『プログラムはなぜ動くのか』矢沢久雄(書評)
【8月31日特記】 すでに多くの書評で言われているように「この本はとても解りやすい」、などと書くと「コンピュータの初心者でもこの本を読めばプログラムが何故動くかがスーッと頭に入る」と誤解されるかもしれないが、残念ながらそんな魔法みたいな本はあるはずがない。
少なくとも「コンピュータを使い始めてまだ1ヶ月」という人にはとても無理だ。できればPC歴が何年かあって、しかも「その期間ずっとゲームとメールだけやってた」というのではなくて向上心をもって知識の対象を広げてきた人であって、その上でほんの少しでも良いからプログラミングについて齧ったことがある、というのがこの本の理想的な読者像である。
僕の場合は最初のほうは実にスラスラと読めて解りやすい本だったのが、後半になってプログラミング言語の実例が増えてきた辺りで少し突っかかってしまった。
もちろん、複数の言語で日常的にプログラムを書いている人でない限り、このプログラム例の全ての意味が解るわけがない。しかし、たとえ全てが解らなくても、コンピュータがどのような処理をしているかというイメージはちゃんと掴めるように書いてあるのが、この本の素晴らしいところである。
「もう少し勉強したらまた読み返してみよう」──そういう気にさせてくれる本である。
それを裏返せば、「もう少し勉強したら」なんて気がさらさらない人は手を出さないほうが良い本でもある、ということでもある。でも、読んでみて「もう少し勉強してみようかな」という気になったら、途中で読むのをやめても捨てずに置いておくことをお勧めする。
こんな本はそうたくさんは出ないはずである。
※ 3作連続でこの書評が bk1「今週のオススメ書評」 に選ばれて、「なんだ、楽勝だ」と思ったが、その後2度とそんなことはなかった(笑)
ひとえに当時は投稿者が少なかったということなのだろう。その後は大体年間コンスタントに4本、最後の2年くらいは3本というペースだった。つまりはどんどん投稿者が増えたということなのだろう。
自分で読み返してみても、必ずしも bk1「今週のオススメ書評」 に選ばれた書評が他の書評より優れているとは思えない。もちろん、選ぶ人の感性が僕とは異なっているので、当たり前といえば当たり前のことであるが、他にもきっと別の尺度があって選ばれていたのではないかと思う。
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