『若者はなぜ「繋がり」たがるのか』武田徹(書評)
【3月22日特記】 サブタイトルに「ケータイ世代の行方」とある。
書き下ろしのまとまったメディア論(あるいは世代論)かと思ったら、そうではなくて、あちこちに掲載された文章(投稿や講演まで含む)の寄せ集めである。ケータイだけではなく、Jポップから性転換手術まで、選んだテーマもバラエティに富む、というよりはバラバラだ。そして、自分で考察している部分よりも引用が多いような気もする。
なのにちゃんと統一感があるのは作者の分析と構築の力がしっかりしているからだと思ってよい。
例えば社会学者がポップ・ミュージックを取り上げたりすると、往々にして音楽の本質とは無関係に「社会学の面から宇多田ヒカルを切ればこうなります」みたいな文章になりがちなのだが、この人は比較文化の専門家である以前にひとりのリスナーであり、音楽知識も並以上にある。
音楽だけではなくて、この本で取り上げている様々なテーマについてそれぞれに造詣が深い。
だからこそ、この本は総合的な角度から分析したケータイ世代論たり得たのだろう。
一見バラバラでありながら、作者の視点は微妙に繋がっている。それが楽しめれば文体の不統一は気にならないだろう。
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