Tuesday, February 24, 2009

『おくりびと』のアカデミー賞受賞の報に接して

【2月24日特記】 このブログをよく読んでくれている知人から、「『おくりびと』のアカデミー外国語映画賞受賞に関して何か書いているかと思ったのに・・・」と言われた。

彼女が期待したのはどうやら少し悪意を含んだ、あるいは毒のある、あるいは棘のある文章だったようだ。

しかし、僕は決してあの映画に悪意など持っていない。ただ「おめでとう!良かったね」と祝福するのみである。

確かに、

『おくりびと』が1位に来るとは思いませんでした。確実にベストテンには入るだろうとは思ってましたけど・・・。キネ旬も随分ウェットになったもんだ、というのが正直な思い。

とか、

表現力という点では『歩いても 歩いても』と『ぐるりのこと。』が双璧だと思ったのだが・・・。まことに人の感受性は多様である。

とか書いているが、一方で、

(『おくりびと』を含む5作品がベストテンに選ばれるであろうことについては)まあ、皆さんあまり異論がないところではないかなと思うのだが・・・。

とも書いているし、もうこれ以上いちいち引かないが、この映画を観たときの記事でもかなり褒めているのも事実である。

単に相対的には『歩いても 歩いても』や『ぐるりのこと。』のほうが上だと感じたにすぎない。

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Sunday, February 08, 2009

「キネマ旬報」2月下旬号(2)

【2月8日追記】 一昨年からキネ旬の1-10位の得点を分解してみるという試みをやっている。何人の審査員が平均何点ずつを投じてこの得点が出来上がったのかという分析である。

ご存じでない方のために書いておくと、キネ旬の審査は各審査員(2008年度日本映画の場合は62人──対前年比6名増)が1位と思う作品には10点、2位には9点という具合に総持ち点55点を投じて行く形式である。

統計学的にちゃんと分析するとなると分散をはじいたりするんだろうけど、とりあえず簡便で見た目も解りやすい方法として「人数×平均点」を出してみた。1点以上をつけた審査員の数×その平均点である。

これをこのように分解することによって、多くの人に受けたのか一部の人に高く評価されたのか、その映画によって微妙なばらつきが見えて来る。

今年初めて気がついたのだが、日本インターネット映画大賞でも同じようなことをやっていて、ここでは「思い入れ度ランキング」という名前がついている。この企画、いつからやってたんだろう? まさか僕のこの記事を読んで真似したわけではないだろうな(笑)

さて、計算結果は、

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Saturday, February 07, 2009

「キネマ旬報」2月下旬号(1)

【2月7日特記】 「キネマ旬報」2月下旬決算特別号が発売になりました。さて、今年も去年と同じ形式で第11位以下の作品を総点検してみましょう。僕自身の2つの記事(12月24日付け1月8日付け)の続編という形になります。

第11位が『百万円と苦虫女』──予想通りの高評価。もっとも、僕自身は12月24日の記事にこう書いています。

あとは『百万円と苦虫女』『グーグーだって猫である』辺りがどうなるか。僕としては少し物足りなかったので外したのだが・・・。

先に書いておくと、『グーグーだって猫である』は第29位でした。

第12位には『人のセックスを笑うな』。これについては僕は1月8日の記事でこう書いています。

(ベストテンから)漏れたのは『人のセックスを笑うな』。んー、なんでこれ入ってないのかな?

ま、12位なら順当な範囲内と言うべきなのでしょう。ところが、これ以降、僕が選んだ映画が全然出てこないのです。

第13位『石内尋常高等小学校 花は散れども』、同じく第13位『崖の上のポニョ』、もうひとつ第13位『世界で一番美しい夜』。前2者は良いとして、この3つ目はどんな映画でしたっけ? 全く記憶にありません。

続いて第16位『明日への遺言』、第17位『その日のまえに』、第18位『その木戸を通って』(これは確か市川崑監督でしたよね)と、僕が見ていない映画が6本も続いてしまってます。手も足も出ません。

で、第19位に漸く『休暇』。ふむ、随分上位に入ってきましたね。映画の出来不出来よりもテーマのインパクトが強すぎる気がして僕は外したのですが・・・。

その結果、前の記事との関係で総括すると、僕が「キネマ旬報ベストテン20位以内に入ってほしい」として選んだ10本のうち10位以内には5本入ったんですが、11-20位が1本だけだったために、最終的にキネ旬の20位以内には合計6本。

ひょっとしたら的中率が少し上昇するのかもしれんと思っている。

なんて書きましたけど、結局のところ前年比±0でした。

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Thursday, January 08, 2009

発表:2008キネマ旬報日本映画ベストテン

【1月8日特記】 発表されましたね、2008キネマ旬報ベストテン。曜日の関係で今年は少し早かったみたいです。

それでは前回(2007年)・前々回(2006年)・前々々回(2005年)同様、僕の記事(12/24の『回顧:2008年鑑賞邦画』)との比較をしてみたいと思います。僕が選んだのは、前回、前々回に引き続いて「キネマ旬報ベストテン20位以内に入ってほしい10本」です。

