Monday, December 09, 2019

2019邦画トキメキ祭り(ALiS から転記)

【12月9日 転記】 (以下は ALiS に投稿した文章ですが、映画の話なのでここにも転記しておこうかと思います。年末の企画に合わせて書いたもので、別に今年のベスト3を選ぼうなどと大それたことは考えずに、#2019トキメキ祭りという企画名に合わせた軽い読み物のつもりです)

《2019邦画トキメキ祭り》

2019年はこれまでのところ、映画館/試写会場で 52本の邦画を観ている。まだ増えると思うが、2019トキメキ祭りの締切が迫っているので、ここで打ち切って 2019年日本映画トキメキTOP3 を選びたい。 

次点『チワワちゃん』 

二宮健監督。岡崎京子の漫画が原作。この、まるでミュージック・ビデオみたいな、でも、映像でしか表せないものをしっかり映像で表した「青春の自爆テロ!」を観て、トキメかないはずがない。

ただ、チワワちゃんに扮した門脇麦という女優が昔からあまり好みでないので、僕の中では惜しいかな次点。 

第3位『さよならくちびる』 

久しぶりの塩田明彦監督。こちらにも門脇麦が出ているが、僕のトキメキはフォーク・デュオ“ハルレオ”のハルではなく、レオ役の小松菜奈。レオはハルに拾われたようなもんだし、ギターもハルに教わったし、レオが好きなシマ(成田凌)はハルにぞっこんだし…。 

そんな劣等感を抱いたレオがハルとマネージャーのシマとの3人でツアーを回るロード・ムービー。キツイぞ、これは。奔放そうに見えてレオの胸中は嵐が吹き荒れている。この小松菜奈にトキメかずにどうする? 

第2位『惡の華』

原作は押見修造の強烈な漫画。敬愛してやまない井口昇監督。そして、脚本は岡田麿里。

ボードレールの『惡の華』など、難しい本ばかり読んでいる中2の春日(伊藤健太郎)が、ある日教室でクラスのアイドル佐伯(秋田汐梨)の体操服を拾い、ついついブルマーを顔に押し当てて匂いをかいでしまう。ところが、それをクラスの問題児・仲村(玉城ティナ)に見咎められて、そこから春日は被虐と官能の地獄に堕ちて行く。

この玉城ティナのめくるめく惡の女王にトキメかずにどうする? 最後に咲く惡の華も怖い。

第1位『愛がなんだ』

『さよならくちびる』にも出ていた成田凌に岸井ゆきのがメロメロに恋をする話。原作は角田光代。監督は今年『アイネクライネナハトムジーク』でも注目された今泉力哉。

痛い痛い、行き場のない物語。僕にはこういう愛は全く共感できない。テルコ(岸井ゆきの)もワケ分からんが、マモル(成田凌)がこれまたひどすぎる。ナカハラ(若葉竜也)がまた異常である。でも、そんな彼らの愛のあり方にどこか惹かれてしまう。

夜の路上で突然ラップを歌い始める岸井ゆきのにトキメかずにどうする?


今年の日本映画はものすごい豊作でした。あまり映画館に行かない人もたまにはご覧あれ。トキメきますよ。

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Sunday, December 08, 2019

掘り出しモノ賞

【12月8日 記】 僕はこのブログ以外にも映画の記事を書いて投稿したり賞に投票したりしています。

そのひとつはインターネット映画大賞で、これについては毎年どの映画に投票したかということだけはこのブログにも書いてきました。

しかし、残念ですが、この賞は昨年で終わってしまいました。なんとこれを運営していたのはたった1人の方だったそうで、そりゃあ維持の限界が来ても仕方がないと思います。

幸いにしてアーカイブの作業を地道にやっていただいているので、今後も閲覧は可能なようで、ありがたい限りです。

それから、もうひとつは coco賞です。こちらは twitterベースの賞で、僕も変名の twitterアカウントで参加してきたのですが、この賞も残念ながら coco賞2017投票を最後に更新がありません。

僕はこの賞に 2012年以来6年連続で投票してきました。面白いのは、1位から10位まで投票する以外に、自分で名前をつけて独自の賞を選ぶことができる点です。

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Saturday, December 07, 2019

映画『ルパン三世 THE FIRST』

【12月7日 記】 映画『ルパン三世 THE FIRST』を観てきた。山崎貴監督による 3DCG ということで、どういう映画になっているかは想像がつくのだが、ま、観ておこうか、という感じで。

