Wednesday, September 20, 2023

詐欺メール対策再確認

【9月20日 記】  最近詐欺メールが増えている。前から多かったが、さらに増えている感じ。

大体が銀行とかクレジットカードとかで、「不正使用があったのであなたのアカウントは一旦停止した」などという虚偽の報告である。「このまま放っておくと使用不能になる」などと脅すのもある。そして、このリンク・ボタンから入って会員情報やパスワードを再入力せよなどと畳み掛けてくる。

昔の詐欺メールは差出人のアドレスを見たら一目でインチキだと分かったり、日本語が明らかにおかしかったりして、すぐに引っ掛けだと見破ることができるものも多かったが、最近では騙す方も技量が上がって、うっかり騙されるところまでは行かなくても、「よくできてるなあ」と感心してしまうことがある。

しかし、確かに最近では通常とは異なる使用があると通知してくるサービスやアプリも少なくないが、そういうところから来る本物のメールには「このリンクから」という指定はまずない。大抵は「このログインが本人によるものなら何もしなくて構わない。身に覚えがないのならすぐにパスワードを変更してください」といった文言になっている。

通常とは異なる形でお金が引き出されたり支払いがなされたからといって、銀行やカード会社が即時に、かつ勝手にアカウントを一時停止したりはしないのだ。

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Tuesday, September 19, 2023

映画『ミステリと言う勿れ』

【9月19日 記】  映画『ミステリと言う勿れ』を観てきた。大ヒット漫画の大ヒットテレビドラマ化の続編である。

僕は例によって原作は知らないが、テレビドラマは毎週毎週かなり楽しみにしながら全回もれなく観た。今回は原作でも人気の高かった「広島編」の実写化なのだそうだ。

冒頭でいきなり犬堂我路(永山瑛太)が出てくる。今回のお話に我路や大隣警察署の3刑事(筒井道隆、尾上松也、伊藤沙莉)を絡ませる必要はどこにもなかったと思うが、言うまでもなく、これはテレビの視聴者に対するファン・サービスである。

このドラマは天パの大学生・久能整(菅田将暉)のキャラの面白さに尽きる。これは菅田将暉の当たり芸と言って良いのではないか。

とにかくおしゃべりで、やや発達障害系で他人とのつきあい方には少し難があるが、基本的にお人好しの善人であり、いつも事件に巻き込まれる。しかし、その人並み外れた観察力と記憶力、参照力、そして明晰な論理で複雑な犯罪の表皮を1枚ずつ剥がして行く。

狩集汐路(原菜乃華)に呼び止められて協力を要請されたときの整の第一声、「話が読めなさすぎるにもほどがある」という台詞に早くも声を上げて笑ってしまった。

自分が理屈で勝てない相手に出会うとすぐに「屁理屈を言うな」と攻撃する人がいるが、僕はそれこそが屁理屈だと思っている。僕は整のような変人が大好きだし、彼の筋道の通った理屈が大好きだ。

このドラマの最大のセールス・ポイントはそんな整の個性であり、犯人探し自体にはそんなに重みはない。僕は昔から犯人探しにはほとんど興味がなくて、犯人が誰かなんていつも全く考えずに観ているが、今回の映画もそういうところで頑張って観客を欺こうなどという気はないみたいで、最初から一番怪しそうだった奴が真犯人であった。

ただし、何故犯行に及んだかという背景については、いくらなんでもこんなややこしい話を想像できる人はいなかっただろう。僕にしてみると、そこはちょっとこねくり回し過ぎで、そういう意味で、ネタ的にはテレビのシリーズのほうが好きだった。

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Sunday, September 17, 2023

映画『アリスとテレスのまぼろし工場』

【9月17日 記】  映画『アリスとテレスのまぼろし工場』を観てきた。岡田麿里監督・脚本というだけで、中身を何も知らずに見に行ったのだが、いやあ、驚いた。すっごいわ。まるで脳みそをかき混ぜられたような気分になった。

含蓄が深いとも言えるし、多様な解釈を許すとも言える。でも、何か言えるか? いや、しばらくは呆然として何も言えないんじゃないか? みんなは何を感じたんだろう?

