映画『父と僕の終わらない歌』
【5月23日 記】 映画『父と僕の終わらない歌』を観てきた。
予告編を観てそれほどそそられたわけではないのだが、まあ、『ちはやふる』3部作や『線は、僕を描く』を撮った小泉徳宏監督ならそんなに悪くはなかろうと踏んで観に行った。
2016年に 80歳で CDデビューを果たしたアメリカ人のアルツハイマー患者の実話に基づく作品なのだそうだ。
冒頭、走るアメ車を俯瞰で追ったシーンに、スローなロッカバラードのアレンジで Smile を歌う声。少し鼻にかかって全体に弱いかと思うと突然張りを効かせる独特の声 ── 1小節聞いただけで寺尾聰が歌っていると分かる。
ちょっと本題から外れたことを先に書いてしまうと、後に出てくる松坂桃李が電話を受けるシーンでは、相手の顔は映らないが声を聞いただけでこれはディーン・フジオカだと分かった。主演の寺尾聰はともかく、僕はディーン・フジオカが出演していることも知らなかったのに一瞬で認識したのである。
声というのは結構記憶に残るものだなあと、我ながら感心した。
さて、幼馴染の聡美(佐藤栞里)の結婚披露宴に出席するために吉祥寺から横須賀に帰省した間宮雄太(松坂桃李)を、駅に迎えに来るはずの父親・哲太(寺尾聰)が1時間も遅れたために、雄太が車の中でカリカリしているというのが最初の台詞のあるシーンである。
哲太はあまりくよくよするタイプではなさそうで、「すまん、道に迷ってな」などと言うが、雄太は「横須賀で生まれて育ったのに、なんで迷うんだよ」と怒る。この時点で雄太にはまだ哲太が初期のアルツハイマーを患っていることを知らないが、観客に対してはこのシーンだけで充分に暗示が効いている。
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