『ルート225』藤野千夜(書評)
【3月3日特記】 この物語の素敵なところはこの終わり方である。
これから読む人のためにあえて詳しくは書かないが、「普通はこうなってこう終わるだろう」という終わり方では終わらない。「これは所謂ジュヴナイルSFなのかな」と思って読み始めるのだが、少年少女向け小説やSF小説の終わり方には辿り着かないのである(って、読んでない人にはさっぱり解らないでしょうが・・・)。
我々は、「問題が発生する→解決する」「努力をする→報われる」式の物語に慣れすぎてしまっているが、実際の世の中はそんなに物語的ではない。
この小説はそのことを教えてくれる。弟と2人でパラレルワールドに迷い込んでしまうという奇想天外な導入部に続いてやってくるのは、意外にも姉弟の平々凡々たる日常である。
「アメリカン・ドリーム」とか「因果応報」とか、我々の生活の中にはひどく単純な図式がたくさんある。もちろん実生活はそれほど単純には転がらない。
そんな中にあって、作者は主人公の姉弟を愛情をもって描いている。結局はSFでも幻想小説でもなく、少年少女の成長物語になっている点に拍手を送りたい。
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