Friday, August 14, 2020

『熱源』川越宗一(書評)

【8月14日 記】 買ったまま長いこと放ってあった直木賞受賞作。

読み始めてすぐに思ったのは、この人はアイヌの末裔なんだろうか?ということ。もし僕が作家なら、そうでなければ怖くて書けない気がする。アイヌでない人がアイヌの物語を綴ると、間違いなくアイヌやその末裔から「それは違う」とのクレームが来るだろうから。

しかし、名前を見る限りそれっぽくない。もし、そうではないとしたら、 そこに至るまでには、興味の強さもさることながら、書くための調べ物も半端ではなかっただろう。何が彼をそこまで至らしめたのだろう?

いや、別にアイヌに興味を持つのが変だとか悪いとか言うわけではない。ただ、例えばマラソンに興味を持ったとかエレキギターに興味を覚えたとかいうことであれば、なんとなく想像がつくのだが、アイヌとなるとどういうシチュエーションでそうなったのかが思い浮かばないということだ。

よほど強烈なきっかけと動機があって書き始めたのだろうと推測するのだが、しかし、その割にはこの作品は、ひたすらアイヌに焦点を当てた小説ではなく、一方でロシア占領下にあるポーランド人を描いていたりもする。

アイヌ→樺太→ロシア→ポーランドという、いわば複雑な占領の構図及び歴史から必然的に導かれたのかもしれないが、しかし、2人の主人公は途中からストーリー上ではほぼ枝分かれしてしまっており、そのため印象がやや散漫になっているきらいもある。

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Tuesday, August 11, 2020

『映像研には手を出すな!』マスコミ試写会

【8月11日 記】 映画『映像研には手を出すな!』のマスコミ試写会に行ってきた。

すでに撮り終わっていたのだが、コロナのおかげでほとんどの映画館が開いていない時期に公開日がぶつかったため、4か月以上延期して 9/25 の公開となった。

僕は原作は読んでいない。が、湯浅政明監督が撮った NHK のアニメ版には正直言って嵌った。映像研の3人のキャラが見事だった。そして、恐らく多くの人がそうであったと思うのだが、とりわけ浅草みどりの VC を担当した伊藤沙莉の声に魅了された。

あれほどキャラの立った漫画/アニメを実写化すると聞いて「随分果敢なことを」と思ったのだが、あの3人を乃木坂46 の3人が演ずると聞いて、「それはないだろう。それは違うだろう」と思った。

特に浅草みどりが齋藤飛鳥というのはいくらなんでも違いすぎる。そして、いくらなんでも可愛すぎる。浅草みどりは外見的には可愛いキャラではない。それを少しばかり可愛い女優が演じるのでさえ違うと思うのに、齋藤飛鳥が演じるとなると、それはもう言語道断である。

浅草みどりを齋藤飛鳥が演じてしまうと、女子高生にして人気モデルでもあるという設定の水崎ツバメよりも可愛くなってしまう。それはいくらなんでもないだろうと思った。

まあ、あれだけの CG や VFX を駆使したわけだし、クオリティ には定評があるがそれなりに高いと言われる ROBOT が制作するわけで、結構なお金がかかったはず。それを回収しようとするなら、確かにファンの動員が読み込める乃木坂46 からまとめて3人というブッキングは考えられる線ではある。

ただ、いくらなんでも齋藤飛鳥はダメだろう。いくらなんでも可愛すぎる、と思った。

しかし、映画に先立って放送されたテレビ版(出演者も監督も同じ。そりゃそうだ、いっぺんに撮ったんだからw)を見て、なるほどこんな可愛い浅草みどりもアリなのだと感服した。

齋藤飛鳥はちゃんと猫背にして、ガニ股で歩いて、「ワシ」という一人称で喋り、帽子を目深にかぶって造形的な可愛さを薄めながら、極度の人見知りにしてヲタクの女子を見事に演じた。

そして、同じ乃木坂46 のチームメイトである山下美月と梅澤美波も、アニメのイメージを全く崩すことなく、とっても素敵な水崎ツバメと金森さやかを演じてくれた。

英勉監督はこう言っている:

