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Sunday, April 14, 2002

『黒と茶の幻想』恩田陸(書評)

【4月14日特記】 学生時代の友だちであった4人の男女がY島に旅行に行く。ただ、それだけの話である。そこで殺人が起こる訳ではなく、誰かが神隠しに遭う訳でもない。

なのに我々は、読みながら4人の心理の綾に絡め取られてしまう。何故なら4人のキャラクターが極めて綿密に描き分けられているからだ。

4人の登場人物を設定し終わった時点で、この小説は9割がた書き終えられたと言って良い。この設定こそがこの小説のほとんど全ての魅力であり原動力であると言える。

これは厳密な意味でのファンタジーでもなければミステリでもない。だから、そういうつもりで読み始めた人は、読み終わって肩透かしを食うかもしれない。現在進行形の「事件」は何もなく、登場人物の会話と回想、そして森の描写が延々と続いて行くだけである。

そこにあるのは、4人の男女の心が動き、揺れ、痛み、そして再生するさまを丹念に追いかけた描写である。登場人物が四人四様でありながら、皆一様に、人生に対して肯定的な強さを持っているのに惹かれる。

相変わらず「巧い」恩田ワールドである。

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