ライ麦畑でつかまって
【12月29日 転記】 大学1年の時に「英文学」の講義を取った。当たり前のことなのかどうなのかは判らないが、教室に集まった学生の大半は文学部生のようで、経済学部から参加しているのは僕ぐらいのものだった。
あくまで感じなので具体的にどうとは言いにくいのだが、彼らは僕が経済学部で遭遇する学生たちとちょっと感じが違った。そして、経済学部で経済学の話をしているのはほんの一部の学生でしかないが、教官が現れるまでの間、彼らはみんな、口々にずっと文学の話をしているのである。
「そうじゃなくてヘムはさあ…」
と、僕の前の列に座っている女子学生が言っている。
ヘムって何だろう? まさかヘモグロビンじゃないよね? と僕は思う。
聞き耳を立てていると、やがてそれがヘミングウェイのことだと判る。ふーん。僕は感心する。不思議に嫌味には感じない。そうこうしていると女性の教官が入って来た。
教材は Contemporary American Jewish Writers という短編集だった。その本で僕はジェローム・D・サリンジャーに出会った。そして捕まった。
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