で、齋藤さんはね、(中略)やるといったらやるし、腹を括ったときのカッコよさは、まだ 21歳とは思えないものがある。

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Monday, August 10, 2020

各局ドラマの時期ズレに思う

【8月10日 記】 この4月クール、7月クールは各局のドラマのスケジュールがバラバラになった。新型コロナ・ウィルスのせいだ。

局によって、作品によって、出演者によって、収録スケジュールによって、それぞれのケースでのコロナとの関わり合いが異なることによって、対応はバラけた。

クランクインできなかったり、あるいはすでに始まっていた撮影を中座せざるを得なくなったりして開始を遅らせたものもあるし、その遅れ方もそれぞれに異なっており、あるいは何話か放送した後に中断するはめになったドラマもある。

で、申し訳ないが、それが視聴者としては大変ありがたい状況になっている。

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Saturday, August 08, 2020

『七つの会議』その2

【8月8日 記】 WOWOW から録画しておいた映画『七つの会議』を観た。と言っても、今回は映画評を書く気はない。1回目に観た時にすでに書いているから。

妻が観たいと言ったから録画したのだが、しばらく放ったらかしになっており漸く2人で観た。妻は僕に「これ、観たの?」と一応は訊く。観た映画をもう一度つきあわせるのを心苦しく思っているフシが全くないわけではない。でも、ほとんど気にしていない。

何故なら僕が一度観た映画でもほとんど憶えていないことを知っているからだ。このブログにも何度も何度も書いているように、僕は読んだ本でも観た映画でも大部分を忘れてしまう。それがどの程度なのかを今日は書いてみようと思う。

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Friday, August 07, 2020

イヤフォン入れ

【8月7日 記】 僕は煙草をやめてもう 10年以上になるのだが、皆さん、ご記憶だろうか? あるいは今でも使っている人はいるんだろうか?

路上で吸い放題だった時代が、次第に喫煙に厳しい世の中になってきて、昔みたいに吸い殻をそこら辺にポイ捨てできなくなってきたときに携帯用の吸い殻入れというのが出てきた。

四角くて、平べったくて、口の部分に鋼が入れてあって、両脇を押したらパカッと開くあれである。

なんで今頃そんな話かと言うと、いろいろ試してみた中で、イヤホン入れにはあれがぴったりだということに気がついたのである。

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Tuesday, August 04, 2020

映画『アルプススタンドのはしの方』

【8月4日 記】 映画『アルプススタンドのはしの方』を観てきた。全国高等学校演劇大会で最優秀賞を獲った戯曲が原作で、後に浅草九劇で上演もされたらしい。

如何にも舞台らしい仕立てである。これ、原作はひょっとしたら一場ものだったのかもしれない。

舞台は高校野球が行われている甲子園球場。だが、グラウンドや選手たちは一切映されず、物語が展開するのはタイトル通りほとんどアルプススタンドのはしの方である。アルプススタンドは野球通が観る席だとも言われるが、高校野球のファンならご存知の通り、そこには応援団が陣取っている。

しかし、この芝居の舞台はアルプススタンドではなく、そのはしの方なのである(笑) 目の付け所としては秀逸である。

映画は野球のシーンは一切見せずに、しかし、打球音や歓声などの音響効果と、アルプススタンドの観客たちの目の動きと台詞で試合展開を伝えて行く。これも面白い進め方だ。

たまたまそのはしの方にいたのは、強制的に野球部の応援に駆り出された県立東入間高校の全生徒の中でも、とりわけ応援に力の入らない4人である。

──元野球部の控え投手で、エースとの力の差に絶望して退部してしまった藤野(平井亜門)。演劇部で、ルールも全然解っておらず興味も全く湧かないあすは(小野莉奈)とひかる(西本まりん)。そして、ガリ勉の優等生で、友だちもいない帰宅部の宮下(中村守里)。

今日の一回戦は、プロのスカウトも目をつける屈指の名投手を擁する甲子園常連の強豪校が相手で、勝てる気がしない。それだけに応援にも熱がこもらない。

この熱がこもらない4人のところに、エネルギー空回り気味の熱血教師・厚木(目次立樹)がしょっちゅうカツを入れに来る。ここは笑うとこであるが、芝居が大げさすぎてあまり笑えないw だが、それを茶化す女子生徒の台詞に笑えたりする。

そして、打って変わってアルプススタンドの真ん中辺には、力のこもった応援を続けるブラスバンドがおり、そのリーダーを務めているのが部活と勉強と恋の3つをしっかりこなしている久住智香(黒木ひかり)である。

