『数の寓話』アルマン・エルスコヴィシ(書評)
【7月21日特記】 講演の依頼を受けた数学者が「自分はこういう風に面白い話をすることができる」と誇っている――これはそういう本である。
単純に数学論を展開しても一般の聴衆はついて来られない。だから様々な物語の中に数の不思議を織り込んで話すことによって、誰もが数学の面白さに触れることができる――そういうことを狙って工夫して書かれた本である。
しかし、如何せんプロの作家が書いたストーリーではないので、正直言って「お話」の部分が、読んでいてこの上なくかったるい。文学ファンにとっては少し冗漫な文章であるし、数学ファンにとってはそもそもこんな「お話」は不要なものである。そういう意味ではどちらのファンにとっても中途半端な作品になっているのが残念だ。
でも、考えてみれば、こういう体裁を採っていなければ、多分僕はこの本を手にとってみて買うこともなかったろうし、多少辛抱して読み進んでいると、数学の面白さ・数の神秘というものを充分満喫することができる。
読み終わって思うのは、この本には努力賞をあげたいということである。
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