今回は「ひょっとしたら的中率が少し上昇するのかもしれんと思っている」と書いたのですが、とりあえず10位までが先に発表された段階では例年と同じような的中率でした。さて、キネ旬が選んだ10本は、

  1. おくりびと
  2. ぐるりのこと。
  3. 実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)
  4. トウキョウソナタ
  5. 歩いても 歩いても
  6. 闇の子供たち
  7. 母べえ
  8. クライマーズ・ハイ
  9. 接吻
  10. アフタースクール

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Sunday, December 28, 2008

TBS『流星の絆』(最終回まで見終わって)

【12月28日追記】 録画しておいたTBS『流星の絆』の最終回を漸く観ました。いやあ、最後に来て全くの茶番になってしまいましたね(T_T)

僕は全回を見通して、総体としてはこのドラマを変わらず高く評価しています(どこをどう評価しているかについては、ドラマが始まってからまだ日が浅かった10月27日に書いた記事に詳細があります)。でも、最後の収束の仕方はやっぱりちょっと残念。

ドラマでも小説でもそうなんですけど、こういう推理もの(という雑駁なまとめ方をしてしまって申し訳ないですが)って、それまで丁寧にしっかりと人物を描いて来ながら、最後になると突然、人物を描くことより辻褄を合せることのほうに重点が置かれてしまい、ドラマがドラマでなくなってしまうところがしんどいんですよね。

しかも、当たり前かもしれませんが、真犯人は登場人物の中にいなければならないのです。

実際の犯罪捜査の現場では今まで全くノーマークだった人間が真犯人だったなんてことはザラにあるはずですが、だからと言って小説の終盤やドラマの最終回で「実は真犯人は今まで全く登場していない人物でした」と言う訳には行きません。

ところが、今回の『流星の絆』でもそうなんですが、(来年4月発売のDVD で初めて見る人もいるだろうから名前は伏せますが)真犯人だった人はとてもじゃないけど、天地がひっくり返ってもそんな行動に出る人には見えないんですよね。

この辺をすっきりさせるためには、凡そ殺人をしそうもなく描かれていた人が実は殺人犯だったとするのではなく、最初からその人物を描くときに「ひょっとしたら危ない面を持っている人かも」という含みを持たせておくのが一番なんですが、これをやりすぎると途中で真犯人が判ってしまい、命取りになってしまいます。

だから、何があっても人殺しなんかしそうもない人が実は・・・、という形にならざるを得ないのですが、そこに僕は蟠りを覚えるのです。

多くの作者はそんなことよりも、犯罪の動機は何で、犯行の手口はどうで、どうしてそれが今まで露見せずに済んだのか、といったことの"からくり"を成立させるのに手一杯のまま、作品を発表してしまうのです。

本当は、人物を点で捉えるのではなく、こういう人物がこういう事情でこんな風に変わって来たというように線を描き、この人物が社会の中ではこういう位置や立場にあるという風に面の中の点として捉えることが必要となってくるのです。

そういう風にすれば、人物を描く上で断裂が生まれずに済むのですが、一方で謎解きを考えながら他方でそんなことを巧くやりおおせるためには松本清張並みのの能力が必要となってきます。勢い、そういう人はそんなにいないから、必然そういう作品はあまりない、ということなんでしょうか?

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Thursday, December 25, 2008

投票:日本インターネット映画大賞

【12月25日特記】 今年もまた依頼のコメントがついたので「日本インターネット映画大賞」日本映画部門に投票してみることにした。

去年も書いたことだが、僕の感性とは多少趣の異なる賞である。そういう賞にこういう形で働きかけるのも、個人と社会という関係の中で捉えると、非常に良いことだと思う。

もちろん、僕の感性と大きくずれた賞であれば働きかけようとは思わない。適度にずれているということが、ひとつの「出会い」であり「縁」なのだと思う。

さて、投票ルールは去年から変わっていないようだ。

[作品賞投票ルール(抄)]

 ・選出作品は5本以上10本まで
 ・持ち点合計は30点
 ・1作品に投票できる最大は10点まで

一昨年は限度一杯の10作品を選んでしまってちょっと散漫だったという反省から、昨年は5作品を選んで10点、9点、8点、2点、1点という採点をした。

今年は、昨日の記事に書いたように各作品に差がつきにくいので、こんな風にしてみた。

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Wednesday, December 24, 2008

回顧:2008年鑑賞邦画

【12月24日特記】 2008年は邦画を48本観た。年間100本も200本も観る人からすれば、「なんだたったそれだけ?」と言われるだろうが、これでも僕の年間新記録なのである。

で、新記録で調子に乗って、その48本から何本か選んでみることにした。

──と、昨年12月24日に書いた記事及び一昨年12月23日に書いた記事と数字以外は全く同じ書き出しで始めてみた(ちなみにこれは一昨年1月4日に書いたその前の年の邦画総括記事ともほとんど同じ書き出しである)。

