Monday, October 22, 2018

『シングル&シンプル マーケティング』本間充(書評)

【10月22日 記】 こういう書き方をすると大変失礼だが、最新のマーケティング本だと思って読んだら、最後まで読んで「なぁんだ、当たり前のことしか書いてないじゃん」という感じの本なのである。

そして、それこそがまさにこの本の言わんとするべきことなのだと思った。何故こんな当たり前のことがちゃんとやれないかと言えば、それは著者が言うように、

「過去の成功体験が大きいマーケターには、理解しにくい時代」になった(p.31)

からなのである。

この本には難しい概念図やお題目めいた箇条書き、偉そうに公式めいたまとめなどがほとんど出てこない(唯一、「シングル&シンプル マーケティングの1D2P1V」というのがあるが)。ここにはただ、

現在のマーケティングでは、お客様、ターゲットの理解が、非常に重要なプロセス、活動になっていることがわかるでしょう。(p.67)

というような、解りやすい表現が、しかし、じゃあ具体的にはどうすれば良いの?と訊きたくなるような文章が並んでいるだけなのである。

Continue reading "『シングル&シンプル マーケティング』本間充(書評)"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Sunday, September 23, 2018

書き直しの効能

【9月23日 記】 文章を書いてみて、一応書き終えたつもりなのだけれど、どうもあんまりうまく書けていない気がする、なんてことは誰にでもあることだろうし、僕の場合もしょっちゅうある。

それで、時間がある場合はそこからさらに一生懸命こねくり回したりするわけだが、それで文章がすっきりと締まってくることはめったにない。で、結局は仕方なく無理やりそこで「完成品」にしてしまうわけである。

9/15 に「内田けんじと上田慎一郎」のタイトルで書いた文章もまさにその類だった。

で、この文章に書いた内容については、facebook にも上げておきたいと思った。ちなみに、僕は、ブログは不特定多数の皆さんへの、facebook は少数の直接的な知り合いへのメッセージだと思っている。

だから、同じテーマで書く場合も通常は別の文章を認めることにしている。

ブログの読者層は、こちらからは全然見えないのだが、facebook の「友達」についてはなんとなく傾向が見える。①『カメラを止めるな!』を観た人は相当多い。②たくさん映画を観ている人も何人かいるが、そういう人はそれほど多くはない。

そういうわけで、facebook のほうは映画についてあまり分析的にならず、あまり細かいことを書かず、『運命じゃない人』と『カメラを止めるな!』の類似点に絞って書こうと思った。

それで書いてみると、ブログに書いた文章よりはるかに整理がついていて分かりやすい。考えてみれば、書き直したら整理がつくのは当たり前である。それで、結局その文章を facebook に上げた後、それをまるごとコピペして、元のブログの文章に上書きしてしまった。

それが今の記事である。

Continue reading "書き直しの効能"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Thursday, September 20, 2018

『寝ても覚めても』柴崎友香(書評)

【9月20日 記】 映画を先に観た。だから、どうしても映画との比較が感想の中心になってしまう。

濱口竜介が監督を務めた映画はかなり原作を書き換えていた。和歌山が北海道に変わっている、とか言う話ではない。へえ、こんなに違うのか、と思うほど、根本的に変わっている部分がある。

もちろん、長編小説を映画化する場合、通常はそのままでは劇場用映画のスタンダードである 2時間前後の枠には収まらない。

だから、長い原作の一部分を切り落として(あるいは逆に一部分を切り取ってそれを)映画化するか、それとも設定や進行を書き換えて捻って繋げるみたいなことをするか、通常はその両方をやることになる。

ただ、これくらい大きく触ると、原作者によっては激怒する人もいるんだろうな、と思うほど、いろんなところが、と言うより、いろんな面で原作とは違うものになっている気がした。

