002年度の「このミステリーがすごい!」(海外編)の第1位なのだそうである。出張で移動する車内の慰みに買い求めたのであるが、まさにそういう読み方にうってつけの本ではないだろうか。手が込んでいて飽きない。
章が改まる度に違う町における違う登場人物の話になっていたりして、最初は大いに戸惑うのだが、これもすぐに想像がつく。最後の謎解きに部分にさしかかって、「なんだ、結局またそういうことかい!?」「しかも、まだ100ページちょうども余して、もう種明しするのか!?」と思うのだが、「ああ、良かった。続きがあった」という感じ。そして、そこから結構粘ってくれる。
僕はミステリも読むには読むが、トリックやどんでん返しにはまるで興味がない。それは大抵いつも失望させられるからだ。だから、謎解きに少々無理があったとしても、人物に魅力があってよく描けているものを選んでしまう。
訳者はあとがきで「過剰なまでに精緻な人物造形」と書いているが、それほどのもんだろうか? まあ、そこそこの造形ではあるが、登場人物に決して魅力はない。この小説のセールス・ポイントはあくまでトリックやどんでん返しにある、と僕は思うのである。そして、そういう基準でよく書けていると思う。
面白い本だ。でも、このラストはなあ…。ちょっと粘りすぎたかなあ。
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