アニメ制作は今や超一流と言って良い MAPPA だが、エンドロールを見ていると Production I.G やサンライズなど、多くの会社から多くのスタッフが参加していたのが分かった。

最初に断っておくが(笑)、主人公はアリスとテレスではない(そういう名前の人物は出てこない)。中学2年生の菊入正宗と同級生の佐上睦実である。

製鉄所が爆発し、やがて空がひび割れて、しばらくすると何筋もの煙が現れてそれが龍のように動き回って空の無数の裂け目を修復し、世界は元に戻ったように思われたが、それ以降街の外に出る道は全て塞がれ、時も止まってしまった。

そして、その後も何かをきっかけとして空は時々裂けた。

季節は永遠に冬のままであり、人間は年も取らず、何年経っても中学生は中学生のまま、妊婦は妊婦のままである。しかし、住民たちは「このまま何も変えなければいつかは元に戻れる」と信じており、何も変えない生き方を推奨する。

しばらくして正宗は睦実に廃墟となった製鉄所の第五高炉に連れて行かれる。そこには言葉もろくに話せず感情剥き出しで凡そ知性を感じさせない少女がいて、睦実は父親の命令でその少女の面倒を見させられていた。

なんだか哲学的で、かつ現実離れした設定だから、最初のほうはいろいろと思念は動くのだがよく理解できないまま進んで行く感じだ。

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Saturday, September 16, 2023

ヤクルトY1000 と藤井七冠

【9月16日 記】  飲んでいると調子が良いような気がするので、ここのところ毎日欠かさずヤクルトY1000 を飲んでいる。

なにしろ 1ml あたり 乳酸菌シロタ菌が 10億個含まれているらしい。ということは、110ml のヤクルトY1000 の場合は 1100億個、100ml のヤクルト1000 には1000億個入っているということだ。

ところが、この飲料、どこの店でも品薄で、あるスーパーには「1家族2本まで」という制限がついていたりする。

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Thursday, September 14, 2023

Netflix『ONE PIECE』

914日 記】  原作漫画もアニメもほとんど読んだことも観たこともないというのに、Netflix で『ONE PIECE』を見始めている。

原作は僕が中年の域に達してから連載が始まったのだから仕方がないと言えば仕方がない。初めてタイトルを耳にしたときは、きっと主人公の少女がファッション・デザイナーか何かになる少女漫画だろうと思ったのだが、しかし、『週刊少年ジャンプ』連載だと言うからおかしいなと訝った記憶がある。

もちろん今となっては海賊の話だという程度のことは知っていたが、しかし、そんな風に出遅れて、すでにどんどん話が進んでコミックスも何十巻と発売された後からは却々追いつこうという気にはならないものである。

そういう状況で、今回の実写化である。ま、出遅れた流行を後から追いかけて、ダイジェスト版を見るようなつもりで見始めた。

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Tuesday, September 12, 2023

『夜果つるところ』恩田陸(書評)

【9月12日 記】 恩田陸の『鈍色幻視行』を読んだ人なら、そして恩田陸の 『鈍色幻視行』に魅了された人なら、その小説の中に出てくる飯合梓という作家の『夜果つるところ』を読んでみたくなったはずだ。

僕もこの、完成前に死者が出て三たび映像化が頓挫した“呪われた”小説が読めるもんなら読みたいものだと思ったが、まさか恩田陸が本当に書いていたとは思いもよらなかった。

冒頭は(当たり前だが)『鈍色幻視行』に引用されているのと同じ文章である。あれだけだと時代背景も場所もよく分からなかったのだが、昭和初期の、東京にほど近いどこかの山中の、遊郭めいた館だと判る。

遊郭めいたと書いたのは、必ずしも男が女を抱きにだけくるところではなく、レストランがあり、ラウンジがあり、茶室があり、中庭があり、カーキ色の軍服に身を包んだ軍人たちが議論をしたり、謀議を凝らしたり、あるいは舞を舞ったりする者もいる不思議な場所である。

