『燃えるスカートの少女』エイミー・ベンダー(書評)
【9月4日特記】 うーむ、短編小説を評価するってとても難しいんですよね。どうしても中途半端で終わってしまうような感じ(それが余韻というものだと言われればそれまでなのですが)が残るために、好きか嫌いかまでは言えても良いか悪いかまではなかなか到達しません。「評価なんて好き嫌いの延長で良いんだよ」と言ってくれたとしても、良いという言葉も悪いという言葉もやっぱり出て来ないんです。
不思議な短編集です。この本にあるのはエロチックなもの(しかも女性の立場から)、そしてユダヤ的なもの──そこまでは簡単に指摘できるけど、そこから先は少し漠としています。あとは「満たされない気持ち」かな・・・。
全般に非現実的な筋立てのものが多く、「寓話」だと思って読めば良いのかもしれませんが、時にはあまりの荒唐無稽さ、奇想天外さについて行けなくなることもあります。特に表題作などは(訳者はベタ褒めしてるけど)あまりの崩れ方に、「これは思いつく単語を順番に綴っただけではないか」という気さえしてきます。
しかし、そうやって読み進むうちにはたと気づいたのは、「そうか、これは詩なんだ!」ということでした。「ボーナス・トラック」として収められているわずか2ページの短編(しかも原文と翻訳を併載)を読むと、彼女の小説が本当に詩のように美しい言葉たちによって構成されているのがよく解ります。特に英語で読むと、はっとするような美しい文章なんです。
私としてはあまり荒唐無稽になっていない「皮なし」あたりが好き。でも、最初に書いたとおり「これは良いから是非読みなさい」とも「面白くないからやめなよ」とも言えない。ただ、すごく曖昧だけれど、「もしなんだったら、読んでみたら?」と言いたい気分。──何故なら、あなたがこれを読んでどう思ったのか聞いてみたい気がするから。
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