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Monday, August 03, 2020

性的なことに触れるテーマ

【8月3日 記】 このブログをはじめとして twitter、facebook、note などいろんなところにいろんな文章を書き散らしてきて、最近実感したのは、性的な問題を扱った文章はどうも受けが悪いということ。

とりわけ、匿名性の低い facebook や note の場だと、性的な問題に触れると「いいね!」も「スキ」も皆無に近い状態になる。

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Saturday, August 01, 2020

映画『君が世界のはじまり』

【8月1日 記】 映画『君が世界のはじまり』を観てきた。

最初に気になったことを書いておくと、カット変わりがちょっと遅い感じがした。人が映っていないドアや手すりや机などの画、あるいは台詞を言っていない(言う前、あるいは言った後の)俳優のクロースアップなどのカットが、もう1秒ぐらい早く切り上げて次のカットに移っても良いんじゃないかなと。

演技(演出?)がまったりしてるから間が長くなるのか、あるいはその逆なのか。序盤はそんなことが結構気になった(役者が下手という意味ではないので念のため)。

ふくだももこという人については僕は全く知らなかったのだが、注目されたのは映画制作のほうが先で、その後すばる文学賞を獲ったらしい。で、この映画は自作の小説2編を合体して映画化したもの。監督はふくだももこ本人である。

これは正調大阪版エモい青春ムービーだと思う。

このテイスト(特に女の子の柄の悪い感じ)が果たして全国的に受け入れられるのかどうか分からないが、青春期のなんとも言えないモヤッとした感じを、弾けているようで弾けきれていない感じを、極めて巧みに、嫌味なく描けた映画だと思う。

台詞がいちいち巧くて、すごいなあと思って観ていたら、脚本を手掛けたのは向井康介だった。原作者も想像がつかなかったという2作の小説の縫い合わせもさることながら、個別の台詞のリアルさとキレ、そして、それらを編み上げて立体的な構成に仕立てた腕はやっぱりすごい。

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Wednesday, July 29, 2020

『嫌われモノの<広告>は再生するか?』境治(書評)

【7月29日 記】 境治氏の本は何冊か読んでいて、その都度書評を書いているが、その際にいつも書き添えているように、僕は境氏とは直接の知り合いである。最近はもっぱらリモートだが、以前は月に何度かはリアルで顔を合わせていた。

僕はまさにこの本で扱われるような領域で仕事をしており、境氏が主催するミライテレビ推進会議の、今となってはやや古株のメンバーでもあり、そういうわけで最低でも月に1回は境氏と接点がある。

会って直接雑談することもあれば、境氏が登壇するセミナーを聴きに行くこともあるし、逆に講演/登壇の依頼をしたこともある。

そういうわけで、僕がこの本を読んで、「へえ、そうなのか。知らなかった」ということは全くない、とまでは言わないが、ほとんど、多分全体の5%もない。

それは業務を通じて基礎知識があるというだけではなく、普段から境氏の話を聴き、境氏がネット上に発表した文章も読み、その上 twitter でも facebook でも繋がっているので、彼の考え方の基礎的な部分はこの本を読む前から知っていたからである。

ただ、これを読んで思ったのは、「へえ、境さん、そんな人のところまで取材に行ったのか」ということ。

やっぱり本を書くとなると、何となく解っているつもりのことでも改めてしっかりと取材をする必要があり、そういう意味で、この本はしっかりとやるべきことをやって書かれたものだということが分かる。

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Monday, July 27, 2020

『コンフィデンスマンJP プリンセス編』

【7月27日 記】 映画『コンフィデンスマンJP プリンセス編』を観てきた。

テレビドラマの時は初回だけ観て、決してつまらないと思ったわけではないが、「あー、大体毎回こんな感じね」と思ってそれ以降は観なかった。それが去年の映画第1作はなんとなく観て、そこそこ面白かった。だから今回も観ようと思っていた。

第一印象は、「あー、金かかってるなあ」ということ。これでもかという豪華キャスト。大々的なロケセット(しかも海外ロケ)。豪華な衣装やら数多くの小道具やら、ドローンやら CG やら含めると大変な額だろう。