2014年に北村龍平監督が小栗旬のルパン三世で撮った実写版があまり盛り上がらず、興行的に失敗に終わったのは、あのテーマ曲の使用許可が得られず他の BGM にしたということも多少はあると思う。

今回は「音楽 大野雄二」としっかりクレジットされており、冒頭からノリノリである。

で、まあ、言うまでもないが、よくできた 3DCG である。実写と見紛うほどのリアルさ、いや、器物は実写と見紛うほどなのだが、人物は造形はもちろん動きもしっかりデフォルメしてあって、まるでフィギュアが動いているみたいである。多分それは狙い通りなんだろうなと思う。

リップ・シンクも正確で、フィギュアのくせにほんとうに喋っている、みたいな感じがする。それも狙い通りなんだろうなと思う。

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Sunday, December 01, 2019

映画『殺さない彼と死なない彼女』

【12月1日 記】 映画『殺さない彼と死なない彼女』を観てきた。小林啓一というのは知らない監督だと思ったが、実は前作『逆光の頃』を観ていた。アニメが混じった短い作品だったが、割合良かったような記憶がある(高杉真宙だったのか!)。

小さな劇場だったがぎっしり満員だった、途中であちこちからクスクス笑いが漏れる。

しかし、見始めてすぐに思ったのは、

  1. なんだ、この靄がかかったような画質は?
  2. 桜井日奈子はどうしていつも黒のタイツなんだろうか?
  3. 一つひとつのカットがものすごく長い。

の3点である。

1)は全体がそんなトーンである上に、人物の背景が悉くぼかしてある。なんでこんな面倒くさいことをしたのだろう。カメラに収めた映像は人間の目が認識する映像とはもちろん違うのだが、ここまで目に見えるものと違う映像を見せられるとちょっと気になる。

2)については、『ママレード・ボーイ』に続いて、他の女生徒はそうでないのにひとりだけ黒タイツというのがすごく気になる。

3)については、冒頭の廊下を2人で歩く2つのシーンを皮切りに、かなりの部分をワンシーン・ワンカットの長回しで撮っていて、切れない芝居を見せてくれる。これはとても良かった。

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Saturday, November 30, 2019

大雨の東京で傘がない

【11月30日 記】 先日、西田二郎さんと片岡秀夫さんと森永真弓さんの3人が映画『天気の子』を語る会を聴きに行ったときに、どうしてもこの映画に不満を感じる人たちの話が出て、それで僕もウチの会社のある人のことを思い出した(この先、この映画のネタバレがあります)。

彼が何歳なのか正確なところは知らないが、多分もう40代に入っていると思う。男性である。

その彼が『天気の子』を観て、facebook で激しく憤っていたのである。

曰く、「みんな本当にこれでいいのか? 東京が水没したままなんだぞ。本当にこのままでいいのか?」と。

この映画に社会と個人の相克を感じ取って賛否を論じた人は多かったが、彼が嘆いたのは天気が回復せず、東京が水浸しのまま映画が終わったという一点であった。

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Saturday, November 23, 2019

映画『決算!忠臣蔵』

【11月23日 記】 久しぶりに夫婦の好みがバッチリ一致して、2人で映画『決算!忠臣蔵』を観てきた。僕が大好きな中村義洋監督(今回は脚本も)。客席を見渡して妻が「ジジババ・オンパレード」と評したのはその通りだが、しかし大入り満員である。

日本人なら誰でも知っている(いや、若い人は知らないか?)忠臣蔵を、経済/経営学の観点から輪切りに刻んだコメディである。原作があるとは言え、それは小説でも戯曲でもなく、大石内蔵助が実際に残した決算書を東大教授が分析した研究書である。だから、筋運びは完全に中村オリジナルなのだ。

吉本興業が出資している関係もあって、吉本の芸人が多数出演しているが、普段の吉本芸人がやっているようなギャグやドタバタとは全く異なる知的な喜劇に仕上がっているところが本当に見事だと思った。

しかも、自ら歴史物が好きで豊富な知識を有する中村監督は、史実や歌舞伎や伝承に反するようなストーリーはほとんど書かず、書き込まれていない部分に自由な発想を注入して膨らませたと言う。このインテレクチュアルでクリエイティブな作業に、僕は敬意を評したい。

監督はプロデューサーから依頼を受けた際に、これは暴走する監督を抑え込むプロデューサーの映画だと言ったらしい。つまり、仇討ち・主戦派の堀部安兵衛らを、予算を司る「役方」の侍が抑え込む話だと言うのだ。この捉え方も面白い。

