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Sunday, April 14, 2002

『図書室の海』恩田陸(書評) 

【4月14日特記】 もしもあなたが恩田陸の作品をこの本で初めて読もうとしているのなら、悪いことは言わない、やめたほうが良い。もうこの本を買ってしまっているなら、できれば他の長編を買ってきて、まずそっちを先に読んだほうが良い。「いきなり長編に手を出すのも冒険だから、とりあえず短編から」と思っているなら、その考えは捨てたほうが良い。

この本に収められている短編は、何かの予告編であったり別バージョンであったりで、それ自身で完結してるものがない。言うならば短編小説としては反則技である。何だか食い足りない。中途半端な終わり方だと思う。もう少し明示的に書いてくれないと、少し謎が残ったりする。

この本の場合、そういう非完結性が非常に大きな余韻を残しているのも事実だが、その余韻を楽しめるのは、悲しいかな、熟練した恩田ファンだけである。

「村上ワールド」とか「恩田ワールド」とか、ワールドという言葉を冠せられる作家の場合、真骨頂はやはり長編にある。短編はコアなファンにとっての「余技としての愉しみ」に取っておくのが無難だろう。

まず長編を読みなさい。そして、恩田ワールドに首までどっぷり浸かってから、こういう短編に手を出すことをお薦めする。

恩田陸という作家は、嵌らなければ楽しめない作家なのである。

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