さて、今年も去年に引き続いて「『キネマ旬報ベストテン』の20位以内に入ってほしいもの」というタイトルで選んでみる。他の賞やランキングではなくあくまでキネ旬であること、それから「20位以内に入るだろう」ではなくて「入ってほしい」であること──その辺りのニュアンスを汲み取って読んでほしい。

今年はあまり突出したと言うか、尖がったと言うか、破格の迫力をもった驚天動地の作品がなかったような気がする。

例えば2005年の『いつか読書する日』、2006年の『ゆれる』、2007年の『サッド ヴァケイション』みたいな、「1位に選ぶかどうかは趣味の分かれるところだろうけど、まともな評論家だったら10本のうちの1本には間違いなく選ぶだろうよ」と確信できる、突き抜けた作品が今年は見当たらないような気がするのである。

そして、2006年の『フラガール』『博士の愛した数式』、2007年の『キサラギ』みたいな「世間が何と言おうと俺はこの映画は選ばないぞ!」という作品もない代わりに、2005年の『トニー滝谷』、2006年の『三年身籠る』『好きだ、』、2007年の『幸福な食卓』みたいな「世間が何と言おうと俺はこの映画を選ぶぞ!」という作品もない気がする。

毎年僕がこの記事に書いている予想・期待の的中率は、まあ、そこそこという感じなのだけど、今年はどうなんだろう? ひょっとしたら的中率が少し上昇するのかもしれんと思っている。

などと言いながら、いざ10本選ぶとなるとえらく迷ってしまった。差がつきにくいのである。蓋を開けたら(キネ旬とは)全然違ってたりしてね(笑) ま、そういうのも楽しみだ。

さて、前置きばかり書いていないで、僕が選んだ10本を披露しよう。

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Tuesday, December 23, 2008

映画『K-20 怪人二十面相・伝』2

【12月23日追記】 書き落としたことをいくつか書き足しておく。

パンフを読むと、佐藤嗣麻子監督が如何に肩から力を抜いて楽しんで撮っていたかということが伝わってくる。

「(怪人二十面相の)"縄梯子と高笑い"はやっておかなければいけないと思って入れました」などという証言も映画を見た後から読むと非常におかしい。何故って、このシーンでは縄梯子にぶら下がった偽二十面相・平吉(金城武)が「ハイ、笑って」と促されて高笑いするのである。

こういうユーモアのセンスって良いなあと思う。平吉が鳩を愛するという設定も、ニコラス・テスラ博士+秘密結社鷹の爪団の吉田君の合わせ技とは、なんという感覚の持ち主かと笑えてくる。

そんな感じが画面の裏から匂い立ってくる感じの映画なのである。

そして、もう1点。

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Sunday, December 21, 2008

映画『K-20 怪人二十面相・伝』1

【12月21日特記】 映画『K-20 怪人二十面相・伝』を観てきた。

映画を観に行く前に監督の佐藤嗣麻子の名前を検索したら脚本家としての記事しか目に入らなかったので、予告編を見る限り、脚本家出身の、しかも女性監督のデビュー作としてはおよそ「らしくない」映画だなあと思ったのだが、冒頭で ROBOT の企画・制作と知ってなるほどと思った。脚本・VFX協力で山崎貴の名前もクレジットされている。

パンフを読んで、佐藤嗣麻子はこれが監督デビューではなく、また当初から監督と脚本を兼ねて来た人だということも判った。特撮に志向性があるのかどうかは知らないが、いずれにしても如何にも ROBOT らしい抜擢である。ちなみに VFX を担当したのは白組である。

ところで僕は別に女性監督に惹かれてこの映画を見に行った訳ではない。金城武や松たか子のファンでもない。僕が見ようと思ったのは北村想の作品だったからだ。

1980年代に『寿歌』や『寿歌・Ⅱ』を加藤健一事務所をはじめいろんな劇団で観た。この『怪人二十面相・伝』は読んでいないのだが、北村想が怪人二十面相を書いたらきっととても深いドラマができるのではないだろうかという予感があって見に行ったのだが、その予感は実際見事に的中した。

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Saturday, December 06, 2008

映画『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』

【12月6日特記】 映画『ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト』を観てきた。おっさん独り、という客が多い。たまに爺さん独り、も。

冒頭から監督のマーティン・スコセッシが映っていて、これは単にストーンズのライブのドキュメンタリ映画なのではなく、ストーンズをフィルムに収めようとするスコセッシとストーンズのせめぎ合いの記録にもなっている2重構造の映画だと知る。

模型を使った舞台セットのプランの説明を受けてミック・ジャガーが不機嫌そうに「全然分からない」と言う。これは自分の希望したセットではなく、マーティン・スコセッシが希望した撮影用のセットではないかと苛立つ。

一方、マーティンのほうは「いつまでたってもセットリストを貰えない」と苛立つ。曲名が判らないとカット割りを決められないのである。

こうした緊張感を孕んだオープニングであったが、その後は概ね2006/10/29と11/1にNYのビーコン・シアターで行われたライブの映像が続く。時々挿入されるのは舞台裏のスコセッシやスタッフの姿ではなく、過去のストーンズのインタビュー映像である。

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