Sunday, August 01, 2021

『読みたいことを、書けばいい』田中泰延(書評)

【7月31日 記】 あー、すっきりした。

僕は、どう書けばみんなに読んでもらえて共感してもらえる文章が書けるのかを学ぼうとしてこの本を読んだのではない。

最近そういう文章術指南書の類があまりに多くて辟易していたのである。まあ、読めばそれなりになるほどとは思うのだが、しかし、その通りにやってみようという気にはならないのだ。

そういう本や記事にちょっと嫌気が差してきて、それで note にこんな文章を書いたりもした:

文章の長く苦しい旅

僕が田中泰延のこの本を長らく手に取らなかったのも、多分そういう類の本だろうと勝手に想像していたからである。でも、読んだ人の感想や、本人が別のところに書いたりしていることを読むと、どうやらそんな本ではなさそうだ──そう思ったから読んだ次第である。

実際読んでみると、この本には「まあ、とりあえず、自分が読みたいことを書いてみたらええんちゃう?」みたいなことが書いてあって、それ以外のことはほとんど書かれていない。

まことに関西人らしく、読書のリズムを狂わせるようなおちゃらけやバッド・ジョークがいっぱい挿入されているので、かなり安心して読める(笑)

中にはこの戯言を楽しみに読むひろのぶファンもいるのだろうが、僕はそういう部分は華麗にスルーして読み進んだ(何箇所かで不覚にも笑ってしまったが)。

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Saturday, July 31, 2021

映画『イン・ザ・ハイツ』

【7月31日 記】 映画『イン・ザ・ハイツ』を観てきた。テレビで本編の一部が紹介されているのを見た瞬間に、これは観るぞ!と心に決めた作品。

トニー賞4冠とグラミー賞の最優秀ミュージカルアルバム賞を受賞した、ブロードウェイの大ヒット・ミュージカルの映画化と言うだけのことはある。音楽もダンスも超絶にカッコいい。

ミュージカルというものは、どんなに歌や踊りが素晴らしくても、ストーリーがあまりに単純かつ陳腐でげっそりすることが多いのだが、これは誰かが何かを成し遂げたり運命を乗り越えて悲恋が実ったりするようなクサイ話ではなく、基本的に群像劇であり、そして人生讃歌になっているので気持ちよく観られる。

ビートがきついラテンのリズムにラップが乗っかっている音楽の構成が素晴らしい。ヒップホップのラップも悪くないが、僕は昔からラテンのラップが大好きだ。移民の物語の世界観ともうまくマッチしていた感がある。

メインの登場人物となる4人は当然として、アブエラ(おばあちゃん)役の女性まで圧倒的な声量と澄んだ声質をしているのに驚かされる。モブのコーラスもものすごく層が厚く、ハーモニーも絶品で、まさに Wall of Sound である。

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Thursday, July 29, 2021

マツキヨとマルイ

【7月29日 記】 突然思い出した昔の話:

選挙に立候補するときに、自分の氏名の漢字の一部や全部をかな書きにする人っているじゃないですか。

最初の転勤で初めて上京したとき、僕はマツモトキヨシってその類だと思ったんですよね。はい、昭和の末期ですから、あのころは関西ではまだマツモトキヨシなんて見たことも聞いたこともなかったですから。

薬局の店頭にマツモトキヨシと書いた幟が置いてあったりしたので、「ははあ、この人は薬局のおやじさんなのか。区会議員選挙か何かに立つのかな」なんて思ってたんです。

ところが、さすがに当時は今ほどの店舗数はなかったとは思いますが、それでもあっちの駅、こっちの街でマツモトキヨシのお店があるんですよね。

しかし、それでも僕は「大きな薬局チェーンのオーナーなのか」ぐらいに思っていて、それがドラッグストア自体の名前であると知ったのはもうちょっと後でした。

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Monday, July 26, 2021

『竜とそばかすの姫』についてのとあるレビューを読んで

【7月26日 追記】 映画『竜とそばかすの姫』について「危険すぎるメッセージと脚本の致命的な欠陥」と題したレビューが上がっている。twitter でも「いいね」がかなりついて相当拡散されている。

「竜とそばかすの姫」レビュー 危険すぎるメッセージと脚本の致命的な欠陥

これを読むと、書いてあることがどれもこれも全て正しいとまでは思わないにしても、確かにそういう面は否定できないと思う。と言うか、あの映画を観て僕がなんとなく釈然としなかった部分を、この分析がしっかりと埋めてくれているような気さえする。

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Saturday, July 24, 2021

映画『ゴジラ vs コング』

【7月24日 記】 映画『ゴジラ vs コング』を観てきた。

昔、ウルトラマン・シリーズの怪獣との戦いのシーンだけを切り出して、プロレスの実況風のアナウンスを載せた『ウルトラファイト』というミニ番組があった。編集モノだけではなく、新撮もあったらしい。

先日 twitter で、「観てないんですけど、『ゴジラ vs コング』って昔の『ウルトラファイト』みたいなもんですか?」と呟いたら、ある人から「小栗旬がただただ白目を剥く映画です」との回答があり、実際に観てみてその意味が解った。なんでわざわざそこを取り上げたくなったのかも解った(笑)