で、読んでいると恩田陸はそれほど飯合梓に仮装しようとはしていなくて、これは今まで何度か読んだことのある恩田陸のパタンのひとつであるような気がする。

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Monday, September 11, 2023

二流の小説家と一流の脚本家の組合せ

【9月11日 記】  実名を書いてファンに襲われるのも嫌だから書かないが、ミステリ系の作家の中には、奇想天外な設定やストーリーを考えて読者の目を欺くことに汲々として、肝心の人物がさっぱり描けていない人が時々いる(そんな作品がどうしてベストセラーになったりするのか不思議で仕方がないが)。

しかし、そういう作品を腕の立つ脚本家が脚色すると、びっくりするくらい素晴らしいドラマになることがよくある。原作では描けていなかった人物に、しっかりとした骨組みができ、その骨組みに対応した肉付けができているのである。

原作が書けていないほうが脚本家の自由度が上がり、手腕を発揮しやすいからなのかなと思う。

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Saturday, September 09, 2023

映画『ほつれる』

【9月9日 記】  映画『ほつれる』を観てきた。

僕は劇作家から映画監督に越境してきた人があまり好きになれない。

例えば三谷幸喜は脚本家としては素晴らしいと思うが映画監督としては全く評価していない。映画のカメラというのは演劇とは違って、客席に座っている客の視点では見えない(あるいは観客が他に目を奪われて見ていない)ものを見せるものだと僕は常々思っているが、三谷監督の映画ではどこまで行ってもカメラワークが観客の目なのである。

最近の彼の作品については全部パスしているのでどうか知らないが、最初の何作かに嫌気が差して観るのをやめてしまった。脚本だけ書いていれば良いのにと思う。

それに引き換え、CM界から転じてきた監督の作品は違和感なく観られる。やっぱり元から映像を扱ってきたからだろうか。映画と CM ではマラソンと 100m走ぐらいの違いはあるのだけれど。

三浦大輔についてはカメラワークがどうこうではなく、そのセンスに反感を覚える。特にセックスを取り上げたときの描き方が心の底からげっそりする。結局良かったのは初めて観た『ボーイズ・オン・ザ・ラン』だけだった。

そういうわけで、この映画についても半ば不吉な予感を覚えながら、でも、なんか惹かれるところがあって見に行った。加藤拓也監督。

さすがに岸田戯曲賞受賞者だけあって、台詞はめちゃくちゃ切れる。沈んだトーンであっても血が出そうなほどの言葉のやりとりである。

ぎこちない、バツの悪い、横で聞いていても息が詰まるような痛々しい会話が淡々と綴られる。傍で見ていていたたまれなくなる。「もう、やめたら? 別れたほうがいいよ」と横から言いたくなるような人間関係が描かれる。

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Thursday, September 07, 2023

coco サービス終了

【9月7日 記】 coco というページがある。twitter でつぶやいた映画のレビューや感想を拾ってまとめてくれるサイトだ。

一応まだ見られるので、僕がやっていたマイページの URL を書いておく(そのうちに見られなくなると思うが):

https://coco.to/author/honane

多分イーロン・マスクが twitter の API の無料提供を突然やめてしまったことが原因なのだろうが、このサイトは4月以降全く更新しなくなった。で、その後はほとんどこのサイトを見ていなかったのだが、今日【cocoをご利用のみなさまへ】という告知が掲載されていることに初めて気づいた。

2023年6月30日(金)をもちまして「coco」のレビュー投稿サービスを終了いたしました。サービス終了に伴い、お客様が投稿されたレビューデータを一括でダウンロードできる機能を提供させていただきます。ダウンロード可能項目は作品名、レビューデータとなります。

ああ、正式に終わってたのね。淋しい限りである。

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Tuesday, September 05, 2023

映画『スイート・マイホーム』

【9月5日 記】 映画『スイート・マイホーム』を観てきた。マイ・スイート・ホームというのは定型句だが、スイート・マイホームというのはどうも語順がおかしい。しかし、原作の小説がそういうタイトルらしいから仕方がない。

僕は斎藤工(映画監督のときは「齊藤工」)のことを長らく単に映画オタクの青年なんだろうと思っていたのだが、2017年に彼が監督をした『blank13』が予想外によくできていて、面白くて、これは端倪すべからざる才能だと思った。

その後も何作か監督を務めたようだが、単独演出の映画としては、この映画が2本目ではないだろうか。そもそも監督「齊藤工」に対する興味だけで観に来たので中身は全く知らなかったのだが、これはサスペンス・ホラーであった。