そして、筆頭家老の大石内蔵助は、大義と予算と自らの怠け癖を行ったり来たりして、場面場面であっちについたりこっちについたりする。この設定も面白い。堤真一は適役だった。

さらに、忠臣蔵だと言うのに吉良上野介が一切登場しないのがこれまた秀逸である。では、松之廊下での刃傷沙汰はどう描いたかと言うと、吉良の所謂“主観映像”なのである。これもかなり現代的な手法で、なるほどと感心した。

岡村隆史、木村祐一、板尾創路、西川きよし、桂文珍、村上ショージら吉本の芸人が多いこともあって、変な訛りの関西弁は聞こえない。他の役者陣も、兵庫出身の堤真一や上島竜兵、関ジャニ∞の横山裕、そして東京出身だが実は母親が姫路生まれという石原さとみなど、ちゃんと喋れる役者を多用したのも良かった。

それに加えて、中村組の常連である濱田岳、竹内結子をはじめ、妻夫木聡、荒川良々、阿部サダヲ、大地康雄、西村まさ彦、寺脇康文、滝藤賢一、笹野高史、近藤芳正、鈴木福、千葉雄大ら、まあ、この出し物ならオールスターキャストになるのは必然とは言え、豪華な顔ぶれである。

で、この顔は見たことあるけど誰だっけなあ?と思ったら、『蜜蜂と遠雷』で風間塵を演じていた鈴鹿央士だった。

しかし、それにしても堀部安兵衛が荒川良々というのは、凡人には思いつかないキャスティングである(笑)

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Sunday, November 10, 2019

映画『ひとよ』

【11月10日 記】 映画『ひとよ』を観てきた。「ひとよ」とは「一夜」のことであるが、わざわざ仮名書きにしてあるのは明らかに他の意味を読み取ることを想定してのことだろう。原作は「劇団KAKUTA」という劇団の芝居だそうだ。

白石和彌監督は、ずっと面白い存在だなあと思っていたが、僕にとってはどちらかというと少し外れた脇道にいるイメージだった。それがここのところメインストリームに出てきた感がある。この人は多作だが、毎回違う役者を起用する。そこが僕は好きだ。

途中で判るが、舞台は茨城県のどこかの町である。冒頭は激しい雨の夜。タクシー会社の事務所にタクシーが乗りつけて、後部座席から男が降りてくる。酔っているのか大声で悪態をついている。

で、カメラはタクシーの中に変わる。運転手がバックを始める。ゴンッと何かに当たった衝撃。

次のシーンは事務所兼住居みたいなところ。男2人、女1人のきょうだいがいる。3人とも誰かからイジメに遭っているのかあちこちに傷跡があり、包帯を巻いたり湿布薬を貼ったりしている。

神経質そうにパソコンを組み立ている長男。歩きながら ICレコーダーに自作の小説を吹き込んでいる次男。お人形の髪の毛をカットしている妹。

そこに先ほどの運転手が入ってくる。冒頭のシーンでは顔がよく分からなかったが、女だ。それは3人の母親・こはる(田中裕子)だった。

こはるは3人におにぎりを食べさせ、自分も1個頬張って、「今お父さんを轢き殺してきた。これでもう暴力を恐れることはない。みんな自由に生きなさい。自分は今から警察に行く。出所してもすぐには戻れないだろうが、15年経ったら戻ってくる」と言って出て行く。

そして15年後。まずは人物紹介だ。タクシー会社は親戚の丸井(音尾琢真)が引き取って切り回している。

長男の大樹(鈴木亮平)は吃音がある。地元の電気店で専務をしている。次男の雄二(佐藤健)は東京でライターの端くれになって、風俗記事などを書きながらなんとか生計を立てている。妹の園子(松岡茉優)は美容師の夢を諦め、場末のスナックで働き、毎晩悪酔いして帰宅する。

そして、あの事件からきっちり15年経った夜、そこにこはるが本当に戻ってくる。母を思う気持ちはありながらも動揺してしまって何をどうして良いやら分からず狼狽える大樹。もう少し落ち着いていて、母の帰還を素直に受け止め、気遣いもしっかりできているのが園子。

