『OUT』桐野夏生(書評)
【8月10日特記】 それぞれに貧しくてさまざまに不幸な4人の主婦によるバラバラ殺人——凄惨な話ではあるが猟奇的な趣味は感じられない。それは作者が扱おうとしているベースが事件ではなく人間のほうにあるからではないかと思う。
この小説が評価されたのは、異常な事件を描きながら決して表層に留まることなく、人の心の底で黒々ととぐろを巻いている禁断の箇所に到達しているからではないだろうか。
謎解きのストーリーではないので、終盤まで読み進んだ後の興味はこの話がどのような形で終わるのか──主人公は殺されてしまうのか、それとも相手を殺して生き延びるのか、高飛びするのか自首するのか、それともあえなく逮捕されるのか──ということになってくる。
作者はそういう緊張感をみごとな筆力をもって行間に描き切っている。
こういうエンディングをどう感じるか?──僕はむしろ救いを感じられたのだがいかがだろうか?
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