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Saturday, June 22, 2002

『象と耳鳴り』恩田陸(書評)

【6月22日特記】 「知的」という安っぽい言葉をむやみに使いたくはないのだが、いや、「知的」という言葉を安っぽく使いたくはないのだが、この人の書く話は不可避的に知的なのである。

著者のデビュー作に登場した脇役の老人を主人公とする、「知的謎解きゲーム連作集」とでも言うべき本である。この著者らしく、「事件が起きる→解決する」式の構成にはしていないのだが、あとがきによると「本格推理小説への憧れ捨てがたく、数年に亘り悪戦苦闘したあげく、やっとのことで出来上がった短編集」なのだそうである。

時々、知が勝ちすぎて、登場人物の口を借りてはいるが、実は著者自身がいかに知的で聡明であるかをひけらかしているような印象を与えるところがある。言わば「知に働けば角が立つ」というところであるが、しかし、読み進んでゆくと、角が立つ寸前に「機知」を働かせてひらりとかわしている感じもする。このあたりがこの著者の魅力である。

読み終わって、やはりこれは本格推理小説などではないという気もするのだが、それは決して本格推理小説よりグレードが低いと言う意味ではない。

彼女の「知」と競いながら、彼女の「機知」を楽しみながら読めば、それはとても優れたエンタテインメントである

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