冒頭から言うと、麦と朝子の出会い方からして全く違う。おまけに小説のほうはどうでも良い周辺の描写がいつまでもぐるぐる回って、却々先に進んでくれない。僕は(映画を観た後だったのでなおさら)読んでいて「よし、これでこそ柴崎友香だ!」と嬉しくなった(などと言いながら、実はまだ柴崎友香を読むのは2冊目なのだが)。

濱口監督は原作小説を「細密な日常描写と、突然訪れる荒唐無稽な展開」と分析している。なるほど、彼はそういう読み方をしたんだろうな。だから、ああいう映画になったのだと思う。

僕の感じ方は少し違った。確かに細密な日常描写と突然訪れる荒唐無稽な展開がそこにはある。ただ、濱口監督の映画では、その荒唐無稽な展開によってそれまでの日常はボロボロに破壊されてしまう。

それに対してこの原作小説では、荒唐無稽な展開の後、まるで何ごともなかったかのように、いや、と言うか、何があったって日常は日常だと言わんばかりに、やっぱり日常が戻ってくる。それが元の日常なのか新たな日常なのかは判らないが。

映画は荒唐無稽な展開に焦点を当てている。だから、怖い。

けれど、原作小説の重みは、僕はこのだらだらとした日常描写にあると思う。

Continue reading "『寝ても覚めても』柴崎友香(書評)"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Thursday, September 13, 2018

『徹底理解 ブロックチェーン』Daniel Drescher著、株式会社クイープ訳(書評)

【9月13日 記】 インプレスが出しているブロックチェーンの解説書である。

絶妙の比喩を使ってめちゃくちゃ解りやすいという話を聞いて入手した。著者は「はじめに」で「数学や数式は含まない」と宣言しており、Stepごとに確かに解りやすい比喩が用意されていてとっつきが良い。

それに、何かと言えばビットコインの話になってしまうブロックチェーンについて、まずはビットコインと全然関係のない概念説明から入っているところが良い。

と言うか、この本は最初から最後までブロックチェーン技術の概念を理解させるためのものなのである。

でも、逆に言うと、そこに落とし穴があるのも事実で、確かに最初は読みやすくてスルスルと頭に入ってくるのだが、数学や数式もなく比喩を使った概念の話が延々と続くと、やっぱり人は飽きてきて眠くなってしまったりするものである。

Continue reading "『徹底理解 ブロックチェーン』Daniel Drescher著、株式会社クイープ訳(書評)"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Tuesday, September 04, 2018

『迷子のコピーライター』日下慶太(書評)

【9月4日 記】 不思議な本である。商店街ポスター展の仕掛け人として大いに成功を遂げたコピーライターの本だと聞けば、(まあ、タイトルはちょっと変わってはいるが)多分広告のノウハウ本だと思う人が多いだろう。

ちょっと異色っぽい人のようだから奇を衒った書き出しをしたのかもしれないが、そのうちに「広告で忘れてはいけないたったひとつの原則」とか「コピーライティングの3つの要素」とかいうようなものが出てくるのではないかと思ったりするのだが、これが全くない。

出だしは自伝である。いや、小説である。いや、作者が自分のことを書いた文章だから自伝か小説かじゃなくて、つまり自伝小説なのだが、小説であることを強調したいのはそれだけ面白いということだ。

著者は電通に就職が決まってからユーラシア大陸横断の卒業旅行に行く。で、そもそも「おいおい」と嗜めたくなるくらい世の中を舐めているから、あちこちでひどい目に遭う。このひどい目に遭う記述が結構面白いし心配にもなる。そして、その一方で日本では知ることのできないきれいな景色も見る。

何度も痛い目に遭い美しいものに触れるうちに、視野が狭いくせに謙虚さを知らなかった若者も、次第に世界の大きさに気づき、その一方で自分に自信をなくし、ひいては広告というものに対しても懐疑的になってしまう。

なんとかかんとか帰ってきて無事に就職はしたが、「これでいいのか」という思いが強く、自分ひとりが浮いている。

でも、そこからが彼の才能なのか強運なのか、来た仕事をこなしているとなんだか知らないけれど大きな広告賞を立て続けに獲ってしまう。

Continue reading "『迷子のコピーライター』日下慶太(書評)"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Monday, August 27, 2018

