Monday, April 24, 2017

映画『3月のライオン 後編』

【4月23日特記】 映画『3月のライオン 後編』を観てきた。

今回結論を先に書いてしまうと、とても良いのだ。良い読後感が持続するので「良かった」ではなく「良い」と現在形で書いてしまうくらい良いのだ。

単なる趣味とは言え、映画評みたいなものを書いていると、どうしても分析しながら観るような癖がついてしまっているのだが、この映画は分析を許さない。それくらいの没入感があるのである。

それは脚本が良いということ、役者と演出が素晴らしいということに尽きるのではないかな。分析しながら見させてくれないのであまり細部の記憶は残っていないのだが、カメラワークももすごく美しい。

零(神木隆之介)が川本の家を訪ねる時に必ず赤い欄干の橋を渡るのだが、ああいうのが様式美と言うか、なんかひとつのアイコンになっていて、あそこを渡ってるのを見ると条件反射的に心が暖かくなってしまう。

で、今回見ていて思ったこと: 将棋って勝敗が尽きるまでやるゲームじゃないんですよね。一方が「負けた」と思って、それを宣言した所でゲームは終わる。

本当はまだ負けていないのかもしれない。そのまま最善手を続ければ逆転する目が残されているのかもしれない。──現に前編にも後編にもそのことに触れたシーンがあるのだが、それがなんか、決して教訓めいたり教科書臭くなったりせずに人生を語っているのである。

そう言えば、前編ではあれだけ印象の強かった、いろんな棋士たちの「負けました」という台詞が、この後編ではひとつもなかったのではないかな?(1箇所ぐらいはありましたっけ?)

この後編ではそういう諦めない姿が、醜い悪あがきかもしれないけれど、そこを通るしか生きる道がないということが、なんかものすごく素直に胸に染みてきた。

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Sunday, April 23, 2017

映画『夜は短し歩けよ乙女』

【4月23日特記】 映画『夜は短し歩けよ乙女』を観てきた。

まず何が驚いたかって、観客の中に若い女性2人組が結構いること。確かにタイトルでは「乙女」に呼びかけてはいるが、これはあんたたちに向けて書かれた話ではないぞ、と思った。

こんなに女性客が来るのは、ひとえにポップでキッチュな絵柄のせいだと思うのだが、しかし、これはイケてない京大生と、彼らに多少とものシンパシーを感じるイケてない(あるいは、かつてイケてなかった)男たちのためのストーリーだ(そうだよね?)。

デビュー作の『太陽の塔』ではただウダウダ言うだけで何ごともなしえなかった森見登美彦(の書く主人公)が、この小説では明らかに一歩踏み出したぞ、という作品だった。力づけられた同類も多かったのではないかな。

そう思って周囲を見渡すと、確かに劇場にはイケてない京大生の成れの果てみたいな男性客も少なくない(笑)

ただ、僕が知らなかったことがひとつあって、それはこの映画のスタッフ、すなわち、監督の湯浅政明、脚本の上田誠(ヨーロッパ企画)、キャラクター原案の中村佑介らが、少し前に同じ森見の『四畳半神話大系』のテレビアニメ化と手がけていて、それが好評であったらしいということだ。

だから、これはアイデア一発で変換された作品ではなく、結構読み込まれ、練り込まれた企画であるということだ。

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Sunday, April 09, 2017

映画『ブルーハーツが聴こえる』

【4月9日特記】 映画『ブルーハーツが聴こえる』を観てきた。

「ザ・ブルーハーツ30周年企画映画」と銘打ってある。ブルーハーツの6つの曲にインスパイアされて、と言うか、6つの曲と同じタイトルの6つの作品を6人の監督が作ったオムニバス。それぞれの作品にはタイトル曲が使われている。

ちなみに僕はブルーハーツの熱心なファンでも何でもないが、彼らの作品の中に好きな曲はたくさんある。

僕は MAKUAKE でこの映画の存在を知った。2014年にクランクインしたが、何らかの理由で資金難に陥り、クラウドファンディングで残りの資金を調達した。僕もそこに乗っかって、飯塚健監督と井口昇監督の作品を微力ながら支援させてもらった。

サポーターになったくらいだからひと通り説明は読んでいたはずなのだが、例によって他にどんな監督が撮っていたのか、いや、そもそも何作品のオムニバスなのかさえ忘れていたのだが、ともかくその2監督を目当てに観に行った。

