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Saturday, May 03, 2003

『荒俣宏の20世紀世界ミステリー遺産』荒俣宏(書評)

【5月3日特記】 久しぶりに荒俣宏らしい本を読んだ。100冊以上を誇るアラマタの著書の中でも、これは僕が最初に読んで大いに魅せられた『理科系の文学誌』の系譜を引く作品だ。

小説家アラマタには『帝都物語』という代表作があり、あるいはシム・フースイのシリーズがあるが、これらはあくまでアラマタの日頃の研究を良く活かした作品というべきであろう。また、あまたあるノンフィクション系の著作の中では、ゴードン・スミスのような伝記ものも楽しいがアラマタ本来の広がりに欠ける感は否めないし、広告図像やパルプマガジンの研究といったものはむしろ傍流と言うべきであろう。

それに対して前掲の『理科系の文学誌』や『目玉と脳の大冒険』、『大東亜科学奇譚』あるいは本書のような、探求と収集、そして再現性の三位一体となった作品こそがアラマタの本領と言うべきものではないだろうか。

ともかく変なものを見つけ出しては集めてきて、オタクと科学の中間みたいな視点から奇妙にまとめてしまう──荒俣宏というのはそういう男である。で、この本はどういう本かと言うと、まさにそういう本だと思って読めば良い。

ここで取り上げられているのは20世紀の代表的なミステリー(だとアラマタが思う)32の事物や人物、現象である。

世界的に有名な珍奇博物館を建てたリプレーや陸軍登戸研究所など「ふーん、そんなものがあったのか」と驚くもの、チンパンジーのオリバー君やツチノコなど、読んでいて思わず「あったあった!」と叫んでしまいそうな忘れられた存在、そしてアラマタ・ファンおなじみの学天則やレイラインなど、「よくもまあ、これだけいろいろ」と溜息の出そうなテンコ盛りである。掲載されている写真を眺めるだけでも結構仰天である。

そして、何よりも、本書を読むと荒俣宏という人は少年期からちょっと変わった奴だった(しかも現在に至るまでずっとなのだが)ということが判って、「やっぱり」と思ってしまう。

ファンにはなかなか嬉しい著書である。

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