『昭和歌謡職業作曲家ガイド』馬飼野元宏(書評)

【8月27日 記】 この本の存在は知っていたのだが、実際に本屋で手にとって立ち読みしてみると、もはやこれを家に持って帰らないという選択肢はなくなってしまった。

素晴らしい本である。ただし、単に昭和歌謡のヒット曲を思い出して懐かしむというだけの人にはもったいない。この本で取り上げられているのはタイトルにある通り「職業作曲家」なのであるが、この本を書いているのも紛れもなく音楽の「職業分析家」なのである。

つまり、これはある意味、歴史的な実例に基づく音楽理論の教科書でもあるのだ。

Continue reading "『昭和歌謡職業作曲家ガイド』馬飼野元宏(書評)"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Tuesday, August 14, 2018

『国宝』吉田修一(書評)

【8月14日 記】 『パレード』『春、バーニーズで』『悪人』『さよなら渓谷』『横道世之介』『怒り』と、映画化/テレビ化されたものを映像でたくさん見てはきたけれど、実は吉田修一を読むのは初めてである。

読み始めての第一印象は、「あれ、こんな文章を書く人だったの?」という感じ。文字と映像では随分印象が違う。その一方で、「ああ、でも、この人の書くものは次々とドラマ化されるはずだわ」という気もする。

読み始めてすぐに連想したのは五木寛之の『青春の門』だった。僕らの世代にとっては青春のバイブルである。

ともに主人公は少年、舞台は九州である。『青春の門』の信介の父親は『国宝』の喜久雄の父親と違ってヤクザではなく炭鉱夫だ。だが、同じように肝の座った男である。そして、父親亡き後、信介の親代わりになってくれた塙竜五郎がヤクザだった。

幼馴染で主人公を慕う女の子も出てくる。信介にとっての織江が喜久雄にとっての春江だ。

ヤクザ一家の宴席で喜久雄は歌舞伎を舞う。ヤクザの話に似つかわしくない冒頭である。タイトルが「国宝」だし、なるほど、そっちの方に進む話なのか、と察しがつく。

しかし、案の定、そこに対抗する組の襲撃があり、大乱闘の末、父は殺され、組は離散となる。

のちに喜久雄は父の敵討ちを画策するが失敗し、学校にもいられなくなり、父が死んだ宴席にたまたま招かれていた歌舞伎役者に引き取られて大阪に出る。そして、そこの跡取り息子の俊介と仲良くなる。

Continue reading "『国宝』吉田修一(書評)"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Monday, August 13, 2018

『夢印 MUJRUSJI』浦沢直樹(書評)

【8月12日 記】 先日 WOWOW で浦沢直樹のドキュメンタリを観たのが引き金になったのか、本屋でこの本が平積みになっているのを見た瞬間にどうしてもほしくなった。

僕にとっては『20世紀少年』に次ぐ2作目の浦沢直樹(そう、僕は『YAWARA』も『MONSTER』も読んでいない)。

ビッグコミックオリジナルに連載していたらしいが、単行本では1冊である。

さて、読み終えたときのこの徒労感は何だろう?

Continue reading "『夢印 MUJRUSJI』浦沢直樹(書評)"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Thursday, August 09, 2018

『もう「はい」としか言えない』松尾スズキ(書評)

【8月9日 記】 初めて松尾スズキを読んだ。芥川賞の発表前に読み始めたので、ひょっとしたら僕が読んでいる途中で受賞するかもしれないと思ったが、主人公の海馬五郎同様、世の中そんなにうまい具合には進まない。

表題作と、同じく海馬を主人公とする『神様ノイローゼ』の2篇が収められているのだが、僕には後者のほうが面白かった。

表題作においては、劇作家の海馬がある日、妻に浮気がバレてしまう。いや、普通にバレるという状況よりももっと怖く、何故だか妻は知っているのだ。どこまで知っているのかさえ定かに掴めないのだが、とにかくかなりのことを知ってしまっているのだ。

