『マッチメイク』不知火京介(書評)
【8月25日特記】 驚くなかれ、格闘技ミステリ!である。
「ナニ? プロレスのミステリなのか!」と言うアナタ、こんな書評を読んでいる場合ではない! 今すぐこの本を「買物カゴ」に入れなさい。あ、それから、僕のこの文章も、ここから先を読む必要なんかないからね。そんな暇があったら、今すぐ本屋に走りなさい。
「プロレスのミステリ? それがどうした?」と言うアナタ、アナタはこの小説には縁がない人です、サヨウナラ。もちろん、この書評も、ここから先読む必要なんかないからね。
さてと、ここから先はもう誰も読む心配がないから正直に書くけれど、驚くほど底が浅い小説だ。仕掛けが見え見え。布石が布石になっていない。
布石というものは、何かコトが起こった時、あるいは一つ謎が解けた時に、「ああ、なるほど、そうだったのか」と思わせるためのものなのだが、この小説においては布石が打たれてまだ何も起こらないうちに、次に何が起きるのかが透けて見えてしまう。全部が全部とは言わないが、少なく見積もっても90%は作者の意図を追い越して謎を暴露してしまっている。
登場人物も多いが、その人物が描き分けられているとも言いにくい。表現も構成も勉強の余地がある。
しかし、何と言ってもこれは格闘技ミステリ!なのである。この小説の全ての魅力はここにある。格闘技に対する熱い思いがテンコ盛りである。作者は紙とペンでブレーン・バスターだのローリング・クラッチ・ホールドなどを繰り出してブンガクと戦っている。小説をガッチリと体固めして3カウントのピン・フォールなのである。
めちゃくちゃ粗い作品だが、最後の盛り上がりもあって、意外に読後感は悪くない。
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