いやまあ、何と言うか、ハリウッドだから、そりゃあもう湯水のようにお金を使ってすごい映像を作っているわけだ。迫力満点の破壊と戦いのシーンだけではなく、しょっちゅう映し出されるコングの表情のアップなどもよくできている。

しかし、この設定は何だろう? 子供騙しと言うか、いや、ひょっとしたら子供でさえ釈然としない荒唐無稽ではないか? ウルトラQ やウルトラマンのほうが遥かに科学的だった気がする。

地球の内奥に巨大な空洞があるとか、そういう奇想天外な設定があっても別に構わないのだが、米軍が総動員されているのにひとりの女性科学者の判断と指示で動いてしまう場面があったり、機密の場所にあまりに簡単に入れたり貨物に紛れ込めたりする辺りも、さすがにちょっとなあという感じ。

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Friday, July 23, 2021

『カラフル』森絵都(書評)

【7月23日 記】 去年『風に舞いあがるビニールシート』で初めて森絵都を読んで、深い感銘を受け、その巧さに驚いた。これは是非にも他の作品もと思って『みかづき』を読み、それに続いて本書を選んだのだが、しかし、もう少し調べてから選ぶべきだった。

直木三十五賞を受賞した『風に舞いあがるビニールシート』と違って、その9年前に出版された本書は、まぎれもなく児童文学であり、森絵都も 100%児童文学者と捉えられていた時代の作品だったからだ。

僕は最初に読んだのが『風に舞いあがるビニールシート』でつくづく良かったと思う。先に児童文学を読んでいたら、二度とこの作家の本を手に取らなかったかもしれない。

本書は優れた児童文学なのだろうと思う。それは決して否定しないが、大人が読むには少し設定がチャチで、少し文章が幼くて、話の進み行きが軽い。そうとまで感じない大人の読者もいるのかもしれないが、少なくとも僕の好きな文体、僕が好む作品ではない。

そして、何よりも残念だったのは、Kindle の画面に「33%」という表示が出ていたので、ちょうど3分の1を読んだ当たりだと思うのだが、その時点で僕は電撃的にこのストーリーの結末を読み切ってしまったということである。

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Thursday, July 22, 2021

映画『リスタート』

【7月22日 記】 映画『リスタート』を観てきた。品川ヒロシの長編映画監督デビュー作『ドロップ』を観たときに、「あ、こいつは結構才能あるかも」と思った。興行成績も悪くなかったはずだが、しかし、その後思ったほどの華々しい活躍がない。

これはやっぱり、品川が、相方の庄司智春のような皆に愛されるキャラではなく、ちょっとウザい系の奴だと思われているからなのかな、などと勝手な想像を僕はしていた。結局それ以降の作品は見逃しており、これが僕にとって 10年ぶりの品川作品となった。

やっぱり巧いなと思うのは、良い画があちこちにあるということ。最初のシーンの、卒業式を前にした高校生たちが木立の陰で雑談しているシーン。そこから広場みたいなところで主人公の未央(EMILY)が歌う引き画からのタイトル・ロール。とても美しい。

品川自身による脚本も良い。もらいゲロの話からもらいゲロのシーンへと繋ぐ辺りは漫才的な上手い構成だが、そういうことだけではなく、良い台詞がたくさんある。

恥ずかしいぐらいストレートに未央を鼓舞する大輝(SWAY)もいれば、何度も口ごもりながら一生懸命語る血の繋がらない父(中野英雄)もいる。キャラはよく描けている。

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Wednesday, July 21, 2021

ゆうパックの謎

【7月21日 記】 このブログにも書いたが、何年か前、宅配ボックスに入れずに荷物を持ち帰った配達人を雪隠詰めにしたことがある。Box2687558_640

彼が再配達に来た折に、「なんであなたは宅配ボックスに入れなかったのか?」と訊いてみた。すると彼は「郵便受けに名前がなかったので間違っていたら大変だと思って入れなかった」と言う。上等じゃないか。

「それじゃあ、あなたが不在配達表を入れた郵便受けが間違っていたらどうしようとは思わなかったのか? 荷物は『間違って入れたら大変だ』と思うのに、不在連絡票は間違った家に入れても平気なのか? こんな紙切れ1枚、間違って入ってても捨てられるかもしれないとは思わないのか?」と反撃したら、彼は絶句してしまった。

僕は宅配業者とは何度となく揉めているが、僕の経験では宅配ボックスに入れてくれないのは圧倒的にゆうパックが多いと思っている。

そんなことを思い出して twitter でつらつら呟いていたら、リツイートされたりリプがあったりで、タイムライン上にも結構ゆうパックに対して同じ不満を抱いている人が多いことが分かった。

で、驚いたのは、ゆうパックは持ち帰ることが多いというのは単なる僕の印象だと思っていたのだが、そうではなくてそれが郵便局のポリシーらしいということだ。なんじゃ、それは!!!!!