そして、呼び戻されて東京から帰省した雄二は、逆に、母が殺人者になったために自分が辛い目に遭ったことで明らかに母を恨んでいた。

それが初期設定である。どう考えてもこれはめちゃくちゃややこしい。家族も、疑似家族的なタクシー会社の仲間たちも、そして世間も、渦巻く感情はあまりにも多様で、あまりにも捻じくれて、一筋縄では行かない。寂れた街の風景をバックに、ともすればみんなの気持ちが荒んで行く。

それを本当にリアルに描いてある。

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Sunday, November 03, 2019

映画『IT / イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』

【11月3日 記】 映画『IT / イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』を観てきた。

一昨年の『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の続編である。前作はスティーブン・キングの原作の半分しか描いていなかったらしく、これはあの事件から27年後である。

僕は前作が面白ければシリーズ続編は大体観るのであるが、しかし、この手の映画は根本的に僕には向いていないのである。

理由の第一は、いつも書いているように、僕は観た映画でも読んだ本でも片っ端から忘れて行くので、続編が公開になった頃にはほとんど前作を憶えていないということ。

そして、続編を見始めたら次第に思い出すかと言うと全然そんなことはないということ(そもそも、同じ映画を2度観てもそう簡単には思い出さないのだから)。

理由の第二は、外国映画の場合誰が誰なのか僕には却々識別がつかないということ。邦画なら主演クラスはほとんどがしっかり顔を記憶している俳優なので何の心配もないが、普段あまり観ていない外画の場合はよく誰が誰か分からなくなる。

ただでさえそうなのに、この映画の IT と戦う“ルーザーズ”は7人組で、しかも少年少女時代と27年後のダブルなので、それぞれの7人がごっちゃになるのに加えて、27年前の誰が今の誰なのか頭の中でちゃんと結びつかないのである。

幸いにして7人のうち1人は女性、1人は黒人なので区別はつくのだが、あとの5人×2が難しい。

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Sunday, October 27, 2019

映画『楽園』のパンフレットから

【10月27日 追記】 昨日観て昨日書いた記事の続き。この文章はネタバレ、と言うか、映画の結末部分に触れているので要注意。

映画の最後のほうに、現在の紡(杉咲花)が青田のY字路で豪士(綾野剛)が紡の同級生・愛華の後を追って歩いて行くのを眺めているシーンがある。

愛華の失踪事件は12年前であり、その疑いをかけられた豪士も既に死んでいるが、それを眺めているのは現在の紡──という幻視っぽいシーンである。こういう構造にしたことには大きな意味がある。

瀬々敬久監督もパンフレットで語っているように、小説であれば過去のことは過去形で、現在のことは現在形で書けるが、映画の場合は全て眼前で現在形で進行してしまう。だから、ここに眺めている現在の紡を配置しなければ、それは事実という位置づけの映像になってしまう。

つまり、映画も終盤にさしかかったところで、「事実はこうだったんですよ。誰からも無視されていた豪士が愛華に声をかけられて花の飾りをもらい、そのあと豪士は愛華のあとをつけていったんですよ」という種明かしをすることになってしまう。

ところが、それを見ている紡がいることで、これは本当のことなのか幻想なのか、途端に分からなくなってしまう。いや、仮にこれが事実であったとしても、描かれているのは豪士が愛華の後ろを歩いているだけの映像であって、その後豪士が愛華を殺したかどうかには全く触れていない。

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Saturday, October 26, 2019

映画『楽園』

【10月26日 記】 映画『楽園』を観てきた。

瀬々敬久監督はとりたてて好きな監督ではない。かと言って、別に観るのを避けている監督でもない。

いつも極めてストレートでありながら抑え気味の表現で、それが緊張感を生むのだけれど、僕はもうちょっとケレン味があるほうが好きなのは確かである。

ただ、画が語るという点では、なぜそんなことができるのかと不思議になるくらいの力がある。

この映画も冒頭からの青田の空撮、そして、吉田修一の原作小説のタイトルでもある“青田のY字路”の禍々しさは何だろう?

紡(つむぎ)が豪士(たけし)に「どこかに行きたいですか?」と訊いた、こちらはY字路ではなく、青田のT字路の、行き詰まって宙吊りにされたような感じ。ちなみにこのシーンは物語の進行には直接必要のないものだが、ものすごく印象深いシーンだ。

撮影は鍋島淳裕である。

吉田修一の5編からなる『犯罪小説集』から前掲の『青田のY字路』と『万屋善次郎』の2編を選んだと言うが、監督によるアレンジがかなり施されていて、例えば原作ではそれぞれの物語は独立したものであって交錯しないのだそうだ。

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