ただ、ストーリーとしては前作のほうがよくできていたのではないかな。今回は特に筋運びが雑な感じがした。と言うか、ひねりにひねった筋なので、観客は何度も騙されて、それなりに楽しめはするのだが、全体的に巧く運びすぎるし、いい話になりすぎている。

自分が書いた前作の評を読み返すと後味が良かったと書いているが、今回は後味を良くしようとしすぎている感がある。

でも、よくまあここまでこねくり回して複雑な筋を考えたなあというのは確かにあって、でも、それは僕が『キサラギ』(2007年)で初めて古沢良太脚本のドラマを観たときから好きになれない「知が勝ちすぎている」感じなのである。

そっち方面に走った作品を知的ゲームみたいに思って好む人もいるみたいだが、僕は御免だ。

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Sunday, July 26, 2020

『ジョーカー』

【7月26日 記】 昨夜、WOWOW の録画追っかけ再生で『ジョーカー』を観た。

去年あれだけ評判になってたくさんの賞を獲っても僕は観なかった。

それは、ひとつには僕が邦画を優先しているからであり、もうひとつには、邦画であれ外画であれ、大ヒット作は翌年には大体どこかで観られると高を括っているからでもあるが、「観たあと非常に嫌な気分になる」と聞いて観る気が萎えたということもある。

しかし、見終わって全然嫌な気分にはならなかった。だって、1950年代、60年代の素敵な音楽に乗って、ジョーカーは笑って踊っているんだもの(笑)

そんなことを書くとお前はアホかと言われそうだが、しかし、この部分は決定的に違うと思う。まず、日本人が撮ると、この作品はもっと陰湿で暗澹たるものになっただろう。この映画は狂気ではあるが、苔生す洞窟にいるような陰湿さはない。むしろ発汗したような感じだ。

後味が悪い映画と聞いて、僕は『羊たちの沈黙』とか『セブン』とか『ダンサー・イン・ザ・ダーク』などを思い浮かべていたのだが、それらの映画ともまた決定的に違っている。

何と書けば良いのだろう? 確かにジョーカーことアーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)は狂っている。常人には理解し難い程度に狂っている。でも、どこか、心の深い深い奥底で、僕らと繋がっているような気がするのである。

それは、この映画が貧困と格差の問題を取り上げ、観客に社会の矛盾を突きつけているからではない。いや、そもそもこの映画はアメコミ及びハリウッドの代表的なエンタテインメントの一大ヒーローであるバットマンの敵役ジョーカーの誕生秘話なのだから。

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Friday, July 24, 2020

映画『劇場』

【7月24日 記】 映画『劇場』を観た。

行定勲監督の新作が、東京23区内で渋谷のユーロスペース1館だけとはどういうことだ? 山﨑賢人と松岡茉優が出ているというのに?──と首を傾げていたら、テレビでこの作品の宣伝を見た。スポンサーは Amazon。

そうだった。この作品は映画館での公開と同時に Amazon Prime での配信が始まっているのだ。何かで読んではいたのだが、すっかり忘れていた。

で、コロナ禍の中、渋谷まで出向くことも考えたが、結局テレビ画面で Amazon Prime を観た。こういうケースは通常「映画記事(TV等での鑑賞分)」に分類しているのだが、今回は劇場公開中の作品なので「邦画記事リスト」にも入れておく。

で、この作品の原作は又吉直樹である。そのこともあってか、吉本興業が製作幹事を勤め、配給も吉本興業である。

山﨑賢人が珍しく見た目が汚らしい役柄で出ている。劇団「おろか」の主宰者であり、座付作者で俳優でもある永田。でも、彼の脚本も劇団の公演もけちょんけちょんに酷評され、客も不入りというどん底にある。

劇団員からは「永田さんは前衛を履き違えている。他の劇団はウチをバカにしている」などと言われ、逆ギレするありさま。

そんな中、ある日、画廊のウィンドウを覗いていたら、興味を持って同じように覗いてきた沙希(松岡茉優)と出会う。極度の人見知りで、おまけに金もないのに、永田は自分でも信じられないような積極性を発揮して、沙希をお茶に誘う。

彼女は中学から演劇をやってきて、上京して専門学校に通いながら女優を目指していた。そして、いつしか永田は彼女の部屋に転がり込んで一緒に棲むようになる。

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