『ジーンリッチの復讐』山川健一(書評)
【5月11日特記】 この作家はその時代に脚光を浴びている色んなものを題材にして次々に書いて行く。つまるところ器用なんですね。
そして、中途半端に器用なのではなく、結構イイ線まで器用なので割合安心して読める。悪く言えばミーハーなのだけれど、よく言えば時代を見る眼がある。適度にエンタテインメントであり、過度に嘘臭くはない。そういう意味では村上龍に通じるところがあると言っても良いのだが、受ける感じは全然違う。
特にこの作品は主人公が実にあっけらかんとした少年であり、ある意味で同じように少年たちの反乱を描いた村上龍の「希望の国のエクソダス」なんかと比べると、明らかに深刻さがない。最後のほうなんて、まるでこれはアニメですよ。
で、読んでがっかりするかと言えば、まあ、これはこれで、という感じ。
そういうところに収めてしまうというのは、やっぱりこの人は、つまるところ器用なんですね。
入念な下調べに基づいて遺伝子操作やインターネット・ウィルスという先端的な事項を織り込んだ、器用な作家による適度なエンタテインメントを読んでみるのも面白いですよ──というのが総括でしょうか?
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