『R.P.G.』宮部みゆき(書評)
【8月10日特記】 例によってよくできている(途中から先が読めたりしてしまう部分もないではないのだが…)。今回はインターネットである。『火車』にしても『理由』にしても、その時代に特徴的な現象を小説に取り込むのが本当に上手な作家である。
ただし、宮部みゆきの場合には人物よりも社会にスポットライトを当てる傾向があるので、ややもすると登場人物が印象に残らない嫌いがあり、この作品も例外ではない。人間の描き方が淡白なのである。
もっとも、あとがきによると、本書に登場する2人の刑事は『模倣犯』と『クロスファイア』の登場人物であるらしいので、宮部作品を全部読んでいるようなコアなファンにとってはもっと親しみが湧くのかもしれない。
もちろんストーリー自体は巧妙で、初めて宮部作品を手に取った人でも充分に楽しめる内容になっている。内容について細かく書くわけにも行かないが、この『R.P.G.』というタイトルのつけ方も絶妙である。社会性を意識しながら安定したエンタテインメント性を保てるところがこの作家の真骨頂と言えるのではないだろうか。
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