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Saturday, April 08, 2017

『クロノス』

【4月7日特記】 WOWOW から録画してあった『クロノス』を観た。ギレルモ・デル・トロ監督の長編デビュー作。

ウチは夫婦揃ってデル・トロ監督のファンである。2006年の『パンズ・ラビリンス』に衝撃を受け、2013年の『パシフィック・リム』、2015年の『クリムゾン・ピーク』と観てきた。

その間に彼が脚本を手掛けた『ホビット』シリーズ3本も見ている。ただ、デル・トロが『ホビット』を書くというのは、喩えて言うならジャン=ピエール・ジュネが『エイリアン4』を撮るような軽い違和感がある。

『パシフィック・リム』のような言わば「半SF」的な作品も面白かったが、この監督はやはり『パンズ・ラビリンス』や『クリムゾン・ピーク』のようなゴシックなホラーものが面白い。そういう意味でこの『クロノス』はそこへ直結する色合いの作品である。

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Friday, March 24, 2017

映画『ひるね姫』

【3月24日特記】 映画『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』を観てきた。

予告編を見ても全く観る気はなかった映画なのだが、たまたま昨日 SENSORS IGNITION で神山健治監督の話を聞いたら俄然観たくなった。

このイベントのたくさんあるトーク・セッションのうちのひとつに登壇していたのが神山監督で、実は僕はその対談相手である、「現代の魔法使い」と言われる落合陽一筑波大助教の話が目当てで聴きに行ったのである。

ところが、その落合助教が実は『攻殻機動隊』以来の神山監督のファンで、封切り間もないのに既に『ひるね姫』を2回観ており、2人の会話が見事に噛み合ってめちゃくちゃ面白かったのである。そして、それを聞いているうちに観ずにいられなくなったのである。

で、観てみて最初に思ったのは、日本のアニメはなんと優秀なのだろう!ということだった。圧倒的な動画の表現力がある。

僕はアニメはまず動画の表現力を評価すべきであると思っていて、そういう意味で去年『君の名は。』よりも『この世界の片隅で』のほうが持てはやされたことに不満を覚えたのである。

動画的表現力という意味では圧倒的に前者が後者を凌駕していると思うのである。

「そんなことを言い出すとたくさんお金をかけられた映画が有利ではないか?」と言う人もいるかもしれない。そうかもしれない。でも、それは背景でしかない。僕らは出来上がった作品の表現に触れるだけのことだ。お金をかけられないのであれば、それなりに別の表現を創り出すしかない。

そういう意味で、この映画の作画、動画の表現力は超一流だった。前半は光と影を強く意識させ、後半は風と火を巻き起こした。

手書きと CG、2D と 3D を見事に組み合わせて、大きな動きで速さを伝え、巧みな構図で高さを強調した。ほんとうに見事な動画だった。

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Monday, March 20, 2017

『3月のライオン 前編』

【3月20日特記】 映画『3月のライオン 前編』を観てきた。

僕は大友啓史監督の NHK時代のドラマをほとんど観たことがなくて、それゆえ近年の『るろうに剣心』3部作と『秘密』のイメージが強かったのだが、この映画はアクションも SF もまるでなくて、なんと地味な将棋がテーマだ。

いや、羽海野チカの原作漫画のほうはどうなのか知らないが、少なくとも映画の中で将棋は中心には据えられていない。僕みたいな小学校卒業以来将棋を指したことがない人間が見ていても全然困らない展開だ。

日本将棋連盟が協力しているくらいだから、恐らく映画の中でプロの将棋としての辻褄は合っているのだろうけれど、将棋好きが「おっ、次の手はそう来たか!」と膝を打つような作りにはなっていない。

盤面が映るのはほとんど短いカットだ。しかも、全体が映るカットは少ない。将棋の駒のアップであることも多い。逆に、使い込まれた盤面のざらついた質感がこんなに伝わってくる画も珍しいと思った。

それよりも棋士の顔をアップで撮る。そして、劇中いろんな棋士によって何度も何度も繰り返される「負けました」の台詞。これがとても印象的だった。将棋は負けを認めた棋士のこのひと言で終わるのである。

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Saturday, March 18, 2017

映画『きょうのキラ君』

【3月18日特記】 映画『きょうのキラ君』を観てきた。館内はほとんどが JC、JK という中におっさんが一人だけ勇気を持って突入したのは、ひとえに飯豊まりえを観たかったからだ。

