『イチローUSA語録』デイヴィッド・シールズ編(書評)
【2月16日特記】 野球ファンが英語の勉強になる本である。
この本の何が良いって、これはイチロー自身が話した英語を載せているのではなく、イチローが喋った日本語を英語に翻訳した記事を集めてあるということだ。つまり日本人英語ではなく、ちゃんとしたアメリカ英語であり、しかも必然的に会話体のものが多い。日米両文が併記されており翻訳の勉強になるし、英語らしい表現もふんだんに出てくる。
ただ、僕が書きたかったのはそんなことではない。イチローという選手は、ことインタビューの受け答えについては非常にぶっきらぼうで、日本人としては少し異色である。それがアメリカに渡り、アメリカでインタビューを受け、彼自身は日本にいた時と同じように受け答えしているのに、それが英語に訳された途端、また微妙にニュアンスが変わっている様が非常に面白いのである。
読んでいて、「なるほど、英語にするとそういう表現になるか」と思う。「こういう表現になると、聞かされたアメリカ人は一方でギョッとしながら他方で感心するかもしれないな」と思ってしまう。この本は言葉を語っているようで、実はその背後の文化まで語っているのである。
そして、文化まで語らないことには言葉なんて身につくはずはないのである。
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