『コンピュータはなぜ動くのか』矢沢久雄(書評)
【9月15日特記】 うーん、これはちょっと散漫。
日経ソフトウェア社によるこのシリーズは「プログラムはなぜ動くのか」、「Windows はなぜ動くのか」、「ネットワークはなぜつながるのか」と続いて、それぞれプログラム全般、OS、ネットワークの基本的な仕組みについて分かりやすく解説してきた。著者の矢沢は第1弾の「プログラムは…」に続いて2度目の登板である。
しかし、今回のタイトル「コンピュータはなぜ動くのか」はあまりに雑駁で何について書いてあるのか容易に想像がつかない。思わず「電気が流れているから」などと答えてしまいそうな、あまりにも茫漠として答えようのない問いかけがタイトルになっている。
実際に読んでみると、第1章の「コンピュータの3大原則とは」で始まり、第2章「コンピュータを作ってみよう」で物理的な構造解説に入ったかと思うと話は次第にプログラミングのほうに移って、フローチャートやアルゴリズムに焦点を当てたくらいまでは良かったのだが、最後のほうになると、データベース、TCP/IP、暗号、XML、SEとかなり幅が広い、というよりゴチャゴチャしてしまっている。
僕個人としてはたまたまレベルが合っていて、今までにJAVAも暗号もネットワークも少しずつ齧ってきているので、一度は勉強したことを思い起こし、あやふやだった部分を強化し、足りない知識を補うという点でほぼ満点をつけられる書物であったが、こんなことは他の読者にとってはありえないことではないだろうか?
あとがきの部分に、「前作『プログラムは…』を出版した時に70歳のおじいさんから『難しすぎて理解ができなかった』というハガキをもらった」と書いてあったが、今回は以前にもましてそういうハガキが来るのではないか? 範囲が広すぎるのである。
言うなれば中級汎用読本。しかし、この本1冊で完結しようと思って読んではいけません。これは長い勉強の過程の中で通り過ぎる1冊なのだと思う。
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