そして、配達郵便局に「指定場所配達に関する依頼書」を提出すれば、ちゃんと宅配ボックスに入れてくれるということも、あるフォロワーさんから教わった。

そんなものがあったとは!──僕は速攻で依頼書を書いて投函した。

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Tuesday, July 20, 2021

映画『竜とそばかすの姫』の愛犬

【7月20日 追記】 映画『竜とそばかすの姫』について思い出したこと。

観たときには「おや?」と思ったのにそのまま忘れていた。ある人がそのことに触れていたので思い出した。

すずの愛犬の右(だったかな?)の前足はどうしたんだろう? 事故にでも遭ったのだろうか? その後のシーンでは何も触れられていない。

こういうのを「伏線が放置されたまま回収されていない」と言って猛烈に嫌がる人もいる。僕自身は、まあ、そんなになんでもかんでも解決して行く必要もないだろうと思うが…。

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Sunday, July 18, 2021

映画『竜とそばかすの姫』

【7月18日 記】 映画『竜とそばかすの姫』を観てきた。

細田守監督作品は、遡って『時をかける少女』も観たが、初めて観たのは『サマーウォーズ』で、あれには驚いたし、魅了された。

でも、その後3本の長編アニメを観て、どれも良かったけれど、結局どれも『サマーウォーズ』を超えられていない気がしている。それがちょっと腰を引かせる理由にもなっている。

その上、今作は『美女と野獣』がモチーフになっていると聞いて、そう言われると絵柄まで似ているではないか!と思うと、だんだん観る気が失せてきた。

とは言いながら今回も一応は観に行ったわけだ。観てみると、さすがにこのチームは作画能力が高い。

冒頭で電脳空間 "U" と、そこでのアバターである "AS" の説明があるのだが、その背景となっている画が、これは明らかに『サマーウォーズ』を超えてすごい。圧倒的な情報量である。単なるデザインとしても美しい。

そして、現実空間においても、透明な瓶に挿した花の茎が水の中で屈折していたり、徒歩やバスや電車で移動すると光の移ろいに伴って顔が陰になったり日向になったりするところなど、ほんとうに肌理細やかである。

人物は平面アニメ特有の描き方で、動きも現実の人間と比べるとやや大げさでぎこちないが、木や草や水の流れや川面に映る像など、風景の作画能力がめちゃくちゃ高い。

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Saturday, July 17, 2021

『Amazon Web Services 基礎からのネットワーク&サーバー構築』大澤文孝、玉川憲 、片山暁雄、今井雄太(書評)

【7月16日 記】 難しくて読んでも解らないかもしれないな、と思って読み始めたが、意外によく解った。

とは言え、それはあくまで僕の場合の話であり、誰が読んでもよく解る本ではないだろうとは思う。単なるユーザとしての経験は何年もあるが、コンピュータやネットワークのことをほとんど勉強したこともないという人だと、読み始めても途中で放り出すかもしれない。

僕が人生最初の PC を買ったのが 1994年。信じられないかもしれないが、当時の PC には何百ページにも及ぶマニュアルがついていた。マニュアルと言うよりもむしろ技術解説書である。僕はまずその本を読破した。そういう人間である。

もちろん、PC を使い始めたばかりのころに「仮想メモリ」などと言われても、何のことだかさっぱり解らない。だから、だいぶ PC に慣れてきた頃に、もう一度最初から最後まで読破した。僕はそういう人間である。

ネットワークに関しても、長いユーザ歴の中で何度か集中的に、独学/座学で勉強したこともある。

そういうこともあって、この本は割合よく解った。と言うか、この本を読みながら、「あ、そうか、そうだったな」とか「ああ、そういうの確かに勉強したな」などと、昔学んだ記憶が次々に甦ってきた。

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Thursday, July 15, 2021

ミュージシャンから俳優

【7月15日 記】 北村匠海や浜野謙太を引き合いに出すまでもなく、元々はミュージシャンなのに俳優として活躍している人は大勢いる。しかも、それは最近のことではなく、結構大昔から大勢いる(まあ、北村匠海はミュージシャンの前は子役だったわけだが)。

たとえば、1967~1968年のグループサウンズのブームが去った後、ミュージシャンから俳優に転じた人は多かった。

沢田研二や萩原健一はミュージシャンのまま俳優もやり始めた人だが、岸部一徳などは完全に俳優に転じ、名優の名を恣にした存在である。

他にも、(この人は俳優に転じた後もう一度歌手に戻って大ヒットを飛ばしたが)寺尾聰がいるし、やや小粒だが鈴木ヒロミツや大口広司などもそうだ。

当時小中学生だった僕は、彼らに結構激しい怒りを覚えていた。「そんなに簡単に音楽を棄てて役者に転ずるなんて、お前らの音楽に対する情熱って、その程度のものだったのか!」という、まことに小中学生らしい正義感とでも言うべきものによる怒りだった。

残念ながら、小中学生だった僕には、彼らも何か仕事をして食い扶持を稼がなければならないのだという事実は全く見えていなかったのである。

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