映画『嗤う蟲』
【1月24日 記】 映画『嗤う蟲』を観てきた。城定秀夫監督。脚本は『先生を流産させる会』(タイトルが醜悪だと思ったので、僕はこの映画を観ていない)の内藤瑛亮が書き始めたものに、途中から城定が参加した形。
サイコパスやゾンビが出てくるタイプではないが、一種のホラーである。
短いタイトル表記の中に虫が合計4匹もいて我々をゾッとさせてくれる。いや、虫は何度か画面に映し出されるが、虫が人間を襲う映画ではない。それは一種のメタファーなのである。なにしろ「笑う」んじゃなくて「嗤う」虫なんだから。
もう冒頭の、車が橋に差し掛かるシーンからなんとも言えない不吉さが漂っている。そして、その不吉さは、エンド・ロールの後の短いエピローグまで張り詰めたまま引っ張られる。やっぱり名監督なんだなと思う。
カメラのアングルからして、寄り方からして、どことなく不吉なのである。そして、大事なところではワンカットで緊張感を極限まで引っ張っている。
上杉輝道(若葉竜也)と長浜杏奈(深川麻衣)の夫婦(思うところあって別姓である)が東京から麻宮村の古民家に引っ越してくる。輝道のほうは脱サラして無農薬農業をやろうとしていて、杏奈のほうはイラストレータなので、どこにいても仕事はできる。
早速隣家の三橋剛(松浦祐也)が妻の椿(片岡礼子)を連れて興味津々な感じでやってくる。剛のなんとも言えないオドオドした感じ、そして椿の明らかに精神を病んでいる感じ。こういう役をやらせると2人ともめちゃくちゃ上手い、と言うか嵌まってると言うか。とにかく不吉だ。
彼らの話し言葉からすると愛知県かその周辺という感じだが、特定の地域を設定したわけではなく、つまらないトラブルを避けるためにもわざわざ方言を作ったのだそうだ(後に劇中で乱発される「ありがっさま」という台詞が結構怖い)。
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