すでに月9への出演も果たしてブレイクし始めているが、僕が見初めたのは去年の2月の  NHK Eテレ『岩井俊二の MOVIEラボ シーズン2』のアシスタント役。

単にめちゃくちゃ可愛いというだけではなく、スタジオでの受け答えを見て「この娘は来る!」と確信した。この後もすでに主演級の映画が控えている。

で、最初に言っておくと、この映画ではみきもと凜の原作漫画に合わせて前髪を下ろしているが、これは彼女が一番可愛く映える髪型ではない。それはちょっぴり残念だった。

主人公の岡本ニノン(飯豊まりえ)は、過去にいじめにあった経験から人を避け、目が完全に隠れるまで前髪を伸ばし、いつも俯いて猫背で歩いている。部屋ではインコの「先生」に話しかけ、動物園に週イチで通っている。

同級生に話しかけようとしてもろくに文章にならない。後にちゃんと話せるようになった後の設定では常に「ですます」調。──つまりちょっと変な子なわけだ。クラスでは当然浮いている。

そのニノがクラスメイトで、時々自分のことを構ってくれたり庇ってくれたりするイケメンの吉良くん(中川大志)に恋をする。ところが、キラくんは心臓の病気で余命1年である。

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Sunday, March 12, 2017

映画『一週間フレンズ。』

【3月12日特記】 映画『一週間フレンズ。』を観てきた。

『ラ・ラ・ランド』を先延ばしにして、とりあえず『きょうのキラ君』の飯豊まりえを見に行こうと思ったのに、ネットでチケット取る際に勘違いして第3候補だったこの映画を予約してしまった。年は取りたくないものだ(笑)

日曜日の晩に、前の週にあったことのうち友だち関係のことだけをすっかり忘れてしまい、月曜日の朝にはクラスメイトの名前も分からなくなる記憶障害──という、いくらなんでもそんな病気はないだろうという設定である。

しかも、そんな病気を抱えながら、それをひた隠しにして高校に通っている。本人だけが気づいているならともかく、両親も知っていて医師の診断も受けているのにそれはないだろう──という、あまりにドラマ作りのためのご都合主義である。

さすがにちょっと茶番だなと思って見始めたのだが、しかし、見ているうちに意外に悪くないな、と思えてきた。

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Sunday, March 05, 2017

映画『ハルチカ』

【3月5日特記】 映画『ハルチカ』を観てきた。今年2本目の市井昌秀監督作品。原作は「人気青春ノベル」だそうな。タイトルのハルチカは主人公の名前ーー春太と千夏。

高校に入ったら吹奏楽をやろうと思っていた千夏(橋本環奈)。勇んで入部申し込みに行ったら、吹奏楽部は既に廃部が決まっていた。

そこから千夏は、ヘタレだけれどホルンが吹ける幼馴染の春太(佐藤勝利)を巻き込んで、吹奏楽部継続の条件である最小限9人の部員集めにかかる。

ありがちな話である。クラスには超高校級の演奏者もいる。力になってくれる先生は指揮者のコンテストで2位になったことがある。

ますますありがちな設定だ。底が浅く、先が見えてしまう。

9人のエピソードを描くにはそれなりの時間がかかるが、ドラマは9人集めて終わりではなく、吹奏楽のコンクールまでたどり着かなければならないので、時間をかけている余裕がない。

だから、必然的に描写が薄くなる。展開がたどたどしく見える。この辺が一番残念なところだ。

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Friday, February 24, 2017

映画『愚行録』

【2月24日特記】 映画『愚行録』を観てきた。既に観た何人かから激賞と酷評の両方を見聞きした。そういう映画を観るのはワクワクする。

最初に書いておくと、(あまりあからさまにする気はないのだが)この映画を論ずるにはどうしてもある程度結末に触れる必要がある。全くの先入観なくこれから観に行きたいという方は読まないでほしい。

全般に画作りの巧みな映画だと思った。雨の日のバスの窓外から乗客を映し、前方から後方にパンして行くと主人公の田中武志(妻夫木聡)が座っているという冒頭の撮り方からして面白い。

そして、ミステリものにおける記者=社会正義の担い手、であり、往々にして自分の一方的すぎた正義感に気づいて主人公が落ち込む、という図式から外れて、週刊誌記者である田中がバスの中で転んで足を引きずってみせるという最初の展開が秀逸である。

これからこの物語はどちらに転がって行くのだろうとハラハラさせる。そして、5拍子の BGM が不安感を高める。こういう変拍子の使い方は巧いなと思った。

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