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Sunday, November 30, 2003

『飛蝗の農場』ジェレミー・ドロンフィールド(書評)

【11月30日特記】 2002年度の「このミステリーがすごい!」(海外編)の第1位なのだそうである。出張で移動する車内の慰みに買い求めたのであるが、まさにそういう読み方にうってつけの本ではないだろうか。手が込んでいて飽きない。

章が改まる度に違う町における違う登場人物の話になっていたりして、最初は大いに戸惑うのだが、これもすぐに想像がつく。最後の謎解きに部分にさしかかって、「なんだ、結局またそういうことかい!?」「しかも、まだ100ページちょうども余して、もう種明しするのか!?」と思うのだが、「ああ、良かった。続きがあった」という感じ。そして、そこから結構粘ってくれる。

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Monday, November 17, 2003

『光ってみえるもの、あれは』川上弘美(書評)

【11月17日特記】 知らない言葉ではないが自分では一度も使ったことがない表現がそこかしこに出てくる。やっぱりこの人の筆運びには感心する。そして、何よりも日本語がよく刈り込まれている。植木屋が入った後の庭みたいなもんだ。

各章に一篇ずつ、いろんな人の詩が織り込まれている。今どき詩なんて時代遅れに決まってる。そんな時代にこんな素敵な詩を並べてみるなんて、粋だと思う。

結局のところ川上弘美には世俗的な人物を描くことができないのではないか、という気も少しするのだが、この小説に出てくるのはちょいと浮世離れした、いささか変な人たちばかりだ。変な親子関係、変な家族。別れても続く変な夫婦。つかみどころのない生物学上の父。女装する高校生。ちょっとずれた高校教師・・・。

そもそも今の日本には変な人が少なすぎる。世の中、こんな変な人ばっかりだったら暮らしやすいだろうにな、と思う。いや、しかし、変でない人たちもこの小説を読んでみようと思うのだろうか? そして、読んだら面白かったと思うのだろうか? もし面白かったと思うのであれば、世の中まだ捨てたもんじゃないと思う。

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Monday, November 10, 2003

『まひるの月を追いかけて』恩田陸(書評)

【11月10日特記】 かの有名なさとなお氏には「おもしろかったのだが、これが代表作?という感じは残る」と書かれてしまったが、僕は恩田陸の作品の中ではやっぱり『黒と茶の幻想』が一番好きなのである(さとなお氏にメールを送って『黒と茶の幻想』を薦めたのは他ならぬ僕である)。

で、この『まひるの月を追いかけて』も、どちらかと言うと『黒と茶の幻想』の線なのである。もっとも、こちらのほうがもう少しはっきりとミステリ仕立てである。つまり、謎があってそれが解けるという形を採っている。

結末についてはあまり多くを語らないほうが良いだろう。不用意に僕がヒントを与えてしまうと、勘の良い読者ならすぐに結末を読み切ってしまう恐れがある。ただ一言で書いてしまうと、この結末は僕にとっては、やや茶番。

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Wednesday, November 05, 2003

『シカゴ育ち』スチュアート・ダイベック(書評)

【11月5日特記】 シカゴの情景とか、登場する人物の造形とか設定とか、ゆっくりと展開されるストーリーであるとか、そういう個別の要素に分解していては到底語れないような魅力が、この短編集にはある。

そして、息を呑むような、溜息をつきそうになるほど素敵な描写がそこかしこに出てくる。もし、どうしても要素に分解してこの小説の魅力を語るとすれば、それは卓越した描写、研ぎ澄まされた表現にある。

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