恐ろしい設定だ(笑) よく考えられた設定だ。

ここで取り乱してワーワー泣き叫ぶような妻であれば、言い方は悪いが離婚してそれで終わりになる。しかし、妻は落ち着き払っており、別れるとも言わないし、いくつか条件を提示してきて、その中に2年間毎晩自分とセックスをする、というのがある。

これは実際にはありそうもない設定ではある。もちろん五十男の海馬には辛い仕打ちだが、妻にとっては仕打ちにならないのかどうか、考えるとよく分からなくなる。

が、小説というものは別にありそうもない設定であっても構わない。非常によく考えられた面白い設定だ。なんならこのジャスト・ワン・アイデアで最後まで物語を引っ張っても良かったのだが、著者は突然別の設定を用意する。

Continue reading "『もう「はい」としか言えない』松尾スズキ(書評)"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

Friday, July 06, 2018

『英会話 ウケる例文練習帳』デビッド・セイン、近藤 祐次(書評)

【7月6日 記】 デビッド・セインの本は何冊か読んでおり、この本も安心して手に取った(いや、正確に言うと、この電子書籍も安心してポチッとしたw)。

この本の良いところは、日本人なら誰もこれがイディオムだとは認識していない用例を集めたところである。

無論読めば凡その意味は解るのだけれど、ああ、なるほど、そういうニュアンスなのか、そういう時に使うのか、ひとまとまりの表現として憶えておけば便利なのか、という日常的な表現を集めてあるところである。

例えば、Don't ... me, I'll という表現。

Don't ask me, I'll just get answer wrong.

という英文を見て訳せと言われれば、大体のところは訳せる。しかし、逆に「私に訊かないで、きっと間違うから」という訳文を見せられて、これを英語にしろと言われると、並の日本人なら、

If you ask me, I think I will make a mistake. So don't ask me.

みたいなとても冗漫な表現になりかねない。しかし、「もしもあなたが私に訊いたら」をすっ飛ばすと、こんなにもスピード感のある英語になるのだ。

そういうことを僕らは憶えておきたい。

Continue reading "『英会話 ウケる例文練習帳』デビッド・セイン、近藤 祐次(書評)"

| | Comments (0) | TrackBack (0)

その他のカテゴリー

iPhone | おすすめサイト | ことば | アニメ・コミック | ウェブログ・ココログ関連 | ギャンブル | グルメ・クッキング | ゲーム | サイト更新情報 | スポーツ | ニュース | パソコン・インターネット | ファッション・アクセサリ | プレイログ | ペット | 今日のBGM | 仕事 | 住まい・インテリア | 学問・資格 | 心と体 | 心に移りゆくよしなし事 | 恋愛 | 携帯・デジカメ | 文化・芸術 | 文学・歴史 | 旅行・地域 | 日記・コラム・つぶやき | 映画・テレビ考 | 映画・テレビ評(05) | 映画・テレビ評(06) | 映画・テレビ評(07) | 映画・テレビ評(08) | 映画・テレビ評(09) | 映画・テレビ評(10) | 映画・テレビ評(11) | 映画・テレビ評(12) | 映画・テレビ評(13) | 映画・テレビ評(14) | 映画・テレビ評(15) | 映画・テレビ評(16) | 映画・テレビ評(17) | 映画・テレビ評(18) | 書籍・雑誌 | 書評 | 書評(02) | 書評(03) | 書評(04) | 書評(05) | 書評(06) | 書評(07) | 書評(08) | 書評(09) | 書評(10) | 書評(11) | 書評(12) | 書評(13) | 書評(14) | 書評(15) | 書評(16) | 書評(17) | 書評(18) | 経済・政治・国際 | 美容・コスメ | 育児 | 舞台 | 芸能・アイドル | 趣味 | 関西・関西人 | 音楽