ホラーと言っても映画が始まった途端にいきなり誰かが襲われて殺されるような作品ではない。むしろ中盤までは思わせぶりなシーンばかりが続く。

一口にホラーと言っても、霊とか呪いとかいう類なのか、あるいはサイコパスによる犯行なのか、それとも悪意のある人間がそういう風に装っただけなのか、その辺が分からないまま観ていると結構怖い。

途中で何人か死ぬのは確かだが、その人が襲われたり、殺されたり、自殺に見せかけられたりするシーンは一切出てこない。そういうことからも判るように、むやみに怖がらせようというカメラワークではないのである。

なのになんか怖い、なんでビミョ~に怖いのか、と不思議だったのだが、エンドロールを見て納得した。撮影監督は芦澤明子だったのだ。この人のカメラには黒沢清と気脈を通じる怖さがある。

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Saturday, September 02, 2023

映画『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』

【9月2日 記】 映画『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』を観てきた。

最近では酒井麻衣監督は「テレビドラマ『美しい彼』の」という風に紹介されることが多いようだ。実際、あのドラマは2年連続でギャラクシー賞のマイベストTV賞を受賞したわけだし、同じ酒井監督で映画化もされている。

だが、僕が彼女を見初めたのはそのひとつ前の MBSドラマ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』だった。ものすごく被写界深度を浅くした画作りがとても印象的だった。テレビドラマであそこまでやる演出家がいるのかと驚いて名前をチェックした。

被写界深度だけではなく、光と影の使い方も非常に印象的で、リリカルな水面のきらめきとか、メリハリの効いたシルエットとか、それらは決して写実的ではないかもしれないが、しかし、構図も含めて、その絵画的な美しい画作りに僕は魅せられてしまったのである。

それで一も二もなく劇場版の『美しい彼』を観て、次がこの映画ということになった。どんな設定でどんなストーリーなのかなんて全く知らないまま観に行った。原作はベストセラー小説らしい。

冒頭、青空が映った鏡。骨董品屋の店頭か何かかと思ったが、そうではなくて高校だった。その前を深川青磁(白岩瑠姫)が横切る(この時点ではまだ顔は映らない)。そして、角を曲がると渡り廊下。その少し奥のほうに同級生の丹羽茜(久間田琳加)がいる。マスクをして、空から落ちてくる桜の花びらを追っている。

青磁が「茜」と名前を呼び捨てにして近寄る。茜は「同じクラスになった深川青磁くんだよね」みたいな答え方をする。すると青磁はいきなり「お前が大嫌いだ」と言う。

台詞の面でも場面としても現実感がないシーンだと思ったら、茜が目を醒ます。ああ、夢だったのかと思う。で、現実に戻ると、茜が寝ていた部屋のものすごいキッチュさに目が奪われる。美術さん、頑張ったな、という感じ。

ところで、この冒頭のシーンは夢ではなく現実にあったことだと後に分かる。

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Thursday, August 31, 2023

『惑う星』リチャード・パワーズ(書評)

【8月30日 記】 心が倦んでくると重厚長大な小説が読みたくなる。そんなときに僕が選ぶのが例えばリチャード・パワーズだ。

憶えている人はいないと思うが、上の文章は僕がドン・デリーロの『ホワイトノイズ』の書評を書いたときと全く同じ出だしだ(作家名だけが変わっている)。というのも、実は前回“心が倦んできて重厚長大な小説が読みたくなったとき”に、この2冊をほぼ同時に買ったのである。

しかし、さすがにその2冊を連続で読むほどの気概はなく、間に何冊か別の本を挟んだために約2ヶ月のインターバルができてしまった。

さて、この本もこれまでのパワーズの作品群同様に頭がクラクラしてくるような小説である。いつも通り難解な科学的知識が小説の中に編み込まれていて、やっぱり「べらぼうな」という形容を持ってきたくなる。

ただ、べらぼうな小説であるには違いないのだが、訳者の木原善彦もあとがきに書いているように、

技巧をこらした前作(『オーバーストーリー』)とは対照的に極めてシンプルに書かれた

作品である。何しろ登場人物が少ないので、まずそこのところで